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新婚中も目がはなせない  作者: 夢遥
2/24

新婚中も目がはなせない

陽向と陽翔と奈留は、同じ実行委員になり、体育祭の準備で忙しい日々が続き、優馬とゆっくり話せない日もあって、落ち込む陽向だったけ

ど…………。


「番号引いた人から、席を移動するように」


新しいクラスに、やっと慣れた頃、突然先生が席替えをすると言い出した。


今までの席が良かった人嫌だった人も、みんな席の移動を始める。


えーと、6番だから……窓際の一番後から2番目。


一番後ろじゃなかったものの、窓際だったことに、ラッキーと思いながら席を移動すると、後の席に辻君が移動してきた。


「ラッキー!前、西野さんだ」


委員会が一緒になってから、あれ以来結構、話すようになった。


チャラそうな感じは見ためだけで、委員会で意見はきちんと言うし、仕事もきちんとこなす人だとわかって、少しは見直したところもある。




「実行委員ー、放課後、少し競技の練習するから、みんなに伝えておいてくれないか?」


体育祭まで、あと少し。帰りのホームルームが始まる前に、先生があたしと辻君に言う。


先生はクラス対抗で優勝を狙っているらしく、熱意がこもっていた。


急に言っても、残ってくれる人いるのかなー?


早速、ホームルームが始まる前に伝えると、案外、みんな放課後に残ることを賛成してくれた。



あたしは、綱引きと障害物競走に出場することになっているけど、実行委員の仕事もあるから当日は忙しくなりそう。



早速、放課後になるとみんな自分が出る競技にそれぞれ散らばって練習を始めて夕方まで続いた。



「はぁー、疲れた」


練習が終わると、あたしは急いで帰る支度を始めた。


今日は優馬さんも、仕事で遅くなるって言ってたし、そんなに慌てることもないけど、早く帰って美味しい物でも作ってあげよう。


急ぎ足で昇降口まで行くと、辻君が急いで追いかけてきた。


「西野さん!一緒に帰ろう」


「え?あ、うん………途中までなら」


「ラッキー!」


辻君は嬉しそうに、パチンと指を鳴らした。



あたしの周りに男友達があまりいなかったし、こういうのもなんだか新鮮。



2人で並んで、昇降口を出るところを通りがかった優馬さんに見られていたなんて知らずに、呑気にそんなことを考えていた。




体育祭が明日に迫って、実行委員の仕事はますます忙しくなってきていた。


「はぁーー」


放課後、今日も残って明日の体育祭の準備をして、やっと帰れるようになり、奈留と辻君と一緒の帰り際、あたしの口から、溜息が漏れていた。



ここのところ、体育祭の準備に追われて、まともに優馬さんと話すらできていない。


優馬さんも朝は早いし、新しく来た先生の歓迎会とかで、帰りも遅い日があってなかなか思うように行かないでいた。



とりあえず、メールで遅くなることを伝えてある。


実行委員の仕事も明日で終わるし、また優馬さんとの時間が作れるよね?きっと………。



「陽向ー、大丈夫?」


溜息をついたあたしを心配しながら、奈留が顔を覗き込んできた。


「え?あ、うん……」


元気なく返事するあたしに、


「あ、そうだ!陽向が、元気になるように美味しい物でも食べて行こう」


元気づけさせようと、奈留は提案した。


「賛成ー!俺、腹減った」


辻君が奈留の意見に賛成する。


とりあえず、2人に連れられてファミレスに

よることになった。



店に入ると、奈留はあたしの隣に座るとメニューを見ているフリをしながら、内緒話をしてきた。


「ねえ……、陽向。陽翔のことどう思う?」


「……………どうって………まぁ、最初はチャラそうだし苦手かなと思ったけど………、辻君と委員会の仕事をしてわかったんだけど、意外といい人だよね………」


「まあ、ああ見えて陽翔は一生懸命なところがあるからね~、彼女ができたらきっと大切にすると思うんだ」


「辻君、彼女いないんだ?」


それは、意外だ。モテそうなのに……。


「それで、陽向、彼氏いないでしょ?だから、陽翔なんてどうかな?」


「えっ………!」


