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新婚中も目がはなせない  作者: 夢遥
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新婚中も目がはなせない

陽翔に諦めてもらうために、帰りだけ一週間、一緒に帰る約束を陽向。

でも、そのことで陽翔と付き合っていると噂が広まってしまい、優馬の耳にも入っていたことがわかる。

付き合っていないことを証明するようにと、優馬に言われてどうすればいいのか悩む日々が続いていた。

いつの間にか、辻君と付き合っている噂が、予想以上に広まっていることに気がついたのは、その日の夜のことだった。


「陽向、辻と付き合ってるってどういう事か説明してくれないかな?」


夕食の準備を終えて、お皿に盛り付けをしていると、珍しく早く帰って来た優馬さんが厳しい顔つきであたしを見つめた。


「ーーーー!!」


一瞬、手に持っていたお皿を落としそうになる。



優馬さんの耳にまで入ってるなんて、やっぱり、もっと早く話しておけばよかった。



覚悟を決めて、手に持っていたお皿をテーブルの上に置くと、優馬さんの方を振り向くと事情を説明した。



説明が終わると、優馬さんは深く溜息をつく。



「…………そんなことになってたなら、どうしてすぐに言わなかったんだよ?」


「……ごめんなさい……学校でも話そうとしたんだけど、みんなと仲良さそうに話してたから」


廊下で女の子達に囲まれている優馬さんに、チクンと胸が痛んだ。


「だからって、家でも話す機会だってあったはずだろ?」


「…………話そうとしたよ。でも、優馬さんは仕事で疲れているみたいだったし………」


「はぁー、俺は疲れてても陽向の話は訊くことくらいできるから」


溜息混じりの優馬さんの言葉に、胸が熱くなるのを感じた。


「とにかく、辻と付き合っていないことを証明しないとな。何とか考えよう」


優馬さんは、あたしの頭をポンポンと優しく撫でる。


「………………………」


でも、どうやって証明すればいいの?



辻君と帰る約束は、あと2日残っていた。





「ふぁ~~~」


翌日、学校で欠伸を連発するあたしを後ろの席の辻君に見つめられて、思わず欠伸が出そうなのを噛み締めた。



どうやって、付き合っていないことを証明しようか、夜ずっと考えていたら眠れなかった。



「どうしたの?寝不足?」


あたしの気持ちも知るよしもなく、辻君は心配そうに言う。


「悩み事があるなら訊くけど?」


「な、悩み事って………誰のせいで寝不足になってると思ってるの!?」


つい、イライラしながら言葉をぶつけてしまった後、周りの人から注目を浴びているのに気づき、恥ずかしくなって俯いた。



「へぇー、俺のことが関係するんだ?」


「だ、だってそうでしょ?付き合ってもいないのに噂にってるんだよ………………?どうにか、みんなの誤解を解かないと」


「誤解されたままでいいじゃん」


「あたしは、困るの!今日だって一緒に帰ったら、また噂されるの間違いないし」


溜息をつくあたしに、


「じゃあ、約束はやめる?俺は構わないけど。

西野さんのこと、諦めなくていいって判断するから」


辻君は嬉しそうに言う。


「…………………………」


それは困る!!やっぱり、帰るしかないのかな…………………。





放課後、辻君と帰ることをためらっていると、奈留が教室に顔を出した。


「奈留、どうしたの?」


あたしと辻君に気を使って、いつも先に帰るのに、珍しい。


「杉浦先生に今日と明日、家庭教師になって陽向に英語を教えるように頼まれたんだど…………」


「えっ…………………」


「中間テストが悪かったからって、言ってたよ。でも、おかしいよね………?あたしより、英語は得意なはずなのに」


確かに、英語のテストでは赤点はとっことはない。


怪訝そうに首を傾げる奈留に、あたしはハッとすした。。


辻君と2人だけにならないように、奈留にそんなこと言ったんだ。



「あー、うん。今回は点数が悪くて、赤点だったんだよね~~~………」


苦笑いしながら、恥ずかしそうに頭を搔く。


「えっ、そうなの?仕方ないなー。じゃあ、図書室で勉強していく?」


「う、うん………」


辻君と帰らなくてすむことに、ほっとさせながら頷いたけど、辻君の方が一枚うわてだった。


「じゃあ、俺は待ってるから」


「えっ、いいよ。遅くなるかもしれないし………ね、奈留?」


助けを求めるように、奈留を見つめる。


「うん………あ、じゃあ、陽向の家で勉強しようか?陽翔も一緒にどう?」


「俺は構わないけど」


突然、奈留の提案に言葉を詰まらせていると、辻君はさらっとOKしてしまう。



仕方なく、実家に帰ることになってしまい、辻君も含め、奈留の家庭教師は2日間に及んだ。





「う~~ん!」


あたしは、思いっ切り背伸びをした。



昼休み、良い天気なので外で奈留とお弁当を満喫した後、次の時間は移動教室の為、奈留は先に教室へ戻ってしまった。



優馬さんが折角、奈留に声をかけてくれて辻君と2人だけにならないように配慮してくれたのはいいけど、辻君までついてくることになって計画が台無し。そう思っていた…………。



でも、今日の朝、嬉しいことに辻君は諦めると言ってくれた。

それに、どういう風の吹き回しか、クラスのみんなに付き合っていないことを宣言してくれたのだ。



奈留の家庭教師のお陰で、昨日から実家に帰っていたから、2日ぶりに家に帰れる。



学校で話すのが1番手っ取り早いけど、家でゆっくりしながら、優馬さんに伝えたい!!


