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伝説のハンターがオカマだった件  作者: 原案:空星きらめ/作者:犬太
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序章

配信見てたら書きたくなって、書いちゃいました。

出勤の道すがら、彼──否、彼女は今日の授業内容を心中で(そら)んじた。

彼女の勤めるハンター学院は5年制で、彼女は最高学年の5年生を教えている。

今日は午前中、いくつかのクラスで変わる変わる座学を教え、午後からは全クラス合同での実技演習を監督することになっている。


──若い人材を育てるのは、存外楽しいのよね♪

彼女の足取りは軽い。至極、軽い。

──特にEクラスは近接戦闘特化クラスだから……

彼女は町中にあまねく視線、喧騒を意に介さない。祭事民謡の激しいリズムを空想しつつ、ステップを踏み、軽やかにターン。日光を受けた銀の長髪が、キラリとはためく。

──だからEクラスには、男の子が多いのよ♪

(ちな)みに3限目の座学は、Eクラスでの授業になっている。



「おはようございます、キラーリア殿」


「おはようございます。私のことはキラーリア()()とお呼びくださいね、メリス先生?」


「いえ。何度言われようと、ヴラド・キラメ・フォン・オッカーマン・イチカラーリアは僕の憧れのハンターですから」


「ヴァニラ・キラーリアです。軽率に私をその名で呼ぶのは、くれぐれもおやめください」


「はい!申し訳ありません!」


「分かればよろしい」


会話が繰り広げられているのは、職員室。ヴァニラがふと耳を傾けると、室内はいつもよりざわついている様子だ。


「メリス先生。今日は何か特別なことでもあるんですか?」


「それが、5年Eクラスのイーリオ君の謹慎処分が、昨日いっぱいで解けたんだとか」


「ああ、あのクソガキ!」


「キラーリア殿!お言葉を(つつし)んでください!確かに彼の素行は処分相応、決して善くはありませんが……」


ヴァニラの言葉を聞いた教師陣は、抑止的、ないし「よく言った」的視線を彼女に送った。


「ほら、みんな見てますよ」


「今日戻ってくるなら、丁度いいわ!ギタギタのケチョケチョンにしてやるんだから!」


「聞いてないし……問題を起こさないでくださいよ?」


「大丈夫。デコピンでガマンしますから♪」



2限目終了の鐘を聞いて、ヴァニラの心はいちだんと高揚(こうよう)した。

3限目のEクラスでの授業自体にも胸躍らせているが、やはり彼女の心をより掻き立てるのは、(もっぱ)ら彼──ウィリス・イーリオがいるという事実だ。


彼の素行は、野卑(やひ)粗暴(そぼう)。そして言うに事欠いて、実技の成績()学内トップレベルという始末だ。

故に彼女の心は久々の高揚を迎えているのである。

Gクラスのホームルームを出て右手の方向へ。教室をひとつ跨いで引き戸に手をかける。


そして威風堂々、戸を開ける。すると──


「ヴァニラちゃん!後ろ!」


1人の男子生徒が、ヴァニラに警告。だがそれよりも一瞬早く、ヴァニラは背後の刺客に気づいていた。

振り返る間もなく、ヴァニラは後ろ手に刺客を相手取ろうとする。


「無駄だ!くたばれオカマヴァンプ!!」


刺客の右腕に、バチバチと電撃が走る。


「イーリオサンダーブロウ!!!」


(いかづち)の如き右ストレートが、ヴァニラを背後から貫く──かに見えた。


パチンっと、刺客──ウィリス・イーリオの額に衝撃。後ろ手に伸びるヴァニラの右腕は、ウィリスの右腕より数段長い。


「クソガ……イーリオちゃん。魔法を使う時のお約束、覚えてるかしら?」


「関係無いね。だってさっきのは魔法じゃない!俺の新必殺技!イーリオサンダーっ……」


「魔法を使う時は、ハンター候補生である以上必ず詠唱をすること。必殺技だかなんだか知らないけど、この決まりだけは守らないと、いくらヴァニラちゃんでも許さないんだから」


「っるせぇ!!誰がてめぇみたいな胡散臭い()()の言うことなんて聞くもんかよ!」


ウィリスを掴むヴァニラの手の爪が、彼の額に少し食い込む。


「いでっ」


そのまま片手でウィリスを持ち上げたヴァニラが、ホームルームに彼を放り込んだのと全く同時に、3限目の始まりを告げる鐘が鳴った。


「私は()()じゃありません。ヴァニラちゃんです。それも、この学院ではお約束よ?」


「舐めんじゃねえぞ胡乱(うろん)ヴァンプ!」


全く会話にならないので、ため息をひとつ。


「素直に授業を受ける気は?」


「あるわけねえだろ。座学なんてつまんねんだよ!昔話は聞き飽きたっつーの!」


──私たちの生きた時代を、こうも軽薄に罵られてはたまらないわね。

額を押さえ、ため息をひとつ。これで2つ目と、胸中で勘定した。


その(かん)、イーリオの右腕に、再び電撃が走る。


「油断したなこのオカマめ!」


「さっきからボキャブラリーにデバフかかりすぎなのよ!」


「喰らえ!イーリオサンダーブロウ!!!!」


ヴァニラの眼前に、必殺の閃光。()けること無く、()なすでもなく、ただ見つめ、そして構えた。


右手の親指がセーフティ。人差し指に渾身(こんしん)の破壊力を込め、ただ機を待つ。


そしてウィリスが、ヴァニラの長い右腕のリーチより距離を少し余して、自分より頭一つ分高い彼女の顔面に自分の拳が届くよう、斜め上方向を目掛けて踏み切った。


ヴァニラの赤と金の双眸(そうぼう)が、閃光に照らされ、輝く。

金の左目の虹彩(こうさい)にイチカラーリアの家紋が刻まれる。


刹那、親指のセーフティが解除。渾身の破壊力が、ウィリスの額めがけて解放される。


「ヴァニラちゃん式デコピンキャノン!!!」


室内全体が震撼。

ウィリスは吹き飛び、宙返りをして自分の席へホールインワン。


「安心して。魅了の魔眼はセーブしたから。教師と生徒の禁断の恋も、悪くは無いんだけどね♡」


室内の生徒全員が、「うげっ」と合唱した。


持病のドライアイに目薬をさして教壇へ登ると、ヴァニラは教室全体を見回した。


「それじゃあ、授業を始めましょ♪」


もちろんウィリスは面白くない顔をしたが、抵抗まではしないのだった。



「おいオカマヴァンプ。実技演習の時、覚えてろよ」


「せめて実技は真面目に受けなさい。あなたそれ以外はからっきしなんだから」


──午後からも、楽しくなりそうね♪


胸中で呟き、彼──否、彼女はほくそ笑んだのだった。

続きは期待しないでね♡

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― 新着の感想 ―
[一言] この短い時間でここまで書き上げるなんてすごいです… 教師陣から一目置かれてる感じ、いいですね
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