あたしは思わず大きな声を出してしまい、辻君がメニューから顔を上げた。


「何、さっきからこそこそしてるんだよ?お前ら、注文決まったのか?」


「あ……うん、ミートソースパスタにするわー」


苦笑いしながら、奈留はパスタのメニューのページを開く。


「あ、あたしも同じのにするから……」


それから、慌てて注文した。




食事が終わると、奈留はあたしと辻君を2人っきりにさせたいのか、


「じゃあ、あたしは用事があるから先に帰るね!」


さっさと先に帰ってしまった。



困る…………。やっぱり、優馬さんとのこと早く言っておけばよかったー。



「じゃ、じゃあ、あたしも帰るね…………」



さっき、奈留が言っていたことに動揺してしまう自分がいて、慌てて帰ろうとした。


「女の子独りじゃ危ないし、送ってくよ」


そんなあたしに、辻君が優しい言葉をくれる。


「え、奈留だって独りで帰ってるんだし、大丈夫だから………」


「あいつは、昔から男勝りのところがあるからなー」


「…………………………」


確かに時々、先生に重い資料を頼まれて運んでいる時に、奈留は軽々持って手伝ってくれたことがある。


それを思い出すと、なんだか笑ってしまった。


「あーよかった!西野さんが、笑ってくれて。さっきから、なんだか眉間にしわを寄せてたから」


「えっ!」


あたしは、慌てて眉間に手を当てる。


「あははーーー!!今は大丈夫だって」


可笑しそうに笑う辻君は、悪戯っ子のようで何だか憎めない。



辻君って奈留の幼馴染みだからか、段々馴染んできて親しみやすくなった感じがする。




結局、成り行きで辻君に送ってもらうことになった。



家に帰ると、優馬さんがビールを飲みながらテレビを観てソファーでくつろいでいた。


「陽向、お帰り」


優馬さんはあたしに気がつくと、笑顔で出迎えてくれた。


「優馬さん、ご飯食べてきちゃって、ごめんね」


珍しく早く帰ってきていた優馬さんに、申し訳なさそうに謝る。



「友達付き合いも大切にしないとな。でも、あまり遅くなるのも心配だけどな」


優馬さんはあたしのおでこに、こつんと自分のおでこをくっつけた。


ドキンと心臓が高鳴る。


結婚しても、ドキドキ感は変わらない。


「あ、でも、大丈夫。奈留は先に帰っちゃったんだけど、辻君が家の近くまで送ってくれたから……………」


「辻と一緒に帰って来たのか……………?」


優馬さんの眉がぴくりと動く。


「うん……」


「そういえば、この前も一緒に帰ってなかったか?」


「体育祭の練習で遅くなったから、送ってもらって…………………えっ、どうして知ってるの?」


あの時は、優馬さんとなかなか話す機会がなくて言えなかったのに………。


「陽向に隙がありすぎるんじゃないのか?辻だって、男なんだぞ」


「やだな〜、辻君は先に、男友達みたいなものだよ。それに奈留の幼馴染みだから、奈留には辻君がどういう人か訊いてるし…………」


あたしは、苦笑いしながら優馬さんに言ったけど、


「陽向がそう思ってても、辻はわからないだろ」


優馬さんは瞳の奥を探るように、鋭い眼差しであたしを見つめた。


いつもと違う優馬さんに、心臓がドキンドキンと高鳴り始める。


あたしが思わず目を逸らした時、突然手首を掴まれて、ソファーに押し倒されてしまった。


「ーーーー!!」


あたしは、無我夢中で逃げようとしたけど、優馬さんに掴まれた手はびくともしない。


「………っ……」


「わかっただろ?陽向に隙がありすぎるって」


溜息をつくと、優馬さんは身体を起こす。


「………………」


「とにかく、辻とは逢ったりするなよ」


優馬さんはそれだけ言うと、あたしと視線を合わせずにリビングから出て行ってしまった。



あんな優馬さん………始めて…………。


優馬さんに掴まれた腕が、じんじんと熱を帯びていた。




その頃、リビングから出て行った優馬は、廊下でしゃがみ込んでいた…………。


「はぁーー、俺って余裕なさすぎ…………」


溜息をつきながら、こんなに嫉妬深かったのかと自分でも驚いてしまう。


陽向にはああ言ったけど、辻とは同じクラス、それに委員会も一緒だし、逢うなと言われても無理なのはわかっている。


