新婚中も目がはなせない
陽向と優馬は学校では、生徒と教師だけど、本当は秘密の夫婦。
優馬の元婚約者が現れたり、クラスメイトの陽翔に告白されたりと、何かと問題はあったけど、解決してきた。
入試も終わり、やっと週末だけは優馬の所に帰っていいことを許可してもらえることになったけど………………!?
待ちに待った週末を迎え、優馬さんの所へ戻ることになって、久しぶりに優馬さんと過ごせると思ったら、昨日はウキウキして眠れなかった。
でも、優馬さんは土曜日だけど午前中は学校で仕事でいないから、帰ってくるまでに部屋の掃除をしてお昼ご飯の準備をしよう。
マンションに到着すると早速、優馬さんのいない間に部屋の掃除をする。でも、散らかすような人じゃないから、掃除は楽。
「こんなもんかな」
掃除機を片手に、部屋をぐるっと見回した。
「いけない!もうこんな時間」
時計の針はもうすぐ、12時を指そうとしていた。
お昼は軽めでいいかなーーー?
家から持ってきた材料を袋から出す。
家にあった物っていったら、パスタ麺と生クリームがあった。
それに、優馬さんの所に来た時に冷蔵庫を覗いたら、明太子が入っていたので、クリーム明太子パスタにしよう。
優馬さんが帰って来ないうちに、さっそくパスタを作り始めた。
パスタを茹でている間に、明太子の身をほぐして生クリームを混ぜたりと、手際良く作っていく。
最後にサラダをお皿に盛り始めた時、
ピンポ~ン!!
玄関のチャイムが鳴り響いた。
インターホンを確認すると優馬さんの姿が画面に映し出された。
「今、開けるね!!」
あたしは、急いで玄関に向かうと鍵を開けた。
「優馬さん、お帰りなさい!!」
元気よく出迎えたあたしを、優馬さんはギューと抱き締めた。
「陽向!!」
「く、苦しいーー」
「ごめんごめん。久しぶりに陽向に出迎えられて嬉しくて、つい…………」
優馬さんは、慌てて身体を離すと犬みたいに鼻をピクピクさせた。
「ん?いい匂い」
「お昼、明太子パスタ作ったの」
「じゃあ、早速食べようかな?あー、腹減った~~~」
「食べて食べて!!でも、その前に、急いでサラダを盛り付けしちゃうね」
急いでキッチンに行くと、途中だったサラダの盛り付けの準備を始めた。
「俺も手伝うよ」
キッチンに入ってくると優馬さんは、手を洗いながら訊ねてきた。
「ありがとう~!!じゃあ、お皿出して」
「OKーーーー」
手を洗うと、優馬さんは食器棚から、お皿を出すと並べ始めた。
食事の支度が準備できると、優馬さんと向かい合わせに座った。
「いただきます!!」
手を合わせると、無口でパスタを食べ始める優馬さんを眺めていたあたしに気がついて食べる手を止めた。
「食べないのか?」
「え?た、食べるよ」
久しぶりに目の前で食べる優馬さんにドキドキしながら見つめていたら、キョトンとした顔で反対に見つめられてしまった。
恥ずかしくなって、あたしは慌てて食べ始める。
昼食を食べた後、2人で後片付けをしてから、のんびりとティータイムの時間を楽しむことにした。
「優馬さん、アップルティーとレモンティーどっちがいい?」
家から持ってきた紅茶を見せると、
「アップルティーかな」
優馬さんはアップルティーの方を指さした。
「わかった!今、入れるね」
キッチンでお湯を沸かすと、コーヒーカップにお湯を注いでアップルティーを作った後、もう1つの自分のカップはレモンティーにした。
「お待たせ~~~!!」
ソファーで寛いでいた優馬さんに持っていくと、紅茶を飲んでホッと一息つく。
「陽向、こっちへおいで」
向かい合わせで座っていたあたしに、優馬さんが自分の膝をポンポンと軽く叩いた。
「~~~~~~~!!」
ひ、膝の上においでってことだよね?
