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てんきょ!  作者: 言狐
3/5

彼の者の名はヒデオ

 

 あー失敗した失敗したぁ!!!


 コノヤロウ、ロリコンのくせして私がドストライクな見た目になって来てやったのに抵抗激しすぎないかなぁ?


 しかもコノヤロウに姿を見せちゃったから、コノヤロウからはもうそういう風にしか見えないし、それどころか何度も顔を合わせているうちに私の認識でもこの姿が固定化されてしまった。


 不本意極まりない。


 人間如きに御姿を規定されるとか、しかもこんな、こんな子供っぽい姿で!!


 許すまじ。


 大体この男はなんなのだ。


 私が、この私が、丁度イイ感じにそれなりに不幸で人生損してる感じのピュアとかいう童貞野郎を唆して転生ヒャッハーしてあげる権利を与えようとしているのに邪魔してくるゴミめぇ。


 おっと言葉遣いが……


 そもそも、そもそもだ。


 転生するには不幸値が必要なのだ。


 ほんの少しの不幸値が。


 人間というのは割とすぐに死ぬ。


 産まれたと思ったらシワシワになって死ぬのだ。


 病気とかいうのに罹っても死ぬし、栄養摂取しなくても死ぬ。

 なんなら自分たちで殺しあって死ぬ。


 地上でちょっと風が起きても死ぬし、水中にちょっと居ても死ぬ。

 空気が無くて死ぬくせに空気がない所に態々行って死ぬ。


 食べたら毒で死ぬのに食べて死ぬ。


 転んでもたまには死ぬし、怒りすぎて血管が切れて死ぬし、普段から栄養摂取してるのに摂取する栄養を間違えて死ぬ。


 仕事をして死ぬし、しなくても死ぬ。


 飛べもしないのに飛んでから死ぬ。

 寒いと死ぬくせに寒いところに行って死ぬ。


 もうなんというか、人間と言うやつは死ぬのが好きなのかと思うくらい死ぬ。


 まぁ、うじゃうじゃいるからいいけど。


 そうやって日々死に散らかしている人間は、割と「死ぬ時に不幸」なのだ。


 いつでもどこでも死ぬのに死にたいと思ってじゃあ死のうという人間はごく稀だ。


 死にたくはないらしい。謎である。


 そんなわけで、死にたくないのに死ぬ人間は多いが、何やらやり残したこととか、そういった未練的な何かがある人間は不幸ではあるが幸福でもある。


 何がどうしてかはともかく、死ぬ時にまだ死ねない、死にたくないと思っていると輪廻しやすい。


 死ぬくせに前向きで結構。


 不幸だけど、次は後悔しないようにすればいい。

 だから不幸だけど幸福で、つまりはそんなものは不幸ではない。


 人間の輪廻してる中の一瞬で不幸とかちょっと驕り過ぎてはないだろうか。


 たとえば、1万回くらい輪廻してる人間が、その内の1回とか、まぁ、1000回でもいいけど、少しくらいなんかダメで死んでも誤差ってモノだ。


 そんな時もある。


 コインを投げれば表になることもあれば裏になることもある、くらいの些細なこと。


 だから、好きに死ねばいいのに……


 中には、死ぬ時にやり切った奴が出てきてしまうのだ。


 やり切ってないのに!!!


 お前、全然やり切ってないから。


 疲れすぎて何かしらで死ぬ瞬間にちょっとイイコトしてやるぜってやつが出てくる。


 そうやって死ぬやつは、輪廻してくれない。


 満足しやがるのだ。

 輪廻した後の次の人生の事を考えもせずに「自分の人生これで終わり」って思ってしまう。


 そのくせに、次の人生はもう少しハッピーだといいな、とか呪いを吐くのだ。


 勝手に終了宣言した上でこれだ。


 終わったから動かない。

 動かないのに次は幸福でいて欲しい。

 次考えるなら動けと言うのに。


 死ぬ時は不幸でかつ幸福になるはずなのに、逆転してしまう。


 死んで幸福だから不幸になる。


 面倒臭すぎる!!!


