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新婚中も目がはなせない  作者: 夢遥
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新婚中も目がはなせない

陽翔がみんなに言ってくれたお陰で、陽翔と付き合っていないことが証明できて、安心する陽向。

早く優馬に報告しようとしたけど、なかなか言う機会がない日が続いていた。

そんな中、葵と優馬が元婚約者だと知って、ショックを受けるのだった。



1時間目から、英語があることに今頃、気がついて憂鬱そうに小さな溜息をついた。



今まで、優馬さんの授業がある日は楽しみだったのに、今は優馬さんの顔を見るのも辛くて授業を受けたい気分にはなれない。



「陽向、どうした?」


後ろの席に座っていた辻君が、ヒョイっと顔を覗かせた。


「な、何でもない………」


慌てて小さく首を振った時だった、


「席についてーー」


一番逢いたい人の声が、あたしの耳に届いた。


顔を上げて優馬さんを見ると、一瞬目が合い無意識のうちに、視線を逸らしてしまった。



やっぱり、優馬さんの顔が見れない。どうしても、灯野先生とのことを疑ってしまう。



唇を噛み締めながら、俯いていることしかできない。


「LESSON2の英文を、今日の日直の白沢ー、読んでみて」


「え、俺ーーーー!?」


優馬さんに指示されて、白沢君は仕方なく椅子から立つと読み始めた。


白沢君が読んでいる間、優馬さんは持っている教科書目をやりながら、順々に席を回って歩いて来ると、あたしの横で足を止めた。


「陽………西野、具合大丈夫か………?」


「…………………………っ」


優馬さんが、小さく囁く声がして、身体をぴくっとさせた。


「西………野………?」


優馬さんの声に、あたしは切なさが込み上がり、胸が張り裂けそうになる。


俯くことしかできないあたしを怪訝に思ったのか、 優馬さんがあたしに触れようとする気配を感じた時、後ろの席の辻君が、いきなり席を立ち上がった。


優馬さんは勿論、教科書に集中していたクラスみんなが、一斉に辻君に注目する。


「あ………先生、西野さんが具合が悪そうなので、保健室に連れて行きます!!」


辻君はあたしの肩を掴んで強引に立たせると、連れて行こうとした。


「え、いや、そう言うことなら俺が連れてくから」


優馬さんは、とっさに辻君の腕を掴んだ。


「先生は授業があるんだから、このまま続けてくださーい」


「…………………っ」


何も言えなく口ごもると、優馬さんは仕方なく辻君から手を離した。


「行こう!陽向」


辻君に連れられて、あたしは俯いたまま教室を出た。



辻君の後をついて保健室へ向かっている間、教室ではーー。


「ちょっと、今、辻君が西野さんのこと陽向って呼んでたよ!?」


「付き合ってないなんて、宣言してたけど本当は付き合ってるんじゃないの!?」

勇気を出して

