おやくしょしごと
神様が僕のプライベートを覗き見て悶絶した。
「ねぇ、神様」
「あによ……」
「プライバシーポリシーって知ってる?」
「はっ、下等生物の理屈とか神である私には関係ないし」
「いやいや、あるでしょー。知的生命体だよ?」
「それはワンコにも適用されるワケ? されないでしょ? ワンコにも知性はあるのよね? 人間には理解出来ないだけで。それをきゃーかわいーとか言って許可も得ずに拡散してるわよね? それについての回答をどうぞ?」
ふむ……神様にとっては人も犬も大差ないくらいの知性と。
「まぁ、もとより神様だし、人間の都合とか関係ないかぁ」
「分かればよろしい」
「じゃあ僕の同人活動もオッケーと」
「んなわけないでしょ!?」
「いや、それを言うなら他の神様だってもっと昔から題材にされてるでしょ? それを自分が対象になったからって急に締め付けるとか、他の神様に対して申し訳なく無いかな? というか神様は転生の神様であって腐っても芸術活動の一環に手出し出来るの?」
「うぐっ」
「だからまぁ、神様が僕に辞めさせたいなら、転生させちゃえばいいんだよ。日本に居なければやりようが無いわけだし」
「だぁかぁらぁ、出来ないんだってばぁっっ!!」
「そこをなんとかっ!」
「無理なものは無理なの!! 資格取得してから出直して下さい、貴方のより一層のご活躍をお祈り申し上げます」
「やめろよっ!! お祈りはやめろぉっ!!!」
く、くそっ
なんて奴だっ!
誰もが苦しむという悪魔のお祈りをするなんてそれでも神かっ!
もはや日本においてお祈りとは、おまじないとのろいが同じ呪って言う字を使うのと同じくらい、祈ると折るが同じ意味なくらいのヤバい言葉だって分かってるのか!?
しんせつ
って優しさを表さないんだからなっ!?
心折
だからなっ!?
心を折るなよ……
同情するなら金を寄越せよっ!
「いや、アンタはデイトレで稼いでるじゃない」
「それはそれ」
デイトレは別にね。
簡単そうに見えて簡単じゃないから。
そんな誰でも稼げたら誰も苦労しないから。
みんながみんな社長になれないのと同じだから。
しかも会社と違って平社員って損する立場だから。
やたらと成功してる僕が異常だから。ふふん。
でも成功の秘訣を1つでもいいから公演してくださいとか言われても無理。
なんたって僕は何も分かってないから!!
転生出来そうな瞬間が分かるのと同じでなんとなくの勘頼りだから。
どうしてそう考えたのか?
とか聞かれてもなんとなく以外答えられないから!
買うのも売るのも要は気分。
何を公演しろと言うのかね。
最近、僕の売買情報が漏れてる気がするから、そこらへんの証拠集めもしてる。
大丈夫、示談してあげるよ?
信用を買うんだから生半可な金額じゃ許さないけど。
大体、僕の後追いとかしまくるからいけないんだよ。
バレないとでも思ってるのかな。
「あ、そうだ。神様?」
「あによー」
「転生諦めてもいいよ!」
「ほんと!?」
「ほんとほんと!」
「嘘じゃないのよね!?」
「嘘じゃないよ? というか神様なら僕が嘘ついてるかわかるでしょ?」
「分かるっ! 分かるわっ! アンタも遂に私の説得を受け入れたのね!」
ぱぁぁっ!!
と後光がさしそうなくらいの満面の笑みで僕の目が物理的に潰れそうなくらい尊い。
ぅゎょぅι゛ょっょぃ
「うん。まぁ、ちょっと条件はあるんだけど……」
「なによ、言ってみなさい」
「僕が死んだら転生させて欲しいんだ」
「無理」
「いやいやまって、普通の転生だと記憶保持とかあるじゃん!? それなくていいから!」
「そゆ問題じゃないから。アンタは魂レベルで転生不許可だから」
「魂レベルで!? 酷いっ!」
「というか、転生諦める代わりの条件が転生確約って意味わかんないから」
「輪廻の先の話だからもうそれは僕じゃないんでしょ? だからその先で転生してくれるのなら僕じゃないから良くない?」
「ダメ」
「ホワイ!?」
「魂は輪廻しても同じだから」
「シット!!」
まさかの僕全否定!
「というかさっき資格取得してから出直して下さい。とか言ってたけど、どうやったら資格取得出来るのか教えてください」
「そちらについては管轄が違いますので回答致しかねまーす」
「取得出来る道はあるんですよね!?」
「情報の閲覧権限が不足していまーす。権限を取得してから出直して下さーい」
「その権限は何処で取れるんですかっ!?」
「その質問には回答出来ませーん。ガイドラインを参考にして下さーい」
「ではガイドラインを下さいっ!」
「ここにはありませーん」
「じゃあ何処にあるんですかっ!?」
「私は転生の神なので。他の業務についての回答は出来ませーん」
「そんな馬鹿な!?」
「なんの為に細分化されたと思ってるんですか。業務の逼迫を防ぐ為ですよ?」
「そのせいで煽りを受けてるんですが!?」
「陳情をあげてくださーい」
「僕にあげられるんですか!?」
「さぁ?」
「お役所仕事はいつもこうだっっっ!!!」
なんてこった……
神様がここまで頭が固いとは……
融通を効かせるというフレキシブルな対応が出来ないなんて、人を下等生物扱いしてる癖に同じじゃないかっ!