 人間は本当に頭が悪すぎて困る。


 だから、そういう人間をちょっと他の世界なりでリフレッシュさせて、不幸にも死んで貰って幸福にも前向きに輪廻してくれるように誘導するのだ。


 そこに来てこの男である。


 嬉々として死にに来る。

 なんなら善行しながら死にに来る。

 でもそんな人間は死んでも勝手に次に行く。


 ところがどうだ。

 死ぬ為に全力で取り組んでいるのに死にたくはないらしい。

 でも死にに来る。


 世にも珍しい死ぬ為に死のうとする馬鹿の所業である。

 でも、死なないし死にたくもない。

 流行りの異世界転生だかなんだか似たようなアレがしたくて日夜鍛錬を重ねた。

 頭の中で。


 冒険譚に出てくるようなワクワクドキドキの活劇をしたいと思いながら、剣を振った。

 ゲームの中で。


 将来は英雄になる予定だから、困ってる人を助けたりもした。

 大人相手は怖いので子供限定で。

 当然ゲームの中でも困ってる人を助けた。


 とあるネトゲの中の彼はとても有名人だ。


『この前、ヒデオが素人さんにレクチャーしててようやるなぁ、と思いつつリアフレ迎えに行ったら、街の中でヒデオが新人相手に露店で赤ポ投げ売りしてた。でも俺、そこで怖くなったんだ。ヒデオ、確か今日ラ〇ュタで案内役兼サポーターしてたはずなんだ。何言ってるのか自分でもよくわからんが……(略)』

『ヒデオはヒデオ(ヒロイック・ディメンジョン・オンライン)の運営とは無関係らしい。でも、俺がそう思い込んでて個人的クソアプデを文句言いに行ったら、丁寧な謝罪付きで紳士的な対応された。なんなら運営より運営してた。ヒデオ運営はヒデオにもっと感謝した方がいい。クレームの何割かは確実にヒデオが対応してる』