恥ずかしそうに優馬さんの近くにいくと、グイッと引き寄せられ後ろから抱き締められる形になってしまった。
「はぁ~~~、久しぶりに陽向のこと触れた」
首筋に優馬さんの吐息がかかって、ドキドキと鼓動が高鳴る。
「あははは、本当。もう、学校も自由登校だし、学校に行った時にこっそり英語準備室に優馬さんに逢いに行くくらいだもんね」
「でも、こうして週末だけは何とか許可をもらったし、あと少しの辛抱だな」
「うん!!」
そうだよね、あと少しで卒業だし卒業しちゃえば、また一緒に暮らせる。
そう思っていたーーー。
「陽向!受験も終わったことだし、土曜日お泊まり会しない?」
受験ラッシュも終わり、いよいよ卒業式まであと一週間と迫ってきてきた頃、昼休みに奈留に呼び止められた。
「お泊まり会?」
「陽向と学校も違くなっちゃうし、最後に女子会しようと思って」
寂しそうに奈留は、あたしの腕を組む。
陽向は県外の大学に合格し、学校の寮生活になるこに決まった。
奈留とも、もうすぐお別れになっちゃうし、お泊まり会もしたいけど、週末は優馬さんと一緒にいられる日。
「ご、ごめん………土曜日はちょっとーーー」
「用事ある?」
「うん……………」
「残念………。卒業式が終わったら引越し先にに行かないといけないから、お泊まり会やりたかったのになーーー」
ガッカリと肩を落とす奈留を見てたら、何だか可哀想な気がしてきた。
どうしよう…………。
少し考えてから、溜め息をつくと口を開く。
「わかった………お泊まり会しよう」
お父さんに金曜日に優馬さんの所に行っていいか相談してみよう。
「本当!?じゃあ、土曜日にあたしの家でお泊まり会ね」
「え、でも、おばさんに迷惑かけるんじゃ…………」
「もう、事前に話をつけてあるから大丈夫!!」
「わかった………………」
奈留の段取りの速さに、苦笑いをするのだった。
さっそく家に帰って、お父さんに相談すると、意外なことに許可が降りたので、優馬さんに優馬さん電話報告する。
「わかった、金曜日に変更な?」
「うん………。でも、寂しいなーー。土日一緒にいられないなんて」
「でも、土曜日の午前中までは一緒にいられるんだろ?」
「うん、その予定だけど」
「じゃあ、それまで思いっきりイチャイチャしような?」
「~~~~~っ」
嬉しいけど、恥ずかしい~~~~!!
電話を手にしながら、顔を真っ赤にするのだった。
そして、金曜日の放課後ー。
卒業式の予行練習が終わって
急いで帰ろうと、昇降口に向かう途中、優馬さんに声をかけられた。
「西野、時間大丈夫だったら、ちょっと手伝ってもらいたいことがあるんだけど」
「はい、大丈夫です」
何だろう?手伝ってもらいたいことって。
優馬さんの後に着いていくと、急に腕を掴まれて視界の入らない場所へ連れてこられた。
「ゆ………杉浦先生、手伝ってもらいたいことがあるんじゃ?」
「ごめん、それは口実で……本当はこれからのことで話があったんだ」
「話?」
「急に職員会議が入っちゃって、遅くなりそうはなんだ」
「え~~~~、これから?」
「うん、多分、遅くなると思うから、先に夕飯食べて寝てていいから。じゃあ、これから会議だから!!」
「えっ、ゆ……杉浦先生!!」
あたしが喋る暇もなく、優馬さんは急いで職員会議に行ってしまった。
もぅーーー!!夕飯は美味しいもの作って2人で食べようと思ったのにーーーー。
仕方なく、帰りにスーパーで夕食の買い物をして帰ることにした。
「今日は、ロールキャベツを作ろうかな?」
スーパーで買ってきたキャベツを手に、ボソッと呟いた。
スーパーに寄って、一週間ぶりに我が家に帰っても、優馬さんと一緒に食事できないと作る気合いも入らない。
やっぱり、独りで食べるより2人で食べた方が絶対に美味しいよね。
でも、優馬さんもお腹を空かせて帰ってくるだろうし、張り切って作らなきゃ!!
キャベツの葉を一枚ずつ剥くとロールキャベツを作る準備にとりかかった。
夕飯が出来上がる頃には、7時を回っていた。
優馬さんが帰ってくるの、少し待っててみよう。
ソファーに座ると、テレビをつけて優馬さんの帰りを待つ。
ぼんやりとテレビを観ているうちに、何だか睡魔に襲われ大きな欠伸をした。
いけない、このまま寝ちゃいそう………………。
時計を見ると、8時30分を過ぎていた。
「優馬さん、遅いな……………」
ボソッと呟いた時、玄関が
開く音がして優馬さんが顔を覗かせた。
「陽向、ただいま」
「おかえりなさい!!」
パァーっと顔を明るくさせると、優馬さんに抱きついた。
「ごめん、遅くなって」
「優馬さん、お腹空いたでしょ?一緒に食べようと思って待ってたんだーーー」
「待っててくれたのか?先に食べててもよかったのに」
コートを脱ぎながら、チラッと食卓の上の夕食に視線を映した。
「食べよう!!」
急いで食事の用意をすると、優馬さんと一緒に遅い夕食を食べた。
「ごちそうさま」
食べ終わると、食べ終わった食器を片付けて、食事後に何か飲もうとしようとして何もないことに気がついた。
「優馬さん、飲み物ないから近くのコンビニで行ってくるね……」
ジャンパーを着てコンビニに行こうとして、優馬さんに止められる。
「ちょっとまった!独りで行くの危ないから、俺も一緒に行く」
「大丈夫だよ~~、子供じゃないんだから」
苦笑いするあたしに、優馬さんは深い溜息をつく。
「あのなー、陽向は女の子なんだぞ。何かあったらどうするんだ?」
真剣な顔で言われて、キュンしてしまう自分がいた。
「わ……わかった。優馬さんの言う通りにする」
「よし!わかればよろしい」
あたしの頭をポンポン撫でてから急いでコートを着ると、2人でコンビニへ出かけた。
「2人で出かけられるのは嬉しいけど、誰かに逢ったりしないかな…………」
外に出てから、ふと不安を感じてボソッと呟いた。
「もう、9時過ぎてるしいたとしても、これがあるし………」
そう言って、紙袋から眼鏡とニットの帽子を取り出した。
何か持ってきたのはわかってたけど、まさかそれが入っていたとは……………。
「ほら、こうして変装すれば何とかなりそうだろ?」
優馬さんは眼鏡をかけてニットの帽子をかぶってみせた。
「優馬さん、眼鏡似合う!!」
キュンとさせているあたしにも帽子をかぶせられて、真顔で優馬さんをみた。
「とりあえず、陽向も変装して。髪も帽子の中に隠すこと」
優馬さんに髪を触られ、耳たぶに指が触れた時、ドキッと鼓動が高鳴る。
周りには誰もいないとはいえ、何か恥ずかしい~~~!!
