新婚中も目がはなせない
陽向と優馬は、学校では先生と生徒だけど、本当は秘密の夫婦。
クリスマス&結婚記念日には、2人でお祝いすることができて、お正月にはハプニングもあったけど、何とか無事に切り抜けることができた。
そして、いよいよ入試の日を迎えることに………。
お正月も終わり、いよいよ入試当日。
「陽向、忘れ物はない?受験票は………」
「大丈夫だよ、お母さん。ちゃんと持ったから」
出かける間際、玄関先でお母さんが心配そうに見送りをする。
「大丈夫だよ、持ったから。いってきまーす!!」
軽く交わして、さっさと家を出ると携帯電話が鳴り響いた。
画面を覗くと、優馬さんからだった。
慌てて電話に出ると、一番聞きたかった優馬さんの声が流れてきた。
「陽向、もう家を出発したか?」
「うん、今、出たところ」
「ごめんな、送ってあげられなくて」
「ううん、仕方ないよ。優馬さんは仕事があるんだし」
「陽向なら大丈夫だから、落ち着いて頑張ってこいよ」
「うん、優馬さんに貰った御守りもあるし、頑張ってくるね」
優馬さんに貰った御守りを制服のポケットに入れると、試験に臨むのだった。
「やっと、終わった~~~~」
何とか試験も終わり、家に帰って一息つくと、今まで緊張していた糸がプツリと切れたみたいに、ベッドに崩れた。
何とか、問題は埋めたけど、あとは結果が出るのを待つしかない。
その時、携帯電話の着信音が鳴り響いた。
画面を覗くと優馬からの電話とわかり、慌てて電話に出ると、心地いい優馬さんの声が耳に届く。
「陽向、もう家に帰ったか?」
「うん、さっき帰ってきたばかりだよ」
「試験どうだった?」
「結構、書けたけど……何とかやることはやったかな」
「頑張ったな!!」
「優馬さんに勉強を教えてもらったお陰だよ」
「陽向が頑張ったからだろ?あとは、結果を待つだけだな。もし、合格したら何が欲しいか決めといて」
「うん」
電話が切れた後、欲しい物を考える。
「急に言われてもな~~、何がいいかわからないよーー。でも、合格したらの話なんだし、それから考えよう」
合格発表の後には、バレンタインがあることもすっかり忘れて、呑気なこと考えていた。
「陽向、速達きてるわよ」
いよいよ、合格発表発表の日。
お母さんから封筒を受け取って、自分の部屋へ行くと緊張した手でハサミを持つと深呼吸してから、封筒を開けると目に入ってきたのは『合格』の文字が…………。
「や……やったぁーーー!!」
嬉しさのあまり、手に力が籠ってギュッと合格通知を握り締めた。
「おっと、いけないいけない!!」
少しクシャクシャになった合格通知を慌てて広げる。
お母さんに報告したら、優馬さんにも報告しないと!!
早速、お母さんに合格したことを伝えに行く。
「よかったじゃない~~!!早速、優馬さんも呼んでお祝いのご馳走作らなきゃ!!その前に買い物に行ってこないと」
ウキウキしながら、お母さんは買い物に出かけて行った。
早速、優馬さんに電話をかけて、合格の報告した。
「おめでとう!!頑張ってたもんな」
電話の向こうで、優馬さんの嬉しそうな声が耳に届く。
「ありがとう!!」
「何かお祝いしないとな」
「お母さんが、ご馳走作るから、優馬さんも一緒にって」
「わかった。じゃあ、お邪魔しようかな。でも、2人でもお祝いしたいから、後でな?」
「うん」
電話を切った後、今頃になって合格して安心したのか力が抜けて、その場に座り込むのだった。
「合格おめでとうーー!!」
お料理が出来てあがった頃、家に到着した優馬さんをお母さんは急かせながら上がってもらい、少し仕事で帰りが遅くなるお父さんを待たずに、先にお祝いしてくれることになった。
「本当に合格して良かったわ。これも、優馬さんのおかげよ~~~!!」
お母さんは、嬉しそうに食卓に料理を並び終えると、椅子に座った。
「俺は何も……。本人の頑張った結果だと思います」
「そう言ってもらえると、嬉しいわ。お父さんもそろそろ、陽向を優馬さんの所に帰るように言うかもしれないわね」
「ははは……、そうだといいんですけど」
優馬さんとお母さんのやり取りを聞いていると、何だかホッと和んだ空気になる。
しばらく、3人で食卓を囲んで料理を楽しんでいると、お父さんが帰ってきた。
「お邪魔してます」
お父さんの姿を見るなり、優馬さんは緊張した表情で挨拶をした。
「ああ……優馬君、来てたのか」
優馬さんがいることに、別に驚きもせずお父さんは会話を交わした。
「陽向の合格のお祝いに、ご馳走を作ったから来てもらったのよ~~~」
お母さんに言われ、お父さんの頬が緩む。
「そうだったなーー。陽向、合格おめでとう!!良かったな」
「う、うん。ありがとう」
無事に合格もしたことだし、このまま優馬さんの所に戻ってもいいか訊いてもいいよね?
