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新婚中も目がはなせない  作者: 夢遥
7/24

新婚中も目がはなせない

陽向と優馬は学校では秘密の新婚ホヤホヤの夫婦。

葵が元婚約者と知り、ショックを隠せないでいた矢先、優馬に呼ばれて家に行ったものの、葵が中から出てきて、衝撃を受けたまま実家に帰る陽向。

そのまま、優馬とは別居状態になってしまって………。



ピピピ………………


翌朝、目覚し時計の音で、目を覚ましたあたしは昨日、携帯に何度も優馬さんから電話がきていたことに気がついた。


どうしよう………。かけたほうがいいのかな………?


何度か携帯を手に取ったけど、かける勇気が出なくて躊躇してしまう。




学校を休みたいと思いながら、パジャマのまま重い足取りで階段を下りて行くと、お母さんがキッチンで朝食の用意をしながら、あたしの姿にぎょっとさせる。


「陽向、どうしたの……その顔…………?それにパジャマだし」


「ちょ、ちょっと、顔を洗ってくる!!」


あたしは、慌ててお風呂場に駆け込むと鏡を覗いてみると、自分でもぎょっとしてしまう。


瞼が腫れて目の下にはクマができていて、とても学校へ行けるような顔じゃない。



「お母さん………具合が悪いから…………今日、学校休んでもいい?」


お母さんの所へ戻ると、あたしは弱々しい声で言う。


「え、大丈夫なの?」


「う、うん………熱もないみたいだし、寝てれば治ると思うから」


「大丈夫そうなら、お母さん仕事に行くけど…………」


「独りで大丈夫だから、仕事に行ってきてもいいよ」



お母さんには悪いけど、今は独りでいたい気分だ。



「じゃあ、早めに帰ってくるから、大人しく寝てるのよ」


「うん……」


あたしは、小さく頷いた。





独りになると、あたしは力が抜けたようにバタンとベッドの上に倒れると、チラッと枕元の時計に目がいく。



もうすぐ、1時間目が始まる頃かな………。

1時間目は英語で優馬さんの授業………。

あたしが休んでるの気づいてくれるかな………。



あ~!もう、今は優馬さんのこと考えたくない!!



頭から布団をガバっと被った時だった。


ピンポーン!!