「顔赤いけど、大丈夫か?」
「え?あ、うん…………」
しどろもどろになりながら頷く。
コンビニに到着すると、飲み物コーナーへ。
「何がいいかな?」
紅茶とコーヒーを手にしながら悩んでいると、優馬さんが横からヒョイッと紅茶のほうをとった。
「陽向はコーヒー飲めないだろ?だから、こっちな?」
「ーーーーー」
確かに、コーヒーは苦くて苦手。でも、優馬さんが学校でいつもコーヒーを飲んでいるのは知ってる。だから、コーヒーの方を選ぼうかななんて、少し思っていた。
「あとは、ビールとおつまみも買っとこうかな」
ビールとおつまみをカゴに入れ、レジへ向かおうとした時、
「あれ?杉浦先生じゃないですか」
急に声をかけられ、振り向くと、校長先生が5歳くらいの男の子を連れて立っていた。
「ーーーーー!!」
ヤバっ!!
あたしは慌てて、背を向ける。
「こ、校長先生!!こんな所で逢うなんて奇遇ですねーーー」
優馬さんは、慌ててあたしを背中に隠すと、調子良く校長先生と話し始めた。
「あれ、もしかしてお孫さんですか?」
「下の息子の子なんだけどね、いやぁ、参ったよ~~、ここのコンビニしか売ってないお菓子が欲しいってせがまれて、少し足を伸ばしてこのコンビニまで来てしまって」
校長先生は目じりを下げながら、学校では見せない顔で話した。
校長先生でも、やっぱり孫には弱いんだなーーー。
「お孫さん、可愛いですものね~。それじゃ、そろそろ失礼します……」
早くその場を立ち去ろうとしたけど、
「杉浦先生、ちょっと待ってくれないか」
校長先生に呼び止められて、優馬さんは恐る恐る足を止めた。
「な、何でしょうか…………?」
「そこにいる彼女なんだが、何処かで見たことがあるような気がするんだが………」
そう言って、校長先生はあたしの方へ近付いてきた。
マズイ、バレちゃう!!
「こ、校長先生!!お孫さんをいつまでも待たせるのも可哀想ですし、そろそろ帰ってあげた方が………」
優馬さんが、慌てて校長先生を止めたけど遅かった。
「ーーー!!き、君は確かーーーー……………」
表情を強ばらせながら、校長先生は言葉に詰まらせた。
「あ、あの………校長先生、これには……」
優馬さんは何と事情を話そうしたけど、校長先生は静かに首を横に振る。
「いや、いい。言い訳は後日、訊こう」
何とか説明しようとした優馬さんの言葉も遮られ、校長先生は男の子を連れてコンビニを出ていってしまった。
「ゆ、優馬さん……どうしよう」
不安で押し潰されそうになりながら、優馬さんの袖をギュッと掴んだ。
「陽向は心配しなくても、大丈夫だから」
優しく握ってくれる優馬さんの手の温もりには、何故か安心さられるものがあった。
いよいよ卒業式が3日後に迫ってきたある日。
「西野、校長先生が呼んでるから校長室に来るように」
卒業式の予行練習の為、体育館へ向かおうとした時、担任の先生に呼び止められた。
「校長先生直々の呼び出しなんて、西野何かしたのか?」
先生に訊かれ、なんて受け答えしたらいいのか困ってしまい、曖昧に交わす。
「な、なんだろうーー?ちょっと行ってきます」
逃げるように立ち去ると、校長室へ向かった。
「し、失礼します………」
校長室に到着すると、緊張した手でドアを開けた。
「入りなさい」
校長先生に促され、中へ入ると優馬さんが緊張した表情で立っていた。
「2人とも、どうして呼び出されたか想像はつくと思うが……」
シーンと静まり返った校長室に、校長先生の厳しい声が響き渡る。
「はい……その件について説明させていただきます」
表情を強ばらせたまま、観念したように優馬さんはあたし達の関係を打ち明けた。
「きょ、教師と生徒が……け、結婚していたなんて、これはいちだいちじゃないか!?」
校長先生は頭を抱えると、深い溜め息をつく。
「校長先生の言うことはわかります。でも、この学校に赴任する前から西野と結婚していたので……」
優馬さんが説明しても、校長先生は眉間にシワを寄せたままだ。
「私は……杉浦先生と灯野先生が結婚すとばかり思っていたんだが……それは、大きな勘違いをしていた訳だ…………」
「今は、灯野先生とは何の関係もありません」
優馬さんが、きっぱりと否定すると、校長先生はひと息ついた。
「灯野先生このことは、わかった………それで、このことだが誰かに知られたりしなかったのかね?」
「…………灯野先生と一部の生徒には………」
「はぁーーー、灯野先生も知っていたと言うことか………」
「と、言っても……結婚していることまでは知っているかどうかですが………」
優馬さんの言う通り、灯野先生が何処までわかっているのか確証がない。
「とりあえず、彼女の御両親に話を訊くことにしよう」
「ーーーーー!!」
校長先生があたしの方へ視線を移す。
やっと週末だけでも優馬さんとこに帰ることを許してもらえたのに、校長先生にバレたことがお父さんに知られたら、今度は、離婚しろなんて言いかねない。
