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22 お国は大変なことになっている?


 サフィアが街で聞いてきたことには。


 聖女さまが聖女でなかった、という噂話。


「何それ?」

 トンチか何かかしらとリラははじめ、本気で考えた。トンチで有名は一休禅師。大丈夫、心配するな、なんとかなる。

「いや、謎かけじゃなくてさ。何でも外国からきた本物の聖女さまが、この国の聖女は偽者だって、なんか言ったんだって」

 それは外交のあれこれの夜会の最中だったらしいのだけど。

 だからこそ、人の口をふさぐことができず。こうして下々まであっという間に噂になって。

「なんとまぁ……」

「そんなことってある?」

「え、でもそれなら、リラさんの……」

 部屋にいたリラと三姉妹はあんぐりと口を開けてしまった。こちらも別の意味でふさぐことができず。

 ちなみにダイアは仲間はずれではなく、今日は朝から鍛冶場だ。先日リラが完成させた金継ぎに何やら感銘をうけたらしく、製作意欲が高まっているとかで。


 リラと三姉妹は変わらずお館のあちこちの手入れの日々。もちろん三姉妹の成仏方法を探しながら。

 半年かかっても、大きなお館はあちこち大変だ。

 魔石も使えるようになり、配管などの確認も済んだから生活は格段に楽になったけれども。

 リラは贅沢と思いながらも毎日お風呂に入れるのが幸せ。だって昔はお風呂大好き日本人だったから。

 ドワーフの姉妹も食事などは三人分作った方が手間暇も材料費も、というわけで。鍛冶場でとるよりもお館で頂戴することも多く。

 何よりも三人分なら「お供え」の品数も増やせるし、よろしくてよと、三姉妹さんは大満足だ。

 今もサフィアが街で買ってきたナッツ入りのクッキーをお供えしてもらって嬉しそう。

「あ、リラさん、お茶は濃い目で」

「はい、かしこまりまして」

 甘さが控え目だからしっかりした味のお茶にしようとリラも慣れたもの。何も無かった公爵邸は、今はお茶の種類も増えてきて。

「じゃ、こっちはアタシが食べるね。今日は姉さまいないからお茶も冷めないうちにもらうね」

「ええ、よろしくてよ。お先にご馳走様」

 手を合わせたあと、サフィアがお下げだ。こちらももう、慣れた。合掌まで。

 ちなみにダイアは猫舌らしく、いつもお供えしたあとのぬるめのお茶が彼女はちょうど良いとか。

 お供えしたあとを片付けるスタッフの数が増えた感だと、内心でリラが思う。火に強いドワーフでも猫舌あるんだとびっくりしたけど。



「はぁ、聖女さまが……」

 聖女さまのわがままにより、一家離散になったのが、リラのエルマー家だ。


 聖女のお気に入りになったから、兄は。大変で、しなくても良い苦労をしていた。大事な幼なじみまで。


 夜中に苛ついてジャムを煮て鍋を磨いていた兄を思い出す。

 ジャムは無事に次の日の朝食に、パンに。兄が職場にお裾分けも。

 ちなみにリラが持ち込んでいた兄作の乾パンなどは、半年のうちになくなった。特に館の修繕作業中、ドワーフ姉妹が片手でも食べられて好評だった。賞味期限くる前に食べ切れてよかった。

「聖女さまが、本物じゃなかったなら……」

 それが本当なら、半年前に解ったら……何てことも思わなくもない。

 そうしたら兄は騎士を辞めずにすんだし、リラも家族離ればなれにならずにすんだ。

 話を聞いて、場にいる皆は何と言って良いやら、言葉に悩む。


「いやでも、婚約破棄もできたし、皆さまにお会いできたしなぁ……」


 リラが思うことは最終的にそこに落ちついた。最近届いた親と兄からの手紙は平穏そのもので。特に兄は冒険者業が性に合っていたようで、幼なじみの今や奥さんと幸せいっぱいだ。

 こちらからの手紙に書くことが増えた。もともとリラが一人、都に残ったのはこのためだ。就職先探しがまさかの公爵邸の管理人になってしまったけど。

 そう、リラの現状。ご近所さん達からも、リラはこの館の管理人と思われている。市場にてそのように対応されて、ドワーフ姉妹と顔を見合わせたが、リラも訂正しそびれてきた。

 まぁ、あながち間違いでもないし。住人はむしろ幽霊三人姉妹だし。だったし――と、過去形でないのが。

「り、リラさん……っ」

 リラの様子に、言葉に、三姉妹さんは感動だ。

 こんな幽霊と出会ったことを良しとしてくれているだなんて。

 半年でこの少女の人柄はものすごくわかったし。金庫の中身全部、今のうちにあげたいと思うくらいに。ちなみに丁重に断られた。庶民には無理です。まぶしいです。そんな大金、使い方わかりません。


 そうして。

 リラたちにとって、聖女さまが聖女じゃなかった、は……確かにお国にとっては大変だけど、今や一平民である彼女らには遠いもの――であるはずだったんだけど。





 数日後。

 リラは市場でガラの悪いお兄ちゃんたちに絡まれている、外国からの観光なお子様たちを助けていた。


 月の光のような柔らかな銀の髪に黄金のような瞳の、とんでもない美少女と。黒髪に赤味があるのが印象的な切れ長の瞳の、優しげな美少年と。


 そばかすがちょっと目立つ、赤毛のお姉さんを。



お、この子達は…と思ってもらえたら嬉しい子達が登場しますよw

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