3.再会
「あの、トイレに行かせてもらってもよろしいですか?」
そう言った彼を見て私と店長は目を合わせた。
声は若々しくやはり私と同じくらいの歳だと確信した。
店長は彼が大人しく危害を加える様子も見えなかったため、トイレに行くことを許した。彼が部屋を出て行った後、肩をすかされた気分の私と店長は本当に警察に引き渡すか相談してた。万引きと言ってもたかがおにぎり一個だけだったからだ。生活に困窮していそうな青年を罪に問うか店長が一番悩んでいた。
いつの間にか戻ってきた彼は「あの、僕はやっぱり警察に行きます。迷惑かけてすみません」と言い、電話を借りても良いか聞いてきた。私は反応に困り何にも答えることができなかった。
「たけは、ら?」といきなり彼はおもむろに私の名前を呼んだ。正社員は胸に苗字の書いてあるネームプレートを付けることが義務付けられていたからその名前を呼んだのかと思い半ばびっくりしている私に続けて言った。
「やっぱり竹原だ。同じサークルだったの名覚えてる?」暫くの間狭い事務所には静寂が宿った。髭が生えていて顔の形がわからなかったが確かに同じサークルにいたやつだった。