どうしていいかわからず、躊躇していると、優馬さんが優しくあたしの肩をポンと叩いた。
「西野の両親は、仕事の関係で、海外に行っているので話を訊くことはできません」
海外にいるって言えば、校長先生も諦めてくれるかも知れないってことか…………。
「……それは、仕方ありませんね
ーーー。では、2人のことを知っている灯野先生と一部の生徒に話を訊くことにしよう」
校長先生の呼び出しによって、灯野先生と辻君が校長室に呼び出されることになった。
校長先生があたしと優馬さんのことについて、灯野先生と辻君に話を訊く。
「2人が結婚していたなんて………知りませんでした。てっきり、付き合っているのかと………」
事実を知って、灯野先生は愕然とした。
「俺は知っていました」
その反対に、辻君が大きく頷いてみせると、灯野先生は「えっ!」っと言う顔で辻君に視線を向けた。
「そうか、君は最後まで知っていたのか………。2人の関係を知った時、どう思ったかね?」
辻君に校長先生の質問が飛ぶ。
「2人が結婚してるってわかった時は、凄く驚きました。でも、二人の間に俺が入る隙間もないくらい、2人とも惹かれあっていて信頼し合っていると知って、どうして2人が一緒になったのか納得しました」
「辻君…………………」
辻君の言葉が、じ~~んと胸に染みる。
「わかった………。要するに、2人には切るに切れない絆があると言うことか…………」
考え込むように眉をひそめる校長先生の次の言葉に、あたしも優馬さんも息を飲む。
「厳しい処分も考えなくてはならないところですが………卒業式まで、あと少し……、2人には卒業式まで自宅謹慎とします」
優馬さんの授業を楽しみに待っている人達だっているのに、急に優馬さんがいないことに、みんな不審に思うはずだ。
「ちょっと、待ってください!!あたしはともかく、杉浦先生の謹慎処分は取り消してくれませんか!?」
「西野……俺のことはいいから」
優馬さんはあたしを宥めるように、肩に手を置いた。
「西野さん、教師と生徒が結婚していたなんて、普通だったら謹慎処分じゃ済まされないのよ!?校長先生の言葉をありがたく受け取りなさい」
灯野先生の厳しい言葉に、あたしは何も言葉が出てこないでいた。
校長室を出た後、優馬さんと灯野先生と別れ、教室へ向かう途中、辻君はあたしの方を振り向いた。
「ごめん、陽向………守ってやれなくて」
済まなさそうにしている辻君に、あたしは首を振る。
「ううん、辻君には感謝してるの。校長先生に色々と言ってくれて…………でも、3年生はいくら自由登校って言っても、卒業式の予行練習があるでしょ?あたしがいないと、みんな不審に思うんじゃないかな…………」
「卒業式まで2、3日の話だろ?俺が何とか担任とクラスのみんなにも言っとくから」
「ありがとう、辻君」
申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、自宅謹慎となって1日目を迎え、その日の朝のことだった。
「陽向~~!!優馬さんがいらしたわよ」
朝、目が覚めてベッドでぼんやりしていると、お母さんが部屋のドアをノックした。
「えっ、あ、今行くから!!」
突然のことに、慌ててベッドから下りると着替え始めようとした。
「陽向、俺だけど」
「優馬さん!?」
優馬さんが部屋の前まで来ているとも知らずに、着替えてる途中で手が止まる。
「ごめん、このままで訊いてほしい。お義母さんには、校長先生のこと話したから………」
「えっ……………」
「それで、お義父さんにも………」
「ちょ、ちょっと待って!!」
優馬さんが話終わらないうちに、着替えてドアを開けた。
「陽向、お母さんは下に行ってるから、優馬さんとゆっくり話してから下に来なさい」
あたしの顔を見るなり、お母さんはあたし達に気を使って 階段を下りて行った後、部屋で優馬さんと話の続きをすることにーーー。
「このままではいけないと思って、さっきも言ったけど、お義母さんには校長先生にバレてしまったこと話した」
「お母さん……何て?」
「バレてしまったなら仕方ないって、謹慎処分だけで済んだだけでも校長先生に感謝しないとって言ってたよ」
「そうなんだ………」
ホッと胸を撫でおらしたものの……あとは、お父さんの方が問題だ。
「お義父さんにも話すかどうかお義母さんにも相談したんだけど、俺達の判断で任せることになってる」
「判断って言われても………優馬さんは、どう考えてるの?」
「俺は……お義父さんには話した方がいいと思う。陽向と一緒になることを、お義父さんに許しをもらう時、お義父さんが何て言ったか覚えてるか?」
「……………………………」
優馬さんに訊かれて、静かに頷いてみせた。