軽い足取りで、廊下を歩いていると、1番逢いたい人の姿があたしの目に飛び込んできた。



「優馬さ………杉浦先生!!」


優馬さんがあたしに気づき、振り向いてくれる。


優馬さんに向かって駆け出した。



近くまで行くと、灯野先生が一緒にいたことに気がついて、抱きつきたい気持ちを抑えながら優馬さんに近づいた。



「西野、どうした?」


優馬さんは、笑顔を向けてくれたけど、灯野先生がいる手前、言葉に詰まってしまった。


「授業で、何かわからないところでもあったのかな?」


「あ………いえ……、辻君のことで後で話が………」


やっとの思いで、口から言葉出る。


「もしかして、辻君と喧嘩した?」


灯野先生も話に入ってくると、心配そうにあたしの顔を覗き込む。



ど、どうしよう………言葉が続かない。



額にじんわりと冷や汗が滲んできた時だった。



「灯野先生、そろそろ時間だし職員室に戻らないと」


優馬さんが助け舟を出してくれて、ひと安心する。



「いけない!次の授業の準備をしないと」


慌てた顔で、職員室へ戻って行った。


「俺も戻らないと……陽向、今日の夜は帰ってくる?」


周りに誰もいないことを見計らって、優馬さんは耳元で囁いた。


「…………!うん」


「帰ったら、話の続き訊かせて」


優馬さんはあたしの肩にポンと手を置くと、職員室へいってしまった。





「ごめん、急に灯野先生の復帰祝いを先生方とやることになって、遅くなる」


「えっ!」


2日ぶりに家に帰ると、ご馳走を作って優馬さんが帰ってくるのを待っていたのに、突然の電話にあたしは愕然としてしまった。


「杉浦先生~~!!そろそろ、始めるそうでーす」


電話の向こうから、灯野先生の声が聴こえてきた。


「今行くーー…………遅くなる時は先に寝てていいから…………」


「えっ、ちょっと、待っ……………!」


あたしが呼び止める声も優馬さんに届かず、虚しく電話は切れてしまった。



帰ったら話を訊いてくれるって言ってたし、帰ってくるの待っていようかな…………。



優馬さんの帰宅が遅くなるのを覚悟で、待つことにしたものの、最後はうとうとしてしまっていた。


その時、ガチャっと音がして優馬さんが帰って来たのに気がついて、重い瞼を開けなが時計の針を見ると、夜の11時30分を過ぎたところだった。


「優馬さん、お帰りなさい」


頭が朦朧としながらも、優馬さんを出迎えた。



「ただいま、陽向……先に寝てていいって言ったのに起きててくれてたんだ?」


優馬さんは疲れた顔で、背広を脱ぐとハンガーにかけた。


「う、うん………」


「明日、日直で早いんだろ?俺は大丈夫だから、もう寝なさい」


そう言って、優馬さんは、おでこに優しくキスをした。


「……………………………」


辻君のことで話があるって言ったのに、忘れてるのかな?



話したい気持ちがあったのに、眠さに負けて

言葉が出ない。



明日の朝話せばいいかな?そう思ったあたしは、仕方なく寝ることにした。





翌日、目が覚めたのは、時計の針は7時30分を回ったところだった。


「いけない!今日、日直だったーーー!!」


布団から出ると、慌てて着替える。


「くしゅん!」


くしゃみの後、風邪引いたかな?と一瞬、そう思ったけど、あまり気にもとめずリビングへ行く。


「おはよう、陽向」


優馬さんが笑顔で出迎えてくれた。


テーブルの上を見ると、朝食の用意がされていた。


「もう、時間ないんだろ?早く食べよう」


「うん……ありがとう……」


申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、

朝食を頂くことにした。



朝、辻君のことを話そうかと思っていたのに、時間に追われて話す時間もない。


さっと、朝食をすませると、優馬さんより先に家を出た。





「くしゅん!」


「陽向、風邪でも引いた?」


放課後、奈留に待っててもらい日直の仕事を終わらせて日誌を届けに職員室へ届けに行く途中、あたしのくしゃみに奈留が心配そうな顔をさせた。


「ううん、大丈夫」


あたしが、笑顔で応えると奈留を廊下で待たせ、職員室に入って行く。


日誌を先生に渡し、職員室を出ようとした時、優馬さんが灯野先生と一緒に何か話している所を目撃する。



昨日、電話口でも近くに灯野先生がいたことを思い出す。


最近、灯野先生といることが多くない?