玄関のチャイムが鳴る音がした。



誰だろうと思いながら、階段を下りてインターホンのカメラを確認すると、辻君が立っているのが見えて、インターホンごしに口を開いた。


「辻君………どうしたの?学校は………?」


「朝、陽向のこと迎えに来たんだけど、おばさんから陽向は体調が悪いから、休みだって訊いたから学校サボった」


そう言うと、飲料水やゼリーが入った買い物袋を持ち上げて、カメラに向かって見せた。



「……………………」


あたしは、玄関の外へ出るとドアを閉めた。



「はい、お見舞い。大丈夫か?酷い顔だけど……………」


あたしの顔を見るなり心配そうに、辻君は飲料水が入った買い物袋を、あたしの前に出した。


「ありがとう……………大丈夫だから………」


買い物袋を受け取ると、顔を見られたくなくて慌てて顔を背けた。


「そんな顔させてるのって、また先生が原因なのか?」


「…………………………」


何も応えることができず、きゅっと唇を噛み締める。


「………………もう、あんな奴やめろよ!」


辻君にぐいっと腕を引っ張られ、抱き締めらた。


「は、離して!!誰かに見られたら………」


学校でのキスのことを思い出して、慌てて離れようとしたけど、辻君の腕にますます力が入る。


「誰かに見られても、俺は構わない!!」


「く………苦しい………」


目を白黒させていると、ハッと気がついて辻君は解放した。


「ごめん………つい、感情的になちゃって」


「ううん………あ、これ、有難う……じゃあ、あたしは少し休むから」


「陽向ーー」


家の中に入ろうとした時、辻君に名前を呼ばれて振り向いた。


「あ、いや……陽向のこと心配だから、また、来てもいいかな………?」


目を潤ませながら、心配そうな顔で辻君に見つめられ断るのも可哀想に思い、つい頷いてしまった。


「良かった~~!!じゃあ、またな」


軽く手を上げると、辻君は帰って行った。






あたしは、家に入るとリビングのソファーに座った。


昨夜眠れなかったせいか、何だかぼーとしてしまう。


次第に睡魔に襲われて、ソファーに横になると、いつの間にか眠ってしまった。






どのくらい経っただろうーー。



   玄関のチャイムで目が覚めたあたしは、寝ぼけた目を擦りながらソファーから起き上がった。


    まだ、頭が朦朧としながら、誰が来たのかインターホンのカメラを確認すると、優馬さんが玄関前に立っていた。


「陽向…………いるなら、出てきてくれないか?」


「……………………………」


戸惑いながら、玄関の鍵を開けると、優馬さんはほっとした顔をせた。


「お母さんに、陽向の様子が変だから、見てきて欲しいって頼まれたんだ」


「……………………………」


何だ…………、お母さんに頼まれたから様子を見に来ただけなんだ………。


「が………学校はどうしたの………?」


「今、昼休みだから、抜けてきた」



寝ていてわからなかったけど、お昼になっていたみたいだ。




「陽向に、こんな顔させてるの俺なんだよな…………………」



優馬さんは、あたしの顔をじっと見つめると、そっと頬を触れてきた。




「……………………!!」




ドキドキと鼓動が高まって、ただ優馬さんのことを見つめることしかできないでいた。



「ごめん」



「………………………………」



どうして、優馬さんが謝るの?灯野先生のこと秘密にしてたから………?