ヒデオ(英雄)さんマジパないww』

『さすヒデ、名前が英雄だけある。リアルなら惚れちゃったね』

『あそこまで来ると引くw』

『でもヒデオ、迷惑そうに思う奴は困ってても助けんやろ?』

『確かに助けられたことないわ!!!』

『ヒデオは人の心が読める。これマジ』

『ヒデオが作ってほぼ無償で配布してた初心者パックを運営が丸パクリしたのは有名な話』

『さすヒデ、ヒデオの誰よりもヒデオしてる。ヒデオオブヒデオ』


 などなど。

 ヒデオこと、日野出(ひので) 雄太(ゆうた) はデイトレで稼ぎつつ異世界転生を夢見る真性のドアホである。


 そんな彼はたまにフラっと旅行に出る。


 意味が分からないが、転生するチャンスが分かるらしい。超謎。


 日本各地で選別の上で転生トラックを用意しても、猛然と入れ替わりに来る。


 日本人は転生に寛容だから他の国よりもとてもやりやすいのに、コイツのせいで台無しである。


 だが、恐ろしいことに、少し不満げになるコイツにほくそ笑みながら外国で転生させようとすると、転生対象に幸運が舞い降りて生きる希望を持ってしまう。


 ブラック企業の社長が違法風俗の摘発に引っかかって芋づる式に企業の闇が暴かれ、経営体制の刷新が起こり、ホワイト企業になって社員が救われたりする。


 日本以外では転生するチャンスが作れない。


 コイツは神にでもなった方がいいのでは無いだろうか。


 だから、私は上司に直訴したのだ。


『日野出がいると転生が上手くいかないので、日野出が死ぬまで待っててもいいですか?』


 そう、人間なんて精々100年もあれば死ぬんだから100年待てばいい。


『それはだめ、というか、人間に譲ったことになっちゃうじゃない。頑張れ、てんこっ!』


『てんこじゃないですからっ! テレリテルテリコですから! 変なあだ名付けないでくださいっ!』


『いや、舌噛みそうじゃん。電子ちゃんの親戚みたいで可愛い可愛い!』


『雑ぅ! というか電子ちゃんって誰ですか?』


『え? 知らないの? 人間感覚で言うと割と前からいるマスコットキャラなんだけどなぁ……』


『私はネズミ王国のマスコットの方が好きですし』


『チッ! 売国奴だったか! ちょっと業績悪化させちゃおうかなぁ』


『やめてください!?』


『今のは冗談だけど、転生はやめないでね、彼はダメだけど。なんなら転生対象の評価は少し甘くしてもいい。今は選別結構厳しめだし』


『それしたら、前に勘違い勇者とかいうお馬鹿が出てきたじゃないですか、独りよがりの正義で周りは大迷惑ですよ』


『あったねー、そんな事』


 思い出したらイラっとした。


 こっちは少し未練を残すくらいでそれなりな満足感を得つつ輪廻に戻ってくれればそれで良かったのに、怨念抱えるほどに歪んだりしていたのだ。


 輪廻どころじゃない。


 摂理から逸脱したら、管轄が変わる。


 死の女王エリディヴィアは新しいオモチャが出来て大喜びだろうが。


 ともかく、今はコノヤロウだ。


 目の前で眼福そうにわたしを見る視線がおぞましい。


 頼むから頭の中で触手とくんずほぐれつさせないで欲しい。


「ねぇ、アンタ、あんまり不遜で不埒なこと考えてると殺すわよ?」


「いやでも神様って快楽堕ちするもんだし……」


「そんな常識があるかっ!!」


「でも、聖辱転神ホーリィてんこの同人誌売れてるしなぁ」


「なにしてんのーーっ!?!?」


「あ、ごめんね、モデル料あげたいんだけど、ここには持ち込めないからさ」


「そこじゃないしっ!!」


 ちょっと次の転生者探してたらこれだ!


 慌てて現物を探したら全面モザイクで何も見えなかった。

 つまりはアダルト規制確定という訳で、コノヤロウはマジでやりやがったという事でもある。


「ちょっとー!! 本当に何してんの!? モザイクで何も見えないんだけど!?」


「え? 神様何歳なの?」


「私の年齢は18とかなわけないけど、この体の構成が13歳だからだよ! 死ねっ!」


「ほほぅ? つまり、神様は肉体年齢に引き摺られるって事ですか? 0歳とかにしたらバブゥしか言えなくなるとか?」


「そんなわけないでしょ。馬鹿なの?」


「急な真顔やめてください」


 あまりにあんまりな出来事に私が無になったら土下座された。


 コノヤロウ……何としても概要を掴まねばという使命感をもって神様パワーで色々検索掛けたら見つけてしまった。


『てんこたんハァハァ(*´Д`*)』

『てんこたんマジおば可愛い(*´Д`*)』

『なんであんな目にあってまぁいっかになるのかwww バカワイイ舐めてたwww』

『清々しく粛清してるのマジてんこ笑』

『アレが出来るならレイポされる前にやれよww』

『言うなよ、楽しんでんだからwww』

『ダーク系かと思ったらギャグでしたとか草』

『というかヒデオってあのヒデオの中のヒデオじゃないよね?』

『え?』

『いや、あのヒデオらしいぞ』

『嘘だっ!?!?』

『ヒデオに確認したらマジ』

『ヒデオwwwwww』

『紳士どこいったんだよwww』

『創作は別腹って言ってたw』

『別腹ww』

『イエスロリータノータッチは3次オンリーww』

『しかもてんこたんにはモデルが居るらしい』

『通報しました』

『通報しました』

『通報しました』

『てんこたん保護しなくちゃ』

『おまわりさんこいつです』

『通報しました』

『通報しました』

『警察学校に通ってる俺が保母する』

『保母さん(*´Д`*)』

『幼稚園に近づけるな』

『誰だよ、ロリコン警察リアルに育成してるのwww』

『日本オワタ\(^o^)/』

『通報しました?』

『もう通報しても……』

 ……………………

 ………………

 …………


 しにたい……



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