もやもやした気持ちで、職員室を後にしたのだった。




「けほっ……」


数日後の朝、時々出ていたくしゃみは咳に変わっていた。


「やっぱり、風邪引いたかな…………?」



大した事なかったから、薬は飲まなかったけど、今日は薬を飲んで早く寝よう………。



優馬さんはバスケット部の顧問になったらしく、夜は疲れて帰って来て朝は朝練で早めに家を出る日が続いていた。



辻君のことも優馬さんと話できないままだし、今日の朝は話せるかな………。



朝食を作り終わると、優馬さんが丁度、部屋から出てきた。


「陽向、おはよう!」


「おはよう、優馬さん。朝食できてるよ」


テーブルに朝食を並べながら、優馬さんに言う。


「時間がないけど、折角、陽向が作ってくれたし、頂くかな」


椅子に座り、頂きますと手を合わせると急いで食べ始めた。


「あの……優馬さん……辻君のことだけど」


一緒に食べながら、話をきりだそうとしたけど、


「もう、こんな時間か……ごめん、陽向。その話は帰ってから訊くから!ご馳走様」


時計を気にしながら、途中で食事を止めて椅子から上がった。


「えっ、もう終わり?」


驚いて優馬さんを見上げる。


「ごめん!時間ないんだ。残りは帰って来てから食べるから………行ってきます!」


「あ、優馬さん!お弁当!」


あたしの呼びかけに、優馬さんは慌ててお弁当を受け取ると、先に出かけてしまった。


「…………嘘つき……あたしの話だったら、いつでも訊いてくれるって言ったのに…………」


優馬さんが出かけた後、ボソっと呟く。


それに……最近、抱き合うこともキスもしてない。


寂しい気持ちを抑えながら、残った朝食を片付けると、あたしも学校へ向かった。





その日の午後ー。


「けほっ…………」


もうすぐ時間なので、自分の席に座り、次の授業の用意をしようとしたけど、何だか朝より体調が優れない。



次は、優馬さんの授業だから出ないなんて考えられない。



その時、後ろから辻君が顔を出した。


「西野さん、顔色悪いけど大丈夫?」


「あ、うん………………」


あれ以来、辻君とはいつもと変わらず話しかけてくれる。


「でも、最近ずっと調子悪そうだったよな?」


「えっ……………」


最近、調子が悪かったのは確かだけど、何でそんなこと知ってるの?


「ごめん、席が後ろだからつい………西野さんのこと気になって」


「ううん、ありがとう。でも、大丈夫だから」


あたしは、小さく首を振る。


「…………ならいいけど、あんまり無理するなよ」


辻君は、心配そうな顔で自分の席に座り直した時、優馬さんが教室のドアを開けて入ってきた。



「おーい、席について!授業始めるぞー」


優馬さんの掛け声に、みんなぞろぞろと席につき始めた。



朝は、忙しなく優馬さんは学校に行ってしまったから、授業中でも逢えるのは嬉しい。



「じゃあ、昨日やった所のLesson…………」


優馬さんが英語の教科書を広げた時だった。


「授業始める前に、先生に質問ーー!!」


「ん?」


クラスの女子の質問に教科書から顔をあげると、優馬さんはその子に目を向けた。


「灯野先生が、元婚約者って本当ーー!?」


あたしは、その言葉に息を詰まらせた。


灯野先生が…………元……婚約者…………??



「……………!!誰から、そんなこと訊いたんだ!?」


「え、だって、灯野先生が言ってたし」


「はぁ~~」


優馬さんは、手で顔を覆うと深い溜息をついた。


「その反応はー、やっぱり、本当なんだ!?」


クラスのみんなもザワザワと騒ぎ立て始めた。


「し、静かに!た、確かに、そんなこともあったけど………」


参ったなーと言う顔で、優馬さんは口ごもる。



「……………………………」


知らなかった……。ひと言もそんなことも言ってなかったよね?もしかして、隠してた?


だから、最近、一緒にいることが多かったんだ………。


「西野さん、大丈夫?」


後ろで辻君の心配そうな声をかけてきたけど、頭の中が真っ白になって、あたしの耳には何も入っていなかった。




授業が終わると、教室から飛び出すと優馬さんの背中を追って駆け出した。


「優…………杉浦先生!!」


優馬さんの姿を見つけると、急いで駆け寄った。


「西野…………」


悪いことをしたみたいに、優馬さんはあたしから目を逸らす。


「………さ……さっき言ってたこと本当なの?」


恐る恐る訊いてみると、静かに優馬さんは頷いてみせた。


「ああ……………」


「ーーーー!!」


「ごめん………黙ってて」


目を逸らしたまま、謝る優馬さんにあたしは何て言っていいかわからず俯くことしかできなかった。



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