あの時は、まだ塾の先生だった優馬さん。塾の先生とはいえ、教師と生徒。何かあったら、隠し事をしないことと、もし、バレてしまったら別れることと、卒業するまでキス以上のことをしないと約束した。
「このことは、お義父さんには話したほうがいいと思う。このままにしておくのも後味悪いし………」
「優馬さんが、それでいいなら…………でも、バレたら別れるって約束も何とか今まで許してもらって、ここまで来れたのに……校長先生にまでバレたとなると、今度はお父さんも許してくれないかも……………」
だんだんと不安になってきて、唇をキュッと噛み締めた。
「陽向………………」
安心させるように肩を抱く優馬さんの手の温もりが、不安を解消させる。
「その時は、お義母さんにも協力してもらおう」
「うん……………」
お母さんに伝えると、賛成してくれた。
「わかったわ、あなた達が決めたことなら何も言わない。早速、今夜にでもお父さんと話しましょう。話してみて、お父さんの言いようにによっては、お母さんも協力させてもらうわ」
「お母さん、ありがとう!!」
お母さんの言葉に感謝の気持ちでいっぱいになりながら、深々と頭を下げた。
そして、その日の夜ー。
リビングで優馬さんから、お父さんに校長先生のことを打ち明けた。
「はぁーーー、卒業式も間近だと言うのに、お前達は何をやってるんだ!?」
話が終わると、重い溜息をつきながら、お父さんは頭を抱え込んだ。
「すみません、俺が迂闊でした」
「優馬さんは悪くないの!!あたしが、コンビニに行くなんて言ったから………」
「陽向は、黙ってなさい。優馬君、君は陽向とずっと一緒にいたいかね?」
顔を上げ、優馬さんを厳しい顔で見つめるお父さんに、あたしは息を呑む。
「はい、一緒にいたいです」
優馬さんが、キッパリと応えると、お父さんは決断したように、パッとソファーから立ち上がった。
「明日の朝、学校に行って校長先生と話をしてから、これからのことは考えよう」
「えっ、でも………親は海外に行ってていないって言ってあるし……………」
「そんなことは、急遽、帰って来たとでも言っておけば何とかなる。とにかく、バレてしまった以上、親が知らん振りと言う訳にもいかないだろう」
「それは、そうだけど………」
お父さんが行くと、話がややっこしくなって、謹慎処分だけじゃすまなくなりそうだから、できればそっとしておいてほしい。
「お義父さん、謹慎が終わった後、俺から何とか校長先生に言っておきますから、お義父さんは卒業式だけ来てあげてください………」
あたしが困っているのを見兼ねて、優馬さんは助け舟を出す。
「優馬君は黙っててくれないか。これは、親の責任でもあるんだ」
お父さんにピシッと言われ、優馬さんは黙るしかないようだ。
翌日、あたしはお父さんと一緒に学校へ向かった。
優馬さんに連絡しないで学校に来ちゃったけど、これ以上、巻き込みたくないし連絡しないでおこう。
お父さんと一緒に校長室へ行くと、校長先生は中へ通してくれた。
「わざわざ、そちらから出向いてくれて助かります」
校長先生は、にこやかに迎えてくれたけど、目が笑っていない。
「いえ、こちらこそ娘がお世話になっております。あの……この度は何と言ったらいいか、誠に申し訳ございません」
深々と頭を下げるお父さんの姿は、今まで見た事がない。
「学校としても退学と言いたいとこですが、卒業式も明日に迫っているわけですし、ここは目を瞑って、このまま謹慎と判断しました」
「はい、娘から訊きました。本当に何とお礼を言ったらいいか…………」
「杉浦先生と娘さんから訊いたところによると、一部の教師と生徒に知られているとか……よく、黙ってくれていてくれたことに感謝しないといけませんね」
「はい、それは肝に銘じておきます」
そうだよね、灯野先生と辻君には感謝しないと……………。
校長先生と話し終えた後、お父さんは仕事に行くのだった。
家に帰ると、優馬さんがそわそわしながらリビングのソファーに座って待っていた。
「陽向、お帰り!!お義父さんと校長先生の所に行ったんだって!?」
お母さんから訊いたのか、少し慌てた様子でソファーから立ち上がった。
「うん」
「どうして、教えてくれなかったんだ?俺にも関わることなのに」
「ごめんなさい………優馬さんをこれ以上、巻き込みたくなかったの」
「巻き込みたくなかったって………俺たちの問題なんだから、そんなこと気にしなくてもいい」
「だって……もし、お父さんが入って話がややっこしくなったら、謹慎処分だけじゃなくて、優馬さんがクビになっちゃうかもしれないんだよ!?」
そう考えると、胃がギューッと締め付けられる。
「陽向が無事に卒業できれば、俺はどうなってもいい」
優しく抱き締められて、胸がキュンとなりかけたところ、お母さんがキッチンから顔を出した。
「あらあら、仲が良いのはいいんだけど、お父さんの方は大丈夫なの?」