「お、お父さん、合格もしたし優馬さんの所に戻ってもいい?」
勇気を出して言ってみたものの、お父さんは急に眉をひそめる。
「卒業してからでも、遅くないんじゃないのか?」
「で、でも……食事とか作ってあげたいし」
「陽向、よく考えなさい。前にも言ったと思うが、一部の人にはバレているんだぞ?また、いつ誰に見られるかわからないじゃないか」
お父さんに睨まれ、シュンとなりかけたところで、優馬さんが口を挟んだ。
「週末だけ帰ってくることだけでも許してもらえませんか?学校のほとんどの人は、引っ越した家の住所は知らないので、大丈夫だと思います」
「ね、優馬さんもこう言ってるんだしいいでしょ?」
あたしは、優馬さんの言葉につい嬉しくてキュンとしてしまう気持ちを抑えながら、もう一度お父さんに頼んでみた。
お父さんは、しばらく考え込んでいたけど、観念したように渋々、首を縦に振った。
「…………わかった。週末だけだからな?もし、お前たちの関係がまたバレるようなことがあったら、今度は離れて暮らすだけじゃすまないからな」
「ありがとう、お父さん!!」
あまりの嬉しさに、椅子から立ち上がる。
「お義父さん、許可を出してくれて有難うございます」
優馬さんもホッとした顔で、お父さんにお礼を言った。
お父さんの許可をもらい、週末だけ戻れることになることで、後で大変な事が起こるなんて、この時はまだ知るよしもなかった。
「陽向、おめでとう~~!!」
翌日、学校に行くと早速、奈留に合格したことを報告すると、凄く喜んでくれた。
「良かったな、陽向!!」
奈留の隣にいた辻君も、どさくさに紛れてあたしの手を握る。
「ちょっ、ちょっと。どうして辻君がいるのよ!?」
あたしは、驚いて辻君の手を払い除けた。
「やだなぁ~!!陽向、忘れたの?陽翔はあたしの幼なじみだよ?隣に住んでるんだし朝、一緒に登校することもあるよ~~~~」
ケラケラ笑いながら、奈留は言う。
「ごめん、そうだよね……」
確かにそう言われれば、そうかも知れない。
「じゃあ、俺達全員、合格だな!!」
辻君の言葉に、あたたしはパッと顔を明るくさせる。
「………って言うことは、2人とも合格したんだね!?」
「うん!!」
「おめでとう~~!!」
あたしが喜んでいると、急に奈留に腕を引っ張られた。
「ところで、話は違うけど、もう用意したの?」
「えっ、何を………?」
奈留の言っている意味が解らず聞き返す。
「明日、バレンタインじゃない。まさか、まだチョコ用意してないの!?」
「ーーーーー!!」
すっかり、忘れてた!!
