第一王子に生まれて
自分の境遇を、嫌だと思った事はなかった。
優秀な弟が居たために、自由にさせてもらっていたのだと思う。
父の友人である侯爵家の兄妹、ローランドとアレッタと毎週のように遊んでいた。
同い年のローランドとは将来の夢など語り合い、剣術の真似事などをする内に親友となっていた。
いつの間にか一緒に遊ぶようになった小さなアレッタは、本当に可愛らしくて、兄のような気持ちになっていた。
手加減してやると、泣きながら怒ったり、ローランドにするように背中に抱き付くなどして甘えてくれた。
艶やかな黒髪が本当に美しくて、アレッタの頭を撫でるのが好きだった。
私の宝物。大切なんだ、本当に。
アレッタが婚約者になるのはすごく嬉しかった。毎日遊べる、楽しく過ごせると。このまま三人は変わらないと思っていた。
なのに、取り巻く環境は全て変わった。
父に期待されているのは解っていた。それは誇らしくもあり、認められたんだと思い嬉しかった。
一緒に剣術の稽古を始めたローランドから、アレッタもお妃になる為の勉強が始まり、とても頑張っていると聞いた。
いつの間にか、ローランドと語り合った将来の夢は、皆の期待に応えられるような王になる事へと変わっていった。
しばらくして久しぶりにアレッタの会える事になった。
アレッタだけは変わらずに私を見てくれる。前の様にたくさん遊ぼうと思っていたのだけど、違った。
「ウィリアム殿下、ごきげんよう。」
少し成長して綺麗になったアレッタは、とても眩しかった。
なぜか、その時からアレッタとどう話していいのか解らなくなった。
綺麗な黒髪にも、もう触れてはいけないような気がしていた。
正式に、王太子となってからは会える時間が増えた。
なのに、会話は弾まない。
前は何の話をしていたのか思い出せない。
アレッタはいつも微笑んでいるけれど、小さい頃のような輝く笑顔ではなかった。
誰しもいつまでも子供のままで居られない事は解っている。
自分も大人にならなければ。
13歳なった年から5年間、学園での生活だ。
王族として、皆の手本にならなければ。
読んで頂いてありがとうございます。
考えるの大変ですが頑張ります。