みんな大騒ぎする中で、優馬は教壇に戻ると、イライラしながらバンと教科書を置いた。


「静かに!授業中だぞ!?」



「先生、どうしたのーー?なんか機嫌悪くない?」


生徒に言われて、冷静さを失っていることに気がつき、そっと溜息をつくのだった。






「保健室の先生、いないみたいだな」


辻君に連れられて、保健室に来たあたしはベッドに腰を下ろした。


「あの、辻君………ごめんね、朝から気を使わせちゃって」


朝、灯野先生と奈留が優馬さんの会話してる時に、辻君がそこから連れ出してくれたことを思い出す。



「そんなこと気にしなくていいよ。好きな子の為だったら、俺が守るのは当然だし」


「………………………」


今は辻君の言葉が、心に染みる。


「こんなに、陽向のこと泣かせるなんて……やっぱり、あいつはやめとけよ。灯野先生の元婚約者なんだから」


「…………………っ」


灯野先生……優馬さんに貰った婚約指輪、今でも大事そうに持ってた…………。



次第にあたしの瞳から、涙が溢れてきた。


泣いちゃ、ダメ……………。


ぐっと堪えると、キュッと唇を噛み締める。


「陽向…………」


辻君があたしに手を伸ばすと、優しく引き寄せた。


「つ、辻君ーーーー!?」


慌てて離れようとしたけど、力が強くて腕を解くことができない。


「俺の前では、我慢しなくていいから。泣きたい時は泣けよ」


「……………っ…………」


優しくあたしの背中を摩ってくれる辻君に、気持ちが緩んでしまい涙が溢れ零れ落ちた。




どのくらい、泣いていただろう……。


落ち着いた頃には、もうすぐ授業が終わる頃だった。


「ご、ごめん………もう、大丈夫だから」


涙を指で拭くと、あたしは辻君から離れた。


「辻君は先に教室に戻ってて。あたしは、少し休んでくから………」


「わかった………。じゃあ、また休み時間にでも来るから」


あたしに気を使っているのか、辻君は保健室を出て行った。



こんな泣き腫らした顔じゃ、教室に戻るなんてできない。


「少し休んでこう………」


ベッドに入ると、そっと目を閉じた。




次第にうとうとしてきて、意識が遠のいていった。


どのくらい眠っただろう………。


保健室のドアが開く音がして誰かが入ってきて、近くに近づいてくる人の気配がした。



「………………………」


誰…………?保健室の先生が戻ってきたのかな?



朦朧とする中で、その人はあたしの髪を優しく撫でる。


「陽………向……」


愛おしそうに呼ぶ声がすると、唇にふわりと温かい感触を伝わってきた。


「…………………」


優馬さん………?


重い瞼をゆっくりと開けると、目の前には辻君が立っていた。


「つ、辻君ーーーー!?」


驚きのあまりがばっと起き上がった時だった………。


「お前ら……………………………」


声のする方へ視線を移すと、いつの間にか優馬さんが近くに立っていた。



「ーーーーー!!」


見られたーーーー!?