今からじゃ、手作りチョコを作るの間に合わないかも………。
「優馬先生にあげる子、結構いるみたいだよ。頑張ってね、陽向」
「う、うん…………」
返事はしたものの、今から間に合うか心配だ。
「とりあえず、これで作りますか」
お母さんがキッチンを使わなくなった夜10時を過ぎた頃、学校の帰り道に買ってきたチョコの材料を、キッチンに広げ準備に取りかかることにした。
朝はお母さんがキッチンを使っているから作れないし、夕食を食べて後片付けをした後にしか作れないので、こんな時間になっちゃったけど、準備に取りかかった。
結婚する前も、バレンタインチョコは手づくで優馬さんにあげていたけど、お菓子作りの苦手なあたしにとって、チョコが固まらなかったり固かったりで美味くできないこともあったけど、いつも美味しいって食べてくれた。
「今年は、上手くできればいいな」
とりあえず、簡単に出来そうなチョコクランチを作ることにした。
まずは、袋にコーンフレークを入れて潰して、それから今回は湯せんで溶かしていたチョコをレンジに代えて溶かすことにした。
チョコが溶けたらフレークと混ぜて丸めて冷蔵庫で冷やす!!
繰り返しの作業を何分かやっているうちに、あっという間に出来上がった。
「上手に出来たかな?………」
ひとくち味見をすると、口の中に丁度いい甘さとサクサク感が広がった。
美味しくできた~~~!!
後は、友チョコは時間の都合上、市販ので我慢してもらうことに。
翌日、手作りチョコを持ってドキドキしながら学校へ行くと、英語準備室の前には人集りができていた。
「優馬先生~~、チョコ作ってきたの食べて!!」
「あたしのも!!」
優馬さんの周りに女子が手作りチョコを持って、自分のを食べてもらうのに受け取ってもらおうとしているのが視線に入ってきた。
これじゃ、渡せそうにない………。
「仕方がないな………。先に奈留に友チョコをあげてこよう」
優馬さんが独りでいる時にあげたいし、何とか渡せるチャンスがあればいいけど。
仕方なく、奈留の教室へ向かった。
「奈留、はい!!友チョコ」
教室へ行くと、奈留にチョコを渡す。
「ありがとう~~、あたしからも友チョコ!!」
奈留から渡されたチョコは手作りだったので、申し訳なさそうに奈留に視線を向ける。
「ごめん、手作りチョコじゃなくて………」
「何、言ってるの?本命には作ってきたんでしょ?」
「う、うん…………」
「あたしのことは気にしなくていいから」
「奈留……………」
「それより、先生には渡せたの?」
「それが、まだ……………」
さっきのことを奈留に話すと、奈留は溜め息をつく。
「はぁ~、それは大変だわ~~。もしかしたら、今日一日渡せないかも知れないかもね」
「えっ、まさかーーー」
あたしは半信半疑で自分の教室へ戻った。
「陽向、おはようーーー」
自分の席に座ろうとした時、後ろの席の辻君に挨拶された。
「辻君、おはよう~~」
辻君にも市販で買った義理チョコを持ってきたことを思い出して、早速渡す。
「俺に?」
辻君は驚いた顔であたしを見た。
「うん、義理チョコだけど」
「本当は本命チョコのほうがよかったけど、義理チョコでも嬉しい。サンキューー!!」
「あははは……、ごめんねーー本命じゃなくて」
「で?その本命チョコは渡せたのか?」
真顔で訊かれて、小さく首を振ると辻君も奈留と同じことを口にする。
「今日、一日渡すのに苦労しそうだな」
「……………………」
ううう……………、やっぱりそうなのかな??
奈留と辻君が言う通り、優馬さんにチョコを渡そうとしたけど、いつも女子がいて結局は放課後になってしまった。
「放課後なら、大丈夫かな~~~~」
急いで英語準備室に行くと、運良く優馬さんが出てきた。
今なら、誰もいない!!
