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#2 奇妙な出会い

第二話です。

 コンビニの扉を開け、中に入る。


入った最初の感想は……古くさい。一体いつのものなのかも分からないような商品(?)がいくつも無造作に置かれている。


外観はコンビニを模していても、中身はまるで物置きだ。唯一コンビニらしいと言えば、レジらしき、ここではまるでカウンターのように使われているものだけである。


 扉の先には|年上と思われる若い女性・・・・・・・・・・・と、|ダンボールを被った男性・・・・・・・・・・・と思われる人物がいた。


女性はレジもといカウンターに備え付けられた椅子に腰掛けており、ダンボールの男はカウンターの向こうで工作をしているようだ。……いや、ダンボール被ってるって、なんだよ……。




「やっと来たね、青年」


「その声……もしかして」


「そう。君に呼びかけたのはこの私だよ」




 胸に手を当て、こちらに自慢げに微笑みかける。その様子をダンボールの男がクラッカーを鳴らしながら褒める。いや、なんでクラッカー……。


女性は改めてこちらに向き直り、咳払いをしてからもう一度真っ直ぐと、俺の目を見た。




「まずは自己紹介を……。私は龍神 紗夜(りゅうじん さや)。ここのコンビニに住んでるの。それでこっちは店長」




 そう言って自己紹介をした紗夜さんがダンボールの男を指差した。


突然自分にパスが回ってきて焦ったのか、持っていた工作に使うであろう機械を落としかけていた。大丈夫か……この人。


機械をゆっくりと置き、こちらにも聞こえる呼吸音で深呼吸し、やがてこちらに向いて自己紹介をする。




「え~と……はい、ここの店長です。店長って呼んでね~……あはは……はぁ……」


「だってさ青年。もー店長!しっかりしてよ~!」


「い、いや……だって知らない人だし……」


「誰でも最初は知らない人でしょっ!」




 ……店長、人見知りなんだな。でもダンボールはやっぱり気になる……。


相手ばかりに自己紹介させるのも悪い気がしたので、こちらもそれを返すことにした。依然として、何者なのか分からないが。




「咎島 界人です。……あの、なんで俺はこんなところに?頭の中の声は紗夜さん、なんですよね?俺になんの用があって——」




 それだけ言うと一変。空気が締まる。店長の表情は分からないが、先ほどまで飄々としていた紗夜さんの顔が急に真面目なものとなった。


そうしてしまった言葉を発した俺は、何かまずいことを聞いたのかな、と思いつつ応えを待った。


すると紗夜さんが口を開く。なにか店長に目配せをしたようだった。……ダンボールの目って、どう見ても絵では?




「まあ気になるよねそりゃ。……とりあえず、詳しい話をするからこっちの椅子に座ると良い」


「は、はあ……」


「店長~なんか飲み物ー!」


「はいはい……今注ぎますよ~」




 店長に何か飲み物を頼みながら自身の隣の席を手のひらでとんとんと叩く。どうやらそこに座れ、ということらしい。


それに従うように、紗夜さんがとんとんしていた椅子に腰掛ける。コンビニのレジは意外にも低いようで、カウンターとしては最適のようだ。明らかに用途が違うけれども……。


席に着くなり店長がバックヤードのような所からコーヒーとお茶を持ってきた。そして紗夜さんにお茶を、俺にはコーヒーを差し出した。




「界人くん、これ、砂糖……」


「あ……ありがとうございます。店長」


「え、てんちょー!私もコーヒーが良いなぁ!!」


「あなたコーヒー飲めないでしょ……」




 ちぇっ、と言いながらお茶を啜る紗夜さんを横目に、出されたコーヒーに角砂糖を一欠片入れて飲む。うん、美味しい。


それじゃ、本題に……、と言いながら、紗夜さんがお茶の入ったカップを置き、こちらを向く。俺もコーヒーの入ったカップを置いて、紗夜さんを見る。




「あのね界人くん……冷静に聞いて欲しい。実はね、あなたには近い未来……良くないことが起きるの」


「良くないこと?」


「そう。でもね、これは本来起きちゃならない事象なの。ここまでは良い?」




 良くないこと……?起きてはならない……?いきなりのことでその超常的現象の推察、過程がまるで分からなかったが、とりあえず、はい……、とだけ応えた。




「それで、その現象を起こすある存在(・・・・)を覆さなきゃならないの、界人君自身の手でね」


「ほほう……?」


「それでここに呼んだってわけね。いきなりのことで不安だろうけど、大丈夫!私と店長が、その手助けをするから!ねっ?」




 何か色々とすっ飛ばしている紗夜さんの話にいくつかの疑問を覚えつつ、聞きたいこともあったのでとりあえず質問することにした。……が、その前に店長が口を開いた。




「紗夜さん……説明になってないよ。もっと伝えることがあるでしょ?」


「え?とりあえずこのこと知っておけばなんとかなるんじゃないかって、店長が言ったじゃん!」


「いや、あくまでそれを要点に、って……界人君、ごめんね。君もいきなりこんな所に来て、こんな突拍子もない話を聞かされて……」


「いえいえ……でも、確かに聞きたいことは色々あると言うか……」


「質問の前に……改めて僕が説明するよ」


「あ、はい……」




 どうやら店長が改めて説明してくれるらしい。紗夜さんはなにやら不服そうに店長を見ているが、そんな目線を気にせず話を続ける。




「良いかい界人君。まずここは、|君達の生きる世界とは別の世界・・・・・・・・・・・・・であることを理解して欲しい。僕達はこの世界から、邪数多(じゃあまた)という存在を追っているんだ」


「別世界……邪数多……?」


「その存在が、何故界人君達の生きる世界に影響を及ぼしているのかは分からない……でも奴らは本来起こり得ない未来を呼び寄せてしまうんだ。ここまでは良いかな?」


「は、はい」


「そして僕らはその存在を探知することが出来る術を持っていて、邪数多が君の存在に影響を及ぼすことが観測出来た。それで、こちらの世界と君の世界を繋ぐ《言の葉》という力を使って、君をこちらの世界に連れてきたんだ」


「なるほど……」


「今は時間がないからあまり詳しくは話せないが……とにかくその邪数多を覆さなければならないんだ。それも——」


「……?」


「君自身の手で、ね」




 この時、この瞬間から。俺の人生における乱数は狂い始めたのかも知れない。

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