あたしはショックのあまり、何も言えなくなり固まっていると、


「あ、優君ーー」


灯野先生が保健室に入って来た。


「え、あ、灯野先生……その呼び方はちょっと……」


「何、恥ずかしがってるのよ?優君だって葵って呼んでくれてるじゃない………あ、そこの2人のこと気にしてるの?」


灯野先生は、あたしと辻君に気がついたのか、こっちをチラッと見た。


「あの2人は、あたし達のこと知ってるし気にしなくても大丈夫よ」


「……………………………っ!!」


優馬さんは、あきらかに動揺しているみたいだ。


「それより、窪田先生が捜してたわよ」


「………………わかった」


優馬さんと灯野先生が、保健室を出て行った後、肩の力が抜けてへなへなとベッドに横たわった。



優馬さん、今でも灯野先生のこと名前で呼んでるんだ………?それもそうか、結婚まで考えてたんだもんね………………。



胸の奥にズキンと痛みが走って、また、じんわりと涙が溢れてきそうになる。



「陽向………………?」


ネガティブになりかけた時、辻君が顔を覗いてきたので、さっきキスされたことを思い出して、思わず顔を背けてしまった。


「………さっきは、ごめん。寝てるのにキスなんかして」


「…………………………」


「でも、俺はキスしたの後悔はしてない。でも、あいつのことで悩んでる陽向を見たら、一発殴らないと気がすまない」


「ーーーー!!あ、あの、大丈夫だから、先生はあたしのこと大切そうにしてくれてるし…………」


サーと血の気が引いて、がばっとベッドから起き上がると、 とっさに辻君の腕を掴んだ。


「何処が大切にされてるんだよ。陽向のこと、こんなに泣かせて!!」


「お願い辻君!落ちついて……」


必死に止めるあたしを見て、辻君は大きな溜息をついた。


「ごめん……陽向を困らせるつもりはなかったのに。そんな顔されたら、我慢するしかないか……」


「ううん、辻君……ありがとう。そろそろ、教室に戻らないと」


時計を見ると、もうすぐ3時間目が始まるところだ。


どうやら、2時間目は寝てしまったらしい。


3時間目は出ないと…………。


あたしは、ベッドから下りると上履きを履いた。



「え、と、辻君が先に教室に行って」


一緒に教室に行くと、また噂されても困るし、その方が無難だ。


「……………………噂のこと気にしてるなら、もう遅いんだけど………」


「え………………」


申し訳なさそうに言う辻君を、あたしは怪訝そうな顔で見つめた。


「2時間目が始まる前に、教室に戻ったらクラスの連中にいろいろと訊かれて……付き合ってないとは言ったんだけど、信じたかどうか疑問なんだよな……」


「そ、そんなーーー」


あたしは、愕然と肩の力を落とした。


「とにかく、先に戻ってるから、陽向は後からおいで」


そう言うと、辻君は保健室を出て行った。





少し経ってから、あたしも教室へ戻ろうと保健室を出ると、優馬さんと灯野先生が女の子達に囲まれている所を目撃する。



困ったな………横を通らないと教室には行けない。


勇気を出して近づいていくと、


「優馬先生と灯野先生って、元婚約者だったんでしょー?」


「どうして、結婚しなかったの?2人お似合いなのに」


2人を囲んでいる子達から、次々と質問詰めにあっていた。



「まあ、いろいろとあって………ね?杉浦先生?」


灯野先生が、何か訴えるように優馬さんを見つめた。


「うん、まあ……………………」


曖昧に応える優馬さんの横を通り過ぎようとした時、一瞬、目が合ったような気がしたけど、すぐに視線を逸らされた。


「………………………っ」


さっき、辻君にキスされた所を見られてるし、あたしの顔も見たくないのかも知れない。


「あ、でも、嫌いで別れたわけじゃないのはわかる!!嫌いで別れたなら、今もこうしていないもん」


優馬さんと灯野先生の周りを囲んでいた子達が、次々と言っているのが嫌でも耳に入るのを我慢しながら、俯いたまま足早に通り過ぎた。






数日後、夕食の用意の手伝いをしていると、お母さんが心配そうにあたしを見つめた。



「ねえ、陽向。もう、体調もいいみたいだし、優馬さんの所に帰ってあげたら?」


「……………………………」


つい、学校で避けてしまって、優馬さんとは話していない日が続いているのを、お母さんは知らない。


「もしかして、優馬さんと何かあった?」


「ううん………あ、ほら、優馬さん、学校の方も忙しいみたいで………帰りも遅くなるし、あたし独りじゃ心配だから、しばらく実家に帰っていたほうが安心だって言ってくれてて………」


「そう?それならいいんだけど」


お母さんは少し安心させた様子だったけど、あたしは内心、嘘をついたことに申し訳ない気持ちでいっぱいになった時だった。



ピロロロ~~~


メールの着信音が鳴って、夕飯の準備をしていた、あたしの手が途中で止まる。



そっと、携帯を見ると優馬さんからのメールだった。


『明日、帰りは家に帰ってきてくれないかな?話がしたい』


「…………………………」


話ってなんだろう………………?


