1.万引き
「今まで本当に沢山の幸せな生活をありがとう」
そう書いた手紙と私の気持ちをを置いたまま彼は出て行った。
ただ立ち尽くすしか無かった。
1 万引き
ただやりたいことも無くなあなあに生きていた大学はあっという間に終わりを告げ、サークルの仲間は皆就職していった。かく言う私もスーパーの正社員として4月半ばから働くことになっている。上司の人はいい人そうだしパートの人も温かったらから就職を決めた。というのは表向きの口実で実際は就職氷河期と呼ばれる時代に差し掛かり雇用難だっただけなんて口が裂けても言えない。それでも私は就職できたからよしとしよう、そう思えた。サークルの中で唯一就職できなかったやつが居るらしい。気の毒に、なんて思ったがそれが誰かわからなかったのでそれ以上なんとも思う事は何も無かった。そんな事を考えている間にあっという間に正社員としての忙しい日々を過ごしていた。格別仕事好きではないが上司からお咎められない80点の毎日だった。私が女だったのも一理あるかもしれないが、同期の大手に就職指した性格がひん曲がったやつらは悉く退職して行った。ざまぁなんて思いながら私自身やりがいのない日々に退屈を感じていた。