内緒話です。
ありがとうございます。
「何故ですか?」
「えーとね、光と闇属性は何人かいるんだけど、時魔法は存在しなくて、転移が君しか居ないからだよ。特殊な魔法が使えるのは、この学園では君とローランドだけなんだ。」
「ローランドお兄様と私。ファーレン家だけ、と言うことなんですね。」
「そう。帝国出身のルイーズ様の血筋だけなんだ。元々、帝国皇帝の血縁を、他国に嫁がせる事は無かったんだよね。帝国は畏怖されていたから、我が娘を嫁がせようとする国はあったけど、血縁の姫を欲しいと言う国は無かったんだよ。ルイーズ様にも帝国に婚約者がいたしね。」
親のロマンスを聞かされるのは、ちょっと気まずい。前のめりになっていた背筋を正し、リリーの入れてくれた紅茶をいただく事にして、ちょっとだけ気持ちを落ち着かせる。
「分かりました。では、兄と一緒に講義を受けると言うことでしょうか?」
「いや、ローランドは転移魔法ではないんだ。空間魔法と言う、また貴重な力なんだ。きっと……」
フレデリック先生は紅茶を一口飲み、何かを言いたそうにしながらも何も言わない。余計な事は聞かない方がいいと思い、知らない振りをした。
「では、友人には何と伝えたらよろしいですか?」
フレデリック先生は口元をさわりながら少し考えて
「そうだな。母の友人のフレデリック先生とお茶をする日だと伝えればいいんじゃないかな。僕も毎週とかは時間が取れないんだ。講義の日はリリーに連絡させるから、母の昔の話を聞きたいからとか言ってごらん。もし、行きたいと言われたら、たまに連れてくれば良いよ。本当に帝国の話をしてあげるから。」
「それは嬉しいです。友人も喜ぶと思います!」
「そう。なら好都合かな。アレッタ、お菓子食べなよ!リリーが用意してくれたんだ。」
それからは、学園での授業の話や、私の友達、ドロシーとソフィアの話をしたりして五時限の授業時間が終わった。
「じゃあ、今度の新月の夕方、ここへおいで。」
新月の日と約束をして、フレデリック先生の部屋を後にする。自分たちの教室は二階だからちょっと早めに戻る事にした。
途中で何故かニックに会う。
「あれ?アレッタ嬢?授業はどうしたの?」
「ニックこそ、五時限は外国語の授業だったでしょう?Aクラスは南側校舎に向かってたわよ!」
「いや、俺は用があって…。」
二人で早足で教室にたどり着くと、ソフィアもドロシーも帰っていた。ソフィアはカルロス殿下とこの後どうするのか話してたから放っておいて、ドロシーとニックにフレデリック先生に帝国の話を聞きたくて月に2~3日お茶をするって話をした。
ドロシーは帝国の話は聞くべきだ。と賛成してくれたけど、ニックは不服そうだった。
「君は帝国の事を知らないから知りたがるんだ。」
と、すごく真剣に窘められる。
少し悔しくなって、「ニックは知っているの?」と、問えば、
「もちろん。商人としてとれだけの国を回ったと思ってるんだ。」
と、言われた。
今夜はフレデリック先生が、お父様お母様とお話してくださる事になっている。
うまく行けば、お母様から話を聞けるかもしれない。
と、逸る心を隠せなかった。
「知らないから知りたいと思うのは、おかしな事ではないわ。特に自分の正体が分かるんですから。」
「アレッタ嬢、待てって!」
と呼ぶニックの声も聞こえない振りをして家に帰った。
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