フレデリック先生
学校って楽しかったですよね。
Aクラスは40人ほどで、男の子の方が多いクラスだった。
南側校舎の二階の一番奥、北側校舎との間に広めの中庭がある。
中庭と言うか、畑?花壇?薬草とか、授業で使うハーブなどが植えてあるらしい。窓を開けると微かに良い匂いがする。
適当に座っても良いらしく、窓際の後ろ方に座る。私の前がソフィア、ソフィアの隣にカルロス殿下。私のとなりにドロシー。
殿下とソフィアが目立つせいか、他のクラスメートにチラチラと見られてる。
「どんな先生かな?」
視線を気にしないように、ドロシーに聞いてみた。
「若い先生がいるらしいよ。この国で一番の魔術師が今年から教師になったとか。23~24歳位だったかな。」
ちょっと考えるようなそぶりでドロシーが答えると
「えっ!ドロシー、それ誰に聞いたの?」
カルロス殿下が慌てて聞いてきた。
「うちの2番目のお兄様が魔術師団の団員ですので、聞きました。なんか凄くガッカリしておりましたよ。」
国一番の魔術師が抜けたら大損害ではないのかな?何のために教師になったんだろ。誰か特別に育てたいとか?
「そうか!フレデリック殿が教師になられたのか!ますます留学を決めて良かった。」
カルロス殿下は物凄くご機嫌で、ソワソワしてる。私は知らないけれど、男子にとってはヒーロー的な人なんだろうか?
その時、ドアが開いて2人の先生が来た。2人とも黒いローブを着てる。
短めの白髪に眼鏡の年配の先生が、最初に話し出す。
「皆さん、入学おめでとう!私は一年生全ての語学を担当しておるレスターだ。このクラスは成績上位の子供達と聞いています。そのつもりで授業を行うので、しっかり着いてきてください。」
みんなが少し姿勢を正した。
次は、長めの薄い茶色の髪に、アイスブルーの瞳のちょっと冷たそうな印象の背の高い先生だ。
「アドルフ・バーデンだ。このクラス担当教師だ。授業は魔術を担当する。」
残念、噂のフレデリック先生ではなかったみたい。
「その他に算術、歴史、ダンスや行儀見習い、男子は剣術などの先生方がいらっしゃるが、追々紹介することになるだろう。」
そのあと、クラスメート全員で自己紹介をする。やっぱり高位の貴族が多かった。
カルロス殿下の時は拍手が起こり、私の時は立ち上がって顔を見る生徒もいた。第一王子の婚約者だからなのか、なんか恥ずかしかった。
1人、私と同じ黒髪の男子がいて、大きな商会の跡取り息子と言っていた。
学園での禁止事項や、委員会などの説明で、今日は午前中で終わった。
帰ろうかと持ち物を片付けていると
「アレッタ様ですよね!俺、ニックって言います。一年間よろしく!」
と、先程の商会の跡取り息子が話しかけてきた。
本来なら、平民が貴族に話しかけるなど、あってはならない事なんだろうけど、ここは学園。一年間クラスメートともなると険悪になるのもどうかと思い、答える事にした。
「アレッタ・ファーレンです。よろしくお願いします。」
目線を少し下げる程度の目礼で済ませようとしたのだけど、更に話しかけられる。
「アレッタ様は帝国の縁の方ですか?俺は母が帝国の子爵家出身なんです。黒髪は帝国の色ですからね。」
「えっ。」
「知らなかったんですか?帝国では珍しくないですよ。黒髪も黒い瞳も。」
良く見ると、ニックは目も黒かった。
「……知りませんでした。確かに、母は黒髪で帝国の出身と聞いています。なぜ、父も母も教えてくれなかったかしら。」
子供の頃は、私だけみんなと色が違うと泣いた事もあったのに。
「君、高位の令嬢にむやみに話しかけるのは止めた方がいい。それに彼女はウィリアム第一王子の婚約者だ、失礼にあたる。」
カルロス殿下が割って入ってくれたが、
「えっ。でも、クラスメートですよね?仲良くした方が良くないですか?カルロス殿下とも、一年しか一緒に居られないんですから、俺はたくさん話したいです。」
カルロス殿下はちょっと考え、
「君はヘンダーソン商会の跡取りか。私の国とも取り引きがあったね。私は構わないが、アレッタ嬢は……」
「私も構いませんよ。ウィリアム殿下もクラスメートと話す位、何も言わないと思います。」
「やった!じゃあ、ぜひまた話しましょう。」
とニックは笑って頭を下げ、帰っていった。
ドロシーとソフィアは心配そうに見ていたが、私は帝国の話を聞きたいと思った。
拙い文章を読んでくれて嬉しいです。
ありがとうございます。
頑張ります。
誤字や、おかしな言い回しなどありましたら指摘してもらえると助かります。