「あ、うん。謹慎だけですんだのも校長先生のおかげだけど、これからのことは帰ってきたら話し合いしようって…………」
恥ずかしそうに、慌てて優馬さんから離れると、お父さんが言っていたことを伝えた。
「じゃあ、優馬さんにもいてもらわないとね」
お母さんに言われて、優馬さんは緊張した表情で頷いた。
そして、その日の夜ー。
お父さんが仕事から帰ってくると、今後について話をすることに………。
「明日は卒業式だし、謹慎処分も解けるわけだけど、今月いっぱいは、陽向は優馬君の所に戻るのは禁止する」
「えっ、どうして!?卒業した後だし、何の問題もないのに…………」
お父さんの言葉に、納得がいかず反論する。
「卒業しても3月いっぱいは、まだ陽向は高校生なんだぞ?誰かに見られたら、学校に報告されて、今度こそ優馬君も謹慎処分だけじゃ、すまされないかもしれないぞ」
「まっさかぁ~~、卒業した後にそんなことする人なんていないよ」
「あまい!!そんなことを言ってるから、校長先生にまでバレるんだ」
お父さんに、強い口調で言われて黙るしかなくなってしまった。
「お義父さんの気持ちは分かります。でも、これは俺達の問題でもあるので、少し2人で話し合う時間をくれませんか?」
優馬さんに言われて、お父さんは少し考えていたけど、重い口を開いた。
「わかった、明日の夜まで待とう」
「えっ、そんなの時間なさすぎるーーー」
不満そうにしたけど、優馬さんに制止されて口を噤んだ。
「わかりました。明日の夜には、返事します」
優馬さんに言われて、お父さんはそれ以上、何も言わなかった。
「どうしよう………週末には帰れると思ったのに、それもなくなっちゃった………」
夕ご飯を食べた後、自分の部屋に戻ると、優馬さんが帰る前に2人で話し合う時間をつくった。
「陽向………、何とか2人で考えよう」
「でも………………」
不安そうに見つめるあたしを優しく抱き締めながら、優馬さんは子供をあやすように頭を撫でた。
「大丈夫、きっと良い案がみつかるから」
「うん……………」
優馬さんの服を握り締めると、躊躇いながら頷いた。
それから、いったん優馬さんは家に帰り、電話で話し合いながら良い案がないか考えた。
「ふぁ~~~」
あたしは、大きな欠伸をしながら、自分の靴箱へ手を伸ばした。
優馬さんも色々と提案したけど、これといった対策がみつからず、結局朝になってしまい卒業式に出る為に学校へ来たのだった。
「陽向!久しぶり」
奈留があたしを見かけるなり、駆け寄ってきた。
「おはよう、奈留」
「陽翔から訊いたよ、謹慎だったんだって?」
「う、うん………」
ドキッとさせながら、頷くあたしに奈留は小声で言う。
「で?どうして謹慎になったの?そういえば、優馬先生も謹慎って陽翔から訊いたんだけど」
辻君!そこまで言ったのーーー!?
「2人して謹慎なんて怪しい~~~」
「~~~~~…………」
そこまでは、まだ辻君に訊いてないらしい。
やっぱり、奈留には話したほうがいいかも知れない。
キュッと唇を噛み締めると、誰もいない場所へ奈留を促した。
「陽向、どうしたの?」
誰もいない資料室へ連れて行くと、キョトンとする奈留に優馬さんとのことを打ち明けた。
「えっ、優馬先生とけっ、結婚!?」
「しっ~~~~~!!」
突然、奈留が大きな声を出したので、慌てて奈留の口を抑える。
「廊下に誰かいたらヤバいからっ」
「ごめん、まさか優馬先生と結婚してるなんて思ってもみなかったから…………」
「あはは……………」
それもそうだ、こんなこと訊いたら誰だって驚くはずだ。
「まさか、陽翔も知ってるの?」
奈留に訊かれて、コクリと頷いた。
「なーんだ、あたしだけ知らなかったのか~~~」
「ごめん、何度も言おうとしたんだけど……………」
「あたしのほうこそごめん、知らずに陽翔とくっつけようとして……」
「ううん」
奈留は、ブンブン首を振るあたしの顔を興味津々に覗き込んできた。
「優馬先生って、キス以外も優しくリードしてくれそうだよね~~~、いいなぁーーー」
うっとりした顔をさせながら奈留に言われて、キス以上のことはしてないなんて言える雰囲気ではなかった。
「卒業生入場ーーー」
一度、教室に行った後、時間になり体育館で卒業式が始まった。
壁側に並べられた先生方の椅子の前に、スーツ姿の優馬さんをみつけドキドキと鼓動が高鳴る。
何か行事がないと、スーツなんて着ないから、カッコよくスーツを着こなした優馬さんにうっとりとしてしまう。
卒業式が終わってから、昨日の話の続きをしようと思っていたのに、優馬さんに近づくことができなかった。
「優馬先生ーー!!スーツのボタンあたしにちょうだい!!」
「ずる~~い!!貰うのはあたしなんだから」
卒業式を終えた、卒業生の女子達が優馬さんの周りに集まっていた。
普通、好きな男子から制服のボタン貰うんじゃないのーーー?