真剣な眼差しに、あたしはどうしていいかわからずにいると、玄関のチャイムが鳴り響いた。



「陽向ーー!!お腹空いてないか?コンビニでお昼買ってきたんだけど」



玄関前で辻君の声がした。



そう言えば辻君また、来るって言ってたんだった…………。



今は、優馬さんと話することが怖くてつい玄関のドアを開けようと手を伸ばした時、


「陽向………!!」


すかず、優馬さんがあたしの手を掴むと引き寄せた。


「………………っ」


「陽向、開けるな!俺の話を訊いてくれないか?」


「や、やだ………灯野先生のことだったら訊きたくない」


あたしは、必死に優馬さんから離れようとした。


「それでも、訊いてほしい」


真剣な瞳で言う優馬さんに、ただ無言で首を振る。


「陽向…………灯野先生とは確かに婚約してたけど………」


「ーーーーーー!!」


あたしに構わず、優馬さんは話し始めた。


「でも、もう終わってることだから……今は、俺が大切に想ってるのは陽……西野だけだから」


「…………………………」


優馬さんの言葉を信じたい………………。



「そんなの、信用できるかよ」


玄関のドアが開いて、辻君が顔を覗かせた。




「辻ーーーー」



優馬さんは、玄関のカギをかけとけば良かったと、後から後悔する。


「灯野先生、今でも大事そうに杉浦先生から貰った婚約指輪を持ってるのに、陽向だけ大切だなんて虫が良すぎるんじゃないのかな」


辻君の言葉に優馬さんは、動揺しているみたいだ。


「つ、辻君………もういいから………」


「良くないだろ?こういう事はハッキリせないと」


辻君は、ムッとさせながら優馬さんを睨みつける。


「わかった……そのことは、きちんと彼女と話するから。でも、辻には関係ないことだから、これ以上、俺達のことで首を突っ込まないでほしい」


優馬さんは、深い溜息をつく。


「は?俺にも関係あるだろ。陽向のことが好きなんだから」


「まだ、西野のこと諦めてなかったのか?」


「陽向のあんな顔みてたら、諦められるわけないだろ!?」


苛立ったせながら、優馬さんに掴みかかろうとした。


「や、やめて!!もういいから」


あたしは、慌てて止めに入った。


「悪い………そろそろ、学校に戻らないと……この話は、また後でしよう」


腕時計を見ながら、申し訳なそうに優馬さんはあたしに目を向ける。


「…………………………」


そう言われても、言葉が出てこない。


「ほら、行くぞ!辻」


優馬さんは辻君の襟首を掴むと、帰るように促した。


「何で、俺まで帰らないと行けないんだよ!!」


「午前中の授業をサボったぶん、午後の授業はちゃんと受けてもらわないとな」


「なんだよ、担任でもないくせに指図するなよ!!」


辻君がワアワア喚いたけど、構わず優馬さんは辻君を連れて行ってしまった。




『俺が、大切に想ってるのは西野だけだから』


2人が立ち去ったあと、あたしは優馬さんの言葉を想い出していた。


本当は、優馬さんのこと信じたいのに、どうしても不安感の方が先に過ぎってしまっていた。






翌日、重い足取りで学校へ 行く。


「席につけ、ホームルーム始めるぞーーー」


朝のホームルームに、何故か優馬さんが教室に入って来た。


「あれ?杉浦先生!?」


クラスのみんなが、優馬さんに注目する。


「担任の中嶋先生が休みなので、今日だけ俺が中嶋先生の代わりをやることになったから、よろしくな~~」


「優馬先生でラッキー」


クラスの女子は、喜んでいるみたいだけど、あたしは複雑な気持ちでいた。


「このさいだから、担任は杉浦先生がなってよ!」


独りの子がいい出すと、クラス中が賛成!と口々に言うものだから、優馬さんは苦笑いをした。


「おーい、そんなこと言ったら、中嶋先生が可哀想だぞ」


「だってー、あのおじさん冗談通じないんだもん」


「それは、わかる!この前、先生が…………………」


そして、いつもと違いアットホームな雰囲気で朝のホームルームは終わった。



優馬さんが教室を出る時、一瞬目が合ったような気がしたけど、あたしは慌てて視線を逸らしてしまった。



はぁー、こんなんで優馬さんとちゃんと話せるのかな…………。




そして、英語の時間ーー。


「この間やったテストを返すから、名前を呼ばれた人は取りに来てー。相川………」


優馬さんは、順番に名前を呼び始めた。


「西野」


あたしの順番になり、優馬さんの所に答案用紙を取りにいくと、無言で渡されて恐る恐る答案用紙を覗くと、そこには30と数字が書かれてあった。



「………………!!」


今まで英語で赤点を取ったことがなかったのに、ショックもいいところだ。



「40点以下の人は、今日の放課後、補習をやるから教室に残ってるように」


優馬さんの呼びかけに、ただテストの答案用紙を見つめている事しかできなかった。




放課後ーー。

補習の為、教室に残っていると、次々とみんな帰り出して最後にあたし独りだけになってしまった。


えっ、あたし独りだけなんて嘘でしょ……………!?


