#4 存在し得ない存在
砂漠の砂を踏む。普通の地面と違って歩きづらい……。
あの異様に光る月のような惑星のおかげで足元や先々の景色まで鮮明に見える。異界とはいつもこのような場所なんだろうか。
そう思い二人を見ると、店長は黙々と何やらレーダーのような機械を見ながら歩いているが、紗夜さんは、まだかなぁ、と呟きながら歩いている。
特に何も話すことなく、歩き続ける。
◎◎◎
「……だぁもう!いつまで歩くのここー!!さっきも歩いてないっ!?」
「紗夜さん……」
「レーダー通りなら、もうすぐ見えると思うんだけど……」
そうぼやきながらも歩く紗夜さんや店長にある種の感心を覚える。……いや、感心してる場合ではない。内心俺も疲れてきていた。
あるけどもあるけども砂と惑星だ。草木一本だって生えてやしない。本当にここに邪数多という存在がいるのだろうか……?
そんなことを考えているとふと、先ほど店長が言っていたレーダーのことが気になった。
「店長、さっき言ってたレーダーってなんですか?」
「ああ……これかい?」
そう言って今まで前を歩いていた店長が俺に並びかける。そうして横でレーダーを見せながら歩いてくれた。
一見普通のタブレット型端末に見えるがそうではないらしい。端々には現代科学では不似合いなパイプや歯車がついている。
肝心なタブレット画面には俺たちの現在地、そして恐らく、邪数多がいるポイント、その二つにマーカーが付いていた。
「この活動を始めてからずっと使ってるやつでね……最近どうも調子が悪いんだ」
「へぇ……でも一応、邪数多の位置は分かるんですね」
「正確に分かったらこんなに歩いてないよぉ~!!」
「まあまあ紗夜さん……落ち着いて、歩いてよ」
ちぇ~、と言いながらも歩く。そんな調子で地平線にすら見える砂漠という大海原を、俺たち三人は歩き続けた。
◎◎◎
歩いてからどれぐらい時間が経っただろう。気づけば全員へろへろになりながら黙々と歩いていた。
いくらなんでもおかしい……いや、そもそも俺にそんなこと言えたものではないが、こんなに歩くとは……!
「ちょ……てんちょ、歩きすぎ~……!」
「……これはちょっと、嫌な予感がするね……」
「はぁ……はぁ……」
それでも歩き続ける。そんな状況の中突然、店長の持っていたレーダーがけたたましく鳴り響く。
「鳴った……!」
「えっ、なんですかこれ!?」
「鳴ったよ!店長っ!!」
俺を置いてけぼりにしたまま二人ははしゃぐ。全くことを分かっていない俺をぱっと見て、また二人して俺を掴む。
「「上だ!!」」
「えっ?えっ!?」
掴む力をいっそう強くし、一気に引っ張られる。
瞬間、瞬き一つで俺は宙を浮いていた。……は?
「う、うわあぁぁ!!あぁ!?」
「「いってらっしゃ~い!」」
わけもわからず上昇し続ける俺はあまりの恐怖に、意識が遠のく。意識の途切れる刹那、なにか黒ずんだ月がこちらを睨んでいたような気がした。