これじゃ、近づけやしない。
ガックリと肩を落としていると、辻君があたしに声をかけた。
「陽向、これ貰って」
そう言って、制服の第2ボタンを差し出した。
「えっ、あの……辻君。あたしと杉浦先生とのこと知ってるよね?」
「うん、それでも貰って欲しい」
辻君があたしの手を掴もうとした時、突然、誰かに肩を抱かれて思わず振り向いた。
そこには、さっきまで女子達に囲まれていたはずの優馬さんが焦りながら立っていた。
「悪いけど、辻のボタンは受け取れない」
優馬さんは、自分のスーツの第2ボタンを引きちぎって、あたしの手に握らせた。
「優……杉浦先生ーー」
嬉しさのあまり、キュンとする胸を抑えながら、ボタンを大事そうに握り締めた。
「チエッ、せっかくチャンスだったのに」
辻君がムッとさせていると、近くで見ていた優馬さんの取り巻きに、不満そうに睨まれているのを殺気で感じる。
「優馬先生、どうして西野さんにボタンあげるの!?」
取り巻きの独りが、不満を漏らす。
「悪い、西野の為にあるようなものだからついな」
優馬さんは営業スマイルで言ったものの、みんな納得できず文句を言い出した。
「そんなのおかしいよ!!もしかして、西野さんに気があるんじゃないの!?」
「もしかして、もう付き合ってたりして」
「えーー、そんなはずないよ。あたしは、西野さんは辻君と付き合ってるって訊いたよ!?」
「それ、訊いたことある!!ってことは、西野さんは辻君のボタン貰えばいいことじゃない!?」
みんなそれぞれ好き放題言っていると、優馬さんが焦りながら口を開いた。
「うちの奥さんは、俺のボタンしか受け取らないからーーー」
「せ、先生ーーー!!」
あたしは、慌てて優馬さんの袖を引っ張った。
「ヤバっ、いや、その……………」
慌てて誤魔化そうとしたものの、後の祭りだ。
「それって、どう言う意味!?」
みんな一斉に、優馬さんに視線を向けた。
「まさか、奥さんって西野さんのこと!?」
みんなに問い詰められ、優馬さんは堪忍したように、本当のことを打ち明けた。
「つ、辻君は知ってたの………!?」
事実を訊いた後、驚く様子もない辻君を見て、取り巻きの子の独りが口を開く。
辻君は黙って頷いてみせると、みんな一斉に驚きを隠せない。
「信じられない!!あたし達を騙してたってこと!?」
「あ……あの、みんな……落ち着いて…」
恐る恐る声をかけると、怖い視線が飛び交って、言葉を喉に詰まらせた。
「いいわよね~~、西野さんは!!今まで優馬先生にえこひいきされてたんでしょ?」
「先生はそんなことするような人じゃないよ」
「そりゃあ、あたし達だってそう思いたいけどーーねぇ?」
そう言ったものの、みんな顔を見合わせるなり、何か言いたそうにしている。
「言いたいことがあるなら、はっきり言えよ!!」
辻君がキッと睨みつけると、みんな渋々と口を開いた。
「学校中の先生とか生徒を騙して裏切ってたんだよ!」
みんながギャアギャア喚いていると、いつの間にか周りに野次馬が集まってているのに気づかないでいた。
「す、杉浦先生ーーっ」
いつの間にか、あたし達の周りに野次馬集まっていることに気づいて、思わず優馬さんの裾を引っ張った。
「何か、杉浦先生とあの子が結婚してたんだってっ!!」
野次馬の中の独りが口を開くと、次々とそれが伝わって、余計に事が大きくなってしまった。
ど、どうしようーーー!!