優馬さんの元へ駆けていこうとした時、
「優馬先生ーー!!」
2年生女子が数人あたしを突き飛ばし、その弾みでよろめいて尻もちをついてしまったあたしを無視して、優馬さんの所へ駆け寄って行った。
「優馬先生、チョコ受け取って!!」
優馬さんにチョコを渡そうとした時、優馬さんは慌ててあたしの方へやって来た。
「陽…西野、大丈夫か?」
優馬さんは優しい眼差しで、手を差し伸べた。
優馬さんの手に掴まり、立ち上がる。
「う、うん…………」
小さく頷くと、優馬さんは厳しい表情で、彼女達の方へ視線を向けた。
「お前達、人を突き飛ばしておいて謝りもしないのか?」
優馬さんに睨みつけられ、いつもと違う雰囲気に、たじろいていたけど、
「突き飛ばして、ごめんさい…………」
シュンと肩を落としながら、彼女達はあたしの方を見ては謝った。
「怪我しなかったし、大丈夫だら」
あたしが一言、言ってあげるとホッとした様子だ。
「よし、よくできました!!今度から気をつけるように」
優馬さんは笑顔で、子供をあやすように彼女達の頭をポンポンした。
あたしだって、なかなか優馬さんに頭、ポンポンしてくれないのに…………。
少し、ムッとさせた顔でをさせた。
「優馬先生!!」
頭を撫でられて、彼女達はパアッと笑顔にさせた。
「先生のこと怒らせちゃったお詫びに、チョコ受け取って!!」
無理矢理、優馬さんに押し付けると、彼女達は嵐のように去っていった。
「参ったなーーー」
チョコを腕に抱えながら、溜め息をつく優馬さんにあたしは、ムスッとしながら口を開いた。
「良かったね、いっぱいチョコを貰って!!」
「ん?何か怒ってる?」
「別に……怒ってないけど」
「……………………」
いきなり、優馬さんに腕を掴まれ英語準備室に連れてこられた。
「マ、マズイよ、誰かに見られたら……」
急な出来事に、あたしは慌てふためいていると、優馬さんが顔を覗き込む。
「廊下には、誰もいなかったから大丈夫だから。それで?本当はどうして怒ってるのかな?」
「ほ、本当に怒ってないってば!!」
ヤキモチ妬いていたなんて知られたくなくて、優馬さんから顔を背けた。
「本当は、俺がチョコを貰ってたから、ヤキモチ妬いていたんだろーーー?」
そんなあたしの髪に触れると、頬を寄せ耳元で囁く。
「ーーーー!!」
本当のことを言われて、ドキッとしてしまい仕方なく小さく頷いてみせた。
「バカだなーー、そんなことでヤキモチ妬いて」
優馬さんは自分のおでこを、コツンとあたしのおでこにくっつけた。
「だ………だって……本当はあたしが一番先にチョコを渡したかったのに…………」
「陽向、ごめん。でも貰ったチョコは他の先生方に分けたから、手元にはほとんど残ってないんだ。今、貰ったチョコもあげるつもりだから」
「………………」
「だから、陽向のチョコを貰おうかな?」
「優馬さん……………」
あたしは鞄の中から、手作りチョコを出すと優馬さんに渡した。
「サンキューーー。食べてもいいか?」
「うん」
あたしが頷くと、優馬さんはチョコフランチを口の中に頬張る。
何も言わずに、2、3個食べている優馬さんが気になって声をかけた。
「味の方はどうかな?」
「ごめん、つい美味しくて感想言うの忘れてた」
「よかった~~!!味見はしてきたけど、時間が経ったら食感が変わってるんじゃないかと思って心配だったんだーーー」
「じゃあ、陽向も味見してみる?」
「え?」
優馬さんにクイッと顎を持ち上げられ、キスをされたかと思うと口の中いっぱいにチョコのサクサク感と甘さが広がった。
「ーーーー!!」
「美味しいだろ?」
「う……うん」
恥ずかしそうに頷くと、もう一度、優馬さんに顔を覗き込まれる。
「陽向、口の端にチョコついてる」
「えっ、何処?」
慌てて指先で拭ったけど、優馬さんは笑いながらあたしの頬に手を添えると、指先で拭いペロッと舐めた。
「ーーーー!!」
そんな仕草に、優馬さんが凄く色っぽく感じて心臓がバクバクと音をたてる。
「よし、とれた」
「あ、ありがとう………」
「どうした?顔が赤いぞ」
「な、何でもない……………」
さすがに、優馬さんに見とれてたなんて恥ずかしくて言えない。
「そうか?具合い悪い時は言えよ。看病に行くから」
「あ、ありがとう。あたし、そろそろ帰るね」
「送ってきたいけど、まだ仕事が残ってるし、気をつけて帰れよ」
「う、うん。優馬さんも帰り気をつけてね」
まだ、落ち着かない心臓の鼓動を抑えながら、急いで帰るのだった。