席に座ったまま固まっていると、優馬さんが教室に入って来た。


「……………西野が英語で補習なんて始めてだな」


「…………………………」


「陽向…………………」


優馬さんは、優しくあたしの名前を呼ぶ。


「補習………お願いします」


優馬さんの言葉を断ち切るように、あたしは静かな口調で言った。


二人っきりなんて、久しぶりで何だか緊張してしまう。



優馬さんは小さな溜息をつくと、補習を始めた。



誰もいない教室に優馬さんの声が響き渡る。



補習が終わる頃には、外は厚い雲に覆われて雨が降り出していた。



どうしよう……傘持ってきてない。




「傘、持ってこなかったのか?」



不安そうに教室の窓から外を眺めていると、優馬さんが教団の上の教材をまとめながら、あたしを見る。


「うん………。でも、大丈夫……」


そう、返事を返したけど、優馬さんは小さな溜息をついた。


「こんに降ってるのに、大丈夫じゃないだろ?」


優馬さんが近くに来ると、あたしの頭をクシャッと撫でた。


久しぶりに触れられて、鼓動が速くなる。


「ほ………本当に大丈夫だから」


鞄を持って教室を出ようとした時、優馬さんに腕を掴まれた。


「…………職員室に予備の傘があると思うから」


「う、うん……………」


あたしは小さく頷くと、教室を出た。



でも、職員室に行ったものの急な雨のせいか、みんな傘を借りてしまって予備がない状態だった。


「どうしよう……………」


とぼとぼと昇降口まで歩いていくと、辻君がいるのに気がついて立ち止まった。


「補習………大丈夫だったか?」


「だ、大丈夫に決まってるでしょー。今回のテストはたまたまで………って、何であたしが補習だってわかったの?」


誰にも言ってないはず…………。


「後ろの席だし、チラッと見えたって言うか………じゃなくて、あいつ……杉浦先生と何もなかったのか?」


「…………もしかして、そのことが心配で、あたしのこと待ってたの?」


「当たり前だろ……また、泣かされてるのかと思ってさ」


「……………………………」


辻君の彼女になったら、本当に大切にしてくれそう。



「あら?西野さんと辻君、まだ帰らなかったの?もう、とっくに下校時間が過ぎてるわよ」


昇降口の前を灯野先生が通りかかり、あたし達がまだ残っているのに気がついて足を止めた。


「あ、傘を持ってきてないから帰れないので、少し小降りになるまで待っていようかと思って」


辻君が外を見ながら応えると、灯野先生は優馬さんと同じ言葉を口にする。


「職員室に予備の傘があると思うから、借りて行きなさい」


「それが……みんな借りてないみたいです」


あたしはさっき、職員室に行って傘がなかったことを、灯野先生に話した。


「そう………それじゃ、仕方ないわね……あっ、そうだ!ちょっと2人とも待ってて!先生に良い考えがあるから」


灯野先生は慌てて何処かに行ってしまった。




しばらく待っていると、灯野先生が優馬さんを連れて戻ってきた。


「お待たせ!杉浦先生に事情を話したら、車で送っててくれることになったから2人とも安心して」


灯野先生はにこやかに微笑むと優馬さんの背中に手をやった。


「生徒が困ってるのに、ほっとけないしな………」


優馬さんは、呟くように言うと灯野先生はそれに応えるように口を開く。


「そうそう、その為の教師でもあるものね」


「もう、だいたい仕事も終わってるから、駐輪場の所で待ってなさい」


そう言うと、優馬んは職員室へ戻って行った。




空を見上げると、さっきより雨が強くなっているような気もする。



「雨も小降りにになりそうもないし……とりあえず、乗せてもらおう」



「うん…………」


本当なら優馬さんと一緒の家へ帰るはずなのに、今は別居状態だし、何だか寂しい。



「行こう、陽向」


あたしと辻君は屋根のある近くの駐輪場へ急いだ。



駐輪場からだと、駐車場も近いのですぐに優馬さんは車を回してくれた。


何度も乗った助手席には、当然のように灯野先生が乗っているのに気がついて、あたし膝の上でギュッと拳を握り締めた。


「灯野先生も一緒に帰るの?」


車の後部座席に座りながら辻君の質問に、灯野先生は後ろを振り向く。


「仕事も一段落したし、それに……今日は杉浦先生とデートをする約束してたの……ね?」


灯野先生は恥ずかしそうに、運転する優馬さんを見る。


「…………………!!」


ズキンと胸が締め付けられ、上手く呼吸ができなくなるのを感じながら唇を噛み締めた。


「いや、べ、別にデートじゃないし」


少し曖昧に応える優馬さんに、あたしはますます落ち込むばかり。


ミラー越しに優馬さんに見られていることも知らずに、やっとの思いで移り変わる外の景色をただ、見つめることしかできなかった。



「最初の目的地、辻の家に到着」


しばらくして、辻君の家に到着すると、雨はさっきより小降りになっていた。


「陽向、大丈夫か?」


降りる間際に、辻君が心配そうにあたしの耳元で囁いた。


「え、何が………?」


「だから……この後、独りでも大丈夫なのか心配なんだけど………」


チラッと、優馬さんと灯野先生の方を見る辻君に、


「だ、大丈夫………。じゃ、じゃあね辻君」


あたしは、ぎこちなく微笑んだ。


「辻………降りないのか?」


まごまごしている辻君に、優馬さんは冷たい眼差しで睨みつけた。


「はいはい降ります!有難うございました!」


ぶっきらぼうに言うと、辻君は車から降りた。


「どうしたの?優……杉浦先生、顔が怖いわよ」


灯野先生が驚きながら、優馬さんの顔を覗き込む。


「…………な、何でもないから。ほ、ほら、次は西野の家に出発」


慌てて車を発進させると、ハンドルを握り締めた。


「…………………………」


家に着いてあたしが降りた後は、優馬さんは灯野先生とデートする………。


心の奥でヤキモチと苦しさが交じりあって、どうしていいのかわからなくなっていた。



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