これじゃ、ますますお父さんを説得するの難しくなったかも…………。
「先生ーー、本当なんですか!?」
野次馬の中から、質問が飛んでくるのを今まで黙って訊いていた優馬さんは、あたしの肩をポンと叩くと口を開いた。
「この子と結婚している事は、事実です」
「え~~~~~~~!!!」
野次馬達に一斉にどよめきが起きる。
この状況どうするれば……………。
躊躇するあたしを、優馬さんは優しく肩を抱くと、
「だからと言って、独りだけ特別扱いをしたつもりもない」
取り巻きの子達に、ハッキリと応えた。
「そうだよねー、先生が特別扱いしてるとこなんて一度もしてないと思う!!」
「そうそう!!みんな平等に優しいし。あたしなんて、この前、先生が荷物運ぶの手伝ってくれたし」
「俺は、先生に勉強を教えてもらった!!」
野次馬で集まって来た子達が次々と口を開く。
「ーーーーーっ」
そんな状況の中で、取り巻きの子達は何も言えなくなっていた。
少し、騒ぎが収まってきた頃、
「何の騒ぎだね?」
騒ぎを嗅ぎ付けたのか、校長先生があたし達の前に現れた。
そして驚くことに、その後にお父さんとお母さんの姿があって、あたしと優馬さんは呆然とする。
「校長先生、訊いてください!!」
優馬さんの取り巻きの子が、事情を話すと校長先生は一度、間を置いてから口を開いた。
「杉浦先生がこの学校に赴任して来て、非常に生徒達の評判が良いです。他の生徒にも分け隔てなく指導してくれて、独りの生徒だけ特別扱いということは絶対にないことは、他の先生方も重々承知の上だと思いますよ」
「……………………っ」
校長先生の言葉に胸が熱くなる。
「今までのことも含め、こうして卒業できたことは2人が誠実に学校生活を送ったという証でもあるので、2人の事は暖かく見守ってあげましょう」
校長先生には悪いけど、学校で優馬さんとキスしたことは秘密にしとこう。
パチパチパチーーー!!
校長先生の言葉に、辻君が拍手をすると続けて周りの人達も拍手の嵐が巻き起こる。
「おめでとう!!」
何処からともなく祝福の声が飛び交う。
「みんな……………」
嬉しさのあまり涙ぐむあたしの頭を、優馬さんは優しくポンポンと撫でるのだった。
家に帰ったあたし達は、お父さんとお母さんと今後のことについて話し合いをしていた。
「お前達が学校で真面目に送っていたことは、今日のことでよーくわかった。あと、優馬君が生徒に慕われていることも」
お父さんは、腕組みをしながら深い溜息をつく。
「そうなんだよ~~!!いつも、優馬さんの周りに女子が集まってて全然近づけなかったことだってあるくらい…………」
「女の子にだけ慕われてたと言うか、モテてたと言うわけか…………」
「え、あ……えっと、女子だけじゃなくて、男子にも慕われてたし。ね?優馬さん」
口にした言葉に、少しまずいような気がして、慌てて優馬さんに目配せた。
「ん?まあ、そうだな………」
優馬さんは、苦笑いをする。
「そ、それより、今日どうして校長先生と一緒だったの?」
一旦、話を脱線させると、お父さんの方を振り向いた。
「母さんが、お前達のことでお礼を言いたいと言うものだから、校長先生の所に挨拶に行っていたんだ。そうしたら、お前達のことで何やら騒いでいると生徒が言いに来たから、慌てて校長先生と一緒に行ったと言う訳だ」
「…………………」
だから、校長先生と一緒だったのか。
「でも、まあ………しかし、あれだ、校長先生のお陰でみんな納得してくれたことだしな……」
「じゃ、じゃあ。優馬さんの所に帰ってもいい?」
期待の眼差しで、お父さんに訊いてみる。
「……………そうだな、陽向の要望はのむことしよう」
少し考えた後、渋々頷くお父さんにあたしは嬉しさのあまり、満面の笑みを零した。
「ありがとう、お父さん!!」
「ありがとうございます!!」
あたしも優馬さんも、お父さんに深く頭を下げた。
そして、翌日ーーー。
「優馬さん、今日からお世話になります」
優馬さんの所に帰ったあたしは、部屋に入るなり頭を下げた。
「何、言ってるんだよ。ここは陽向の家でもあるだから」
優馬さんは、優しく笑いかけてくれた。
「優馬さん……………」
「お帰り、陽向~~~!!」
優馬さんがあたしの肩を抱くと、優しく抱き締めてくれる。
「ただいまーーー!!」
笑顔で抱きつくと、優馬さんも抱き締め返してくれた。
「そうだ、日向にプレゼントがあるんだ」
あたしの頭を優しく撫でると、収納場所から小さな箱を取り出した。
「開けてごらん」
優馬さんに手渡しされ、そっと箱を開けてみると、きらびやかに光る指輪が2個並んでいた。
「ーーーー!!」
驚きのあまり、優馬さんの顔を見上げた。
優馬さんは箱から指輪を取り出すと、あたしの左手の薬指にはめた。
「陽向、改めてもう一度言うよ。陽向のことは一生大切にする。俺と結婚してくれないか?」
「はいーーー!!」
2度目のプロポーズに即答で応えるあたしを見て、優馬さんは笑顔で、もう1つの指輪を自分の指にはめると、指輪をつけたあたしの手を取り、真剣な瞳で見つめた。
「随分、遅くなっちゃったけど、これからは、結婚指輪を俺だと思って、いつもつけててほしい」
感動のあまり言葉にできず頷くことしかできないあたしを、優馬さんが優しく抱き締めてくれる。
「陽向、愛してる」
「あ、あたしもーー!!」
やっとの思いで、言葉に出すと笑顔を向けた視線の先に優馬さんの視線が絡み合い、どちらからでもなく引き寄せるようにキスをした。