ドクンドクンと鼓動が速くなる。



「メール、優馬さんから?」


固まっているとあたしに、お母さんが訊いてきた。


「う、うん」


「優馬さん、陽向が家にいなくて、寂しいんじゃないの?」


「そ、そうかな………?」


「陽向、覚えてる?優馬さんが家に来た時、責任もって陽向を幸せにする、寂しい想いは絶対にさせないって言ってたの?」


お母さんは、嬉しそうに自分の事のように話した。


「……………………………」


あの時は、優馬さんの言葉が嬉しくて、つい泣いちゃったな………。



「陽向も、優馬さんのこと寂しい想いをさせちゃダメよ。明日、優馬さんが帰りが早いようだったら、家にいてあげなさい」


「うん………………」



一応、返事はしたものの、実際どうしていいのかわからず口ごもてしまった。







翌日の放課後、教室を出るとすぐに奈留に声をかけられた。


「陽向、帰りにパフェ食べてこう」


「うん」


まだ、優馬さんが帰ってくるまで時間があるし、寄り道しても大丈夫だよね………。



「お~い、陽翔!陽向とパフェ食べに行くんだけど、一緒に行かない?」


ちょうど、教室から出てきた辻君に奈留は手を振った。


「ちょ、ちょっと、辻君も誘うの!?」


「えっ、まずかった?」


怪訝そうに、奈留はあたしを見る。


「ま、まずいって言うか………辻君、男の子だよ?いくらなんでも、甘い物は食べないんじゃないかな?」


あのキス以来、辻君とはまともに顔を合わせられないのに、一緒に帰るなんてありえない。


「陽翔、ああ見えて結構、甘党なんだよね」


奈留が応えたすぐ後に、辻君は返事を返してきた。


「陽向も行くなら、一緒に行く」


「じゃあ、行こう!」


躊躇していると、奈留に引っ張られお店へ直行することに。





お店に着くと、さっそくパフェを注文して、3人で食べながらお喋り。


と、言ってもほとんど奈留が喋っている状態だ。


「それはそうと、陽翔ー、陽向とはどうなってるの?」


奈留が興味本位で辻君に訊いてきた。


「どうなってるって………まあ、キスはしたけど。な?陽向」


「……………………………!!」


辻君に視線を向けられて、顔がみるみる赤くなっていくのがわかった。


「えっ、じゃあ、付き合い始めたの!?」


奈留が嬉しそうに言うのを、あたしは慌てて否定する。


「つ、付き合ってないから!!」


「えー、つまんない………………」


「つまんないって…………………」


あたしは優馬さんと結婚してるのに、そんなこと言われてもーーー。



「ま、俺の物になるのも時間の問題だけどな」


自信に満ちた顔で、パフェを食べながら辻君は言う。


「なっーーーー!!」


何、言ってるのーーーー!?そんなこと、有り得ないから。

そりゃあ、灯野先生とのことはショックだったけど、別れるなん考えたことがない。





お店を出てからも、奈留はあたしと辻君を2人っきりにさせようと、先に帰ろうとしていた。


「奈留、あたし用事があるから、また明日!!」


慌てて奈留を止めると、そそくさと逃げるようにその場を離れた。





帰り道、スーパーの前を遠すぎようとして、ふっと足を止めた。



久しぶりに、優馬さんの好きなビーフシチューを作ってあげようかな?


優馬さんとの会話も弾むかもしれない。



吸い込まれるように、スーパーの中へ入って行った。


ビーフシチューの材料を買って、スーパーを出る頃には、もうすでに辺りはすっかり暗くなっていた。


「遅くなっちゃった!!」


買い物袋を片手に、あたしは急いで優馬さんの所へ向かうのだった。






「どうしよう…………」


家に到着したものの、いざとなると家に入る勇気が出ずに、玄関の前で立ち尽くしていた。



もう、優馬さん帰ってるよね………?


合鍵はあるけど、インターホンを押してから入ろうかな…………。



震えた指先で、インターホンを鳴らしてしばらくすると、優馬さんが玄関のドアを開けた。


「陽向…………!!ごめん、今日はやっぱり、家に帰って、また明日来て………」


「え?どうして……………?」


慌てた様子の優馬さんを目の前に、あたしは怪訝そに見つめていると、


「優くんー、誰か来たの?」


家の中から灯野先生が顔を覗かせた。


「ーーーーー!!」


あたしは、あまりの衝撃に愕然とした。


「え、どうして、西野さんがいるのーー!?」


灯野先生は驚いた顔で、あたしに近づいた。


「あ、葵………これは、そのーーー……………」


優馬さんは、しどろもどろになりながら、理由を考えている様子だった。


「………………あ、あたし先生の家の近所に住んでいて、間違えて郵便が届いてて…………っ」


慌てて、買い物袋を後ろに隠すと横から口を挟んだ。


「えっ、それは初耳なんだけど………」


灯野先生は、驚いた顔で目を丸くする。



「そ、そろそろ帰らないと………お邪魔しました…………………!!」


後ろに後ずさりすると、ぱっと身体を翻した。


「西野………………!?」


背後で優馬さんの叫ぶ声が聞こえてきたけど、振り返らずにそのまま走り出した。






どのくらい走っただろう…………。


気がつくと、家の近くまで来ていた。


「何やってるんだろう…………あたし………」


次第に、目から涙が溢れてきて慌てて指先で拭う。



今まで元カノはいるのはわかってたけど、元婚約者までは予想もつかなかった。


嫌いで婚約解消したわけじゃないみたいだし、もしかしたら優馬さんにまだ、未練があるのかも知れない。



その夜、優馬さんから電話が来たことも知らずに、あたしは思いっきり泣いた。







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