いや、日本なら関係省庁にたらい回しされる分、先があるとさえ言えるのだからむしろ神様の方が駄目じゃ……?
「いえいえ、ちゃんとご案内くらいは出来ますよ?」
「じゃあしてください」
「今、居留守なので繋がらないんですよねー」
「居留守は繋がらないんじゃなくない?」
「まぁアンタが勝手に行けばいいんじゃないでしょうか?」
「どうやって?」
「歩きとか?」
「適当っ!!」
「私は瞬間移動的な神様パワーで行きますから」
「連れてくのは駄目なんでしょう?」
「あら、かしこーい☆」
ちみっちゃいから精一杯手を伸ばして僕の頭を撫でる神様が可愛くて困る。
けど、ドレスがちょっと重力の関係で広がってもう少しで見え……見えそう……見えそうな……
『謎の光バリアー』
「優秀っ!! 死ねっ!」
「神に向かって死ねとは不敬ですね。死にますか?」
「神様が殺してくれたらお詫びで別の人生くれるんですよね?」
「そうですね。オキアミかカニかマンボウか好きなの選んでいいですよ?」
「海の生き物っ! というか数で勝負するタイプやめましょうよ」
「例えば?」
「シャチとか、イルカとか」
「仕方ないからその2択でいいですよ?」
「あぁっ!? 待って! なんで海の生き物に転生する事に決まってるんですか!? やですよ! ちゃんと人間にしてください。後地球じゃないとこ!」
危ない、まさか誘導されるところだった。
「火星とか?」
「え? 火星に人間居ないですよね?」
「そうですね。なので、人類が火星に居住区作って、そこに生活拠点移して、そこで生まれる生命が出るまでは保留されますけど」
「そんな未来が来るんですか!? いや、何年後に!?」
「来なかったら残念ですね。何年後とかも分かるわけないじゃないですか。私は予言とかしませんし。ノストラダムスさんに聞いてみては?」
「死んでるし!」
「そこはノストラダムスさんの転生体に聞けばいいんじゃないですかね。頭使ってくださいよ」
「どこの誰さんなんですかね!?」
「多分、魂の同位体でも記憶は漂白されてるので気づいてないんだと思います」
「それはノストラダムスさんでいいんですか!?」
「魂は同じですし。あぁ、この人ですね」
ポンっとウインドウが浮かび上がり、そこにはターバンみたいな布を巻いた精悍な顔つきをした男性が映し出された。
肩には何やら銃を掛けていて紛争地にいそうな出で立ちに見える。
浅黒い肌にモジャっとした感じの天パな黒髪。
野郎の詳細とかは要らんのだけど、これが今のノストラダムスさんの姿か。
背景を見るに山岳地帯かな。
「……どこの方?」
「転生は生物に限りますから地理については分かりかねますね」
「日本のことには詳しい癖にぃっ!」
「だって日本人って転生に寛容なんですよ、嫌でも覚えてしまいます」
「いや、でも、よく考えたらノストラダムスさんと同じ人でも、ノストラダムスさんみたく予言してくれるとは限りませんよね」
「そうですね」
「意味ないじゃん!」
「でも魂は同じですから素養はありますよ。ノストラダムスさんが嘘つき野郎じゃなければ。架空の人物ではないですからそこは安心していいです」
「霊能者とかほとんど詐欺師みたいだと思うんだけど」
「まぁ100人いたら少なくとも99人は霊能は無いですね」
「ほぼ全滅じゃん」
「まぁ0じゃないですから可能性はありますよ」
「嘘くせー」
「アンタだって霊能者みたいなものです。なんですか、転生チャンスが分かるって、意味わからないんですよねー」
「ここでの僕。って、え? 僕、霊能者なの?」
というか、神様にすら理解不能な僕ってヤバくない?
神様が転生出来ないとか言ってるのの信憑性も揺らがない?
行けるんじゃない?
行けちゃうんじゃない!?
転生、しちゃう?
「あ、すみません」
「なんで謝罪した」
「解明しようとしてないので分からないだけで、解明すれば分かるんですよ」
「……つまり?」
「転生出来るか出来ないかには関わりがありませんね。つまり転生は出来ません」
「万が一の可能性が」
「ゼロって何掛けてもゼロなんですよね」
「足し算すれば良くないですかね」
「可能性の計算に足し算は使わないんですよ」
「なんで!?」
「さぁ? 私、学術の神じゃないですから」
「それなら足し算使わないとかも分からないんじゃ?」
「そうですね」
「チクショウっ!」
クソ、このょぅι゛ょめ……
次回作では陵辱、輪姦、乱交と来たから箸休めにしようと思ってたけど休まず薬キメてやろうか。
「あー、転生のお仕事したくないなぁ〜」
「イチャラブにしましょう、そうしましょう」
「というかエロ挟むな」
「だが断るっ!」
それとこれとは別腹だから。
大体神様と人間である僕とで価値観共有も出来ないんだし、てんこたんは神様がモデルだけど神様をリスペクトしただけで神様とは違うし。
なんなら似てるけど違いますとか言えるし。
そもそもどんだけ頑張ってもこの神々しさは出せないし。
それこそ2次元と3次元くらい情報量違うし。
「あ」
「あによ」
そうか、なんだ、こんなに簡単な事だったのか……。
僕はなんて遠回りをしていたんだろう。
解決策はあるじゃないか。
問題は僕の心臓が持つのかどうか、それだけだ。