特別な属性テスト
階段を四階まで上がると、先生方の私室がある。
「さあ、こちらの部屋で。」
と、先生がドアを開けた部屋はフレデリック先生の私室だ。生徒とは言え、婚約者の居る身としては入りにくい。
戸惑っていると
「ああ、二人きりではないから大丈夫だよ。リリー、ファーレン家の令嬢だ。ご挨拶を。」
すると、部屋から黒髪を後ろで結い上げた、背の高いメイドが進み出た。
「お嬢様、珍しいお茶とお菓子も用意してございます。どうぞこちらへ。」
「……黒髪。」
声に出してしまったようで、二人に不思議な顔をされる。
「珍しいかい?」
「あ、はい。すみません。今まで私1人でしたし、学園に来てから私と母以外の黒髪の方を見たので、ちょっとビックリしたと言うか、その。」
「もしかして、コンプレックス?」
「……。」
「フレデリック様、失礼です。アレッタ様。まずはお座り下さい。」
「ああ、ごめんね。さぁ、座って。」
陽当たりのいい、それほど広くはないお部屋。窓際に机と肘掛け椅子がある。白いカーテンがかかっていた。
部屋の真ん中に4脚の椅子がある白いテーブルがあった。可愛いお菓子が準備されてる。リリーが二人分のカップに紅茶を注いでくれていた。
奥の席に座って、部屋の中をこそっと、見回してみる。
薬草とかがたくさんあるのかと思ったんだけど、そんな事もなく、壁の一面が本棚になっていて、たくさん本があった。
見たことの無い文字もある。
「本が多いでしょ?僕は魔術師だからね。色々な事が知りたいんだ。帝国やそれぞれの王国でも微妙に違うんだよ。君を呼んだのは、特別な属性テストをしたくて。」
「私は地火風の3つでしたけど、まだ何か持ってそうなんですか?」
「うん、君の血筋から考えると3つって事はないと思うんだ。例えば、カルロス殿下のサーハラ国では、ここオルフェイト王国での属性、地水火風闇光の他に、氷、雷もある。帝国では、その8つの他に時魔法、転移魔法なんてのもある。帝国の話はルイーズ様から聞いてるよね。」
「……すみません。私、お母様の国の話は何も知らないんです。誰も教えてくれなくて。」
フレデリック先生とリリーが驚いていた。
「何も?ルイーズ様が皇帝の血を引く公爵家の生まれだと言うことも聞いていないのか?」
「はい。今、初めて聞きました。」
皇帝陛下の血筋?お母様が?
フレデリック先生は難しい顔をして何かを考えてる。リリーは、心配そうに私を見ていた。
「僕から教えてもいいんだけど、今日、君の父上に話してからにするよ。とりあえず、テストだけしようか?」
と言うと、私の頭位ある、大きな水晶の玉を箱から取り出した。
七色、いやもっと複雑な色に光ってる。フレデリック先生の瞳みたい。
「これに、両手を当てて、魔力を込めてごらん。」
「はい。」
両手を添えるように当てて、魔力を込めると、水晶はぼうっと白く光始める。
「もっと強く。」
「はい。」
目をつぶって、今度はしっかりと掌に力を込めた。
パシュンと音がして目を開けると、大きな赤、茶色、緑の光が浮かび、小さく黄色とピンクの光が見えた。
赤は火、茶色が地、緑が風かしら。黄色とピンクが先生が知りたかった属性なのね。
「やっぱりね。ほら、黄色が光ってる。君は転移魔法を持ってるよ。帝国でも非常に珍しい。ピンクはチャーム、魅了だね。」
「先生、転移魔法とはどんな物ですか?物を移動させたりするのですか?」
フレデリック先生は水晶を箱にしまうと、箱に手を当て何かを呟くと、パッと箱が消えた。
「これが転移魔法。すごいでしょ?昔は戦争時の補給なんかにも役に立ったようだけど、今は平和だから、手紙やプレゼントを届けたりに使えるよ。」
すごい。これは、すごく便利な魔法ではないの!ドロシーが突然現れたプレゼントにビックリしてる顔が思い浮かぶ。
「すごいです!私も使えますか?」
「もちろん。適正があるのが分かったからね。僕が講師として責任を持って指導するよ!」
「ホントですか?フレデリック先生がなんて他の方々に申し訳ない気もしますけど、すごく嬉しいです。みんなに自慢します。」
「あ、ごめん。悪いんだけど、みんなには言わないで。」