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幽霊と幽霊と幽霊と令嬢。  作者: イチイ アキラ


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19 住んでもらってもよろしくてよ?


 移動はラーソンさんが仕入れなどに使う荷馬車を借りた。ドワーフ姉妹の、修繕につかう工具箱も持たねばならなかったから。

「これくらいのゆっくりとした早さなら大丈夫かしら?」

 一人歩かせるのはと、リラも乗るように言われ。手綱を持ったダイアが気づかってくれた。

 人間がゆっくり走るくらいの早さでなるだけ揺れないよう進んでくれている。

 二人はリラが乗り物が苦手と聞いて「酔いやすいのかしら」と、思ったようだ。

 御者台の隣に座らせてくれて。サフィアは自分は揺れる荷台でも平気だから気にするなと譲ってくれた。

「人間はか弱いんだから仕方ないよ」

 それはちょっと違うと思うけど、言い返せないリラだった。未だに克服できていないのは、事実と……惰弱な己よ。生前の退去理由があるから仕方ないのだが、リラ本人も悔しいのだ。三姉妹たちには強がったけれど。


 引くのは二頭のポニーのような――ドワーフも騎乗できるというサイズの馬だった。ドワーフの国からラーソンさんと共に来た馬。もちろんこの馬たちも小柄でもたくましい。

 道産子ぽいなと、リラはほんのりと思い浮かべる。

 ドワーフの国はこの国より遥かに北国なので、もしかしたらそれは正しかったかもしれない。生き物は適した姿なりというものがあるのだろう。


 例えばこの姉妹、ドワーフたちのように。


 そのたくましさ、ちょっとうらやましいリラさんであった。ドワーフは種としても筋肉が付きやすいとか。

「……この世界に、プロティンないんだもんなぁ」

 人間にはなかなか。

 思えば、三姉妹のおっしゃるバランス良い食事。大事だとリラは改めて。身体の為にも。


 その三姉妹はリラの帰りを、馬車で帰宅したことに驚いたようだが――ヘロヘロと真っ青な顔して降りた彼女に、ドワーフの姉妹と共にはらはら。

 本当に馬車が苦手なのだと……。

「ほら、水飲みなよ」

 サフィアが水筒を差し出してくれて、ありがたく。

 彼女は道中でリラが人間換算では同じ歳くらいと聞いて、親しみを感じてくれたようだ。リラもそれは嬉しい。


「ところで話にあった幽霊……の、お嬢様たちは、どちらに?」

 そんな彼女らも幽霊の姉妹たちは見えないようだ。

 道々で話したのはお館のことについても。建物もだが、住人(・・)も三百年もの、と。

「あ、こちらに」

 あっさりとリラが横に手を。リラの目にはきれいなドレスを着た三人がいらっしゃる。

 が。

「……いるの?」

 サフィアがさすがに頬を引き攣らせた。ドワーフの姉妹には、居場所を示されてもやはり見えなかった。

「こら、失礼よ」

「あ、ごめんなさい」

 姉に窘められ、サフィアは素直に頭をさげた。

 その様子に大丈夫だと幽霊の方々もうなずいている。

 リラにそのように言われて、姉妹はほっとして。

 彼女らはリラの言う、幽霊がいることを信じてくれた。

 ラーソンに話を聞き、見せられた竜金貨を、彼女らも本物だと見抜いたからだ。


 それに握手をして、この人間は確りしていると感じたゆえに。筋肉は嘘をつかない。


「それに三百年、世話されていたのも確かのようだし」

 それは館の状態。

 三姉妹が生前のように過ごしていたから――掃除をしたり、その際、風を通したり――館は朽ちていなかったのだと。

「人が住まないと家ってのは、あっという間に駄目になるの」

 住んでいたに等しかった。幽霊だけども。

 しかし、幽霊たちが掃除をしているときいて、ドワーフの姉妹は内心では驚いていた。

 できるんだ、掃除……。

 



 まず大事なのは、水。

 確認は井戸から行われた。


「井戸は問題ないです。飲むのも大丈夫ですね」

「それは何より」

 井戸の底まで降りて現状を確認してくれたダイア。サフィアが汲み上げた水を様々な試験管で確認。

 結果、飲み水としても可能とのこと。

「井戸の底に浄化石が敷き詰められてました。しかもかなりの値打ちものな浄化石ですね」

「浄化石?」

「あら、しらない?」

 浄化石とは、また魔石の一つでもあり、井戸や湧き水などをきれいにしてくれるものらしい。

「この家のお貴族さまは、ちゃんとしてたんだなぁ。井戸の水がいざという時もきちんと使えるようにしていたんだから……」

 サフィアも感心してる。

 そういうところにこそ、金をかけられるのが、大事。

 職人の姉妹はしきりに感心していた。そしてグローディア家を褒める。


 背後で、三姉妹が鼻高々。


「でも、やっぱり汲み上げる桶や滑車はさすがに……経年劣化で駄目になってるから、これは新しくした方が良いわね」

 ついでにポンプ式にしておこうとドワーフ姉妹の作業はさくさく進む。ポンプ、ラーソンさんに取り寄せてもらおう。

 肝心のお館も。

「……うーん」

 世話されていたのは良かったが、やはり老朽化はしている。

「手入れはしないと駄目ねぇ……」

 ぱっと見は大丈夫でも、幽霊さんたちに関わりなかったところなどは、やはり痛んでいた。 

「しばらく通わせてもらいますね」

 二、三ヶ月はかかるかも。状況により直す箇所が増えるかもだから。


 すると、話は聞いたとエリザベスが提案した。


「あら、通いだなんて。こちらはドワーフのお嬢さんたちも、住んでもらってもよろしくてよ?」




そうそう、配管工といったら双子かなぁ、とは思ったのですが(わかる方にはわかりw)、姉妹になりました。


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