顔を手を覆うともう一度、溜息を漏らすした。






いよいよ、体育祭を当日に控え、早く家を出るのにいつもより早く起きて朝食の準備をした。


朝食の準備ができた頃、優馬さんが部屋から出てきた。


「お、おはよう、優馬さん。朝ごはんできてるよ」


昨日のこともあってか、何だか顔を合わせずらいけど、笑顔で挨拶した。


「おはよう…………いただきます」


挨拶はしてくれたけど、いつもより口数が少ない。


優馬さんはあたしと視線を合わさずに食卓でご飯を食べ始めてしまった。


あたしも慌てて、ご飯を食べ始める。


「あ、あの……優馬さん……あたし、体育祭の準備があるから、先に出るね」


「…………………わかった」


「…………………………」


それ以上、何も言ってくれない優馬さんに、あたしは何だか居た堪れなくなって、ご飯を食べ終わると、先に学校へ向かった。



どうしよう………優馬さん、怒ってる?


学校に着いてからも、落ち着かない気持ちのまま委員会の仕事に追われていた。



次は、あたしが出る障害物競走。


急いで、準備して校庭に並ぶ。


そして、いよいよ合図と共にみんな走りだした。



何個か障害物をクリアーして、最後のネットを潜る所になると、なかなかすんなりと行けず、

応援席から、みんなの声が聞こえる中、引っ掛かってばかりで思うように進めない。


他の人には抜かされ焦るばかり。


「陽向ー!頑張れ」


「ーーーー!?」


でもそんな中、みんなの応援の声に混じって、優馬さんの声が聞こえたような気がした。



あたしは、その声に力が湧いてくる。


落ち着いて、焦らずネットを抜けると全速力でゴールに向かって走り出した。



「陽向、すごいよ!3人抜きなんて」


障害物競走が終わると、クラスの違う奈留だけど、2着でゴールしたあたしを喜んでくれた。


「あはは……………」


あたしはただ苦笑いしながら、職員席の方へ目をやると、優馬さんの姿を捜す。


でも、そこには優馬さんの姿はなかった。


優馬さん、いない…………。さっきの声は空耳だったのかな?


朝、ほとんど目も合わせてくれなかったし、応援してくれるなんて、難しいかも知れない……。



ガックリと肩を落としたあたしに、奈留が耳元で言う。


「どうしたの?陽向、何か変だよ?」


「あ、うん。ちょっと、疲れただけ」


あたしは苦笑いすると、次の競技のアナウンスが入った。


『借物競走に出場する人は…………』


「あ、次、陽翔が出るんじゃなかった?ほら、陽向、応援しなきゃ!」


「う、うん………」


辻君の名前を出されると、戸惑ってしまうけど

同じクラスだし、応援しないとクラスのみんなにも悪い。



小さな溜息をつくと、応援席へ行くことにした。



そして、すぐに競技が始まった。


少し走って行くと、地面に置いてある紙を拾い、それぞれ書いてあるお題をクリアーする為に、赤い物やメガネをかけている人など書いてあるらしく、みんな応援席まで来て、お題に一致した物を借りたり、一緒に走り出す人もいたりと、出ない人も大慌てだ。


そんな中、辻君があたしに向かって慌てて駆けて来た。


「西野さん!一緒に来て」


「え……………」


急に言われて、オロオロしているあたしの手を掴むと辻君は走り出した。


「ちょ、ちょっと辻君ーーー!!!」


あたしは、困った顔で辻君の背後に向かって叫ぶ。


「急にごめん!このまま、ゴールまで走って」


辻君は、慌てた声でゴールに向かって走る。


辻君に引っ張られるように、仕方なく走って行くことにした。


「………………………」


いったい、辻君の紙にはなんて書いてあったんだろう?




そして、辻君とあたしは1位でゴールすることになる。


「1位は3年生の辻陽翔先輩。お題はなんて書いてありましたか~~?」


放送部の2年生の子が、辻君にマイクを向けた。


「紙はなくしたけど、青いゴムを縛ってる子」


あたしが縛っていた青いゴムに視線を映しながら、曖昧に応える辻君に、とっさに応えたような気がして不信感を覚える。





インタビューが終わってからも、なんて書いてあったのか気になりながら、委員会の仕事に戻ろうとすると、辻君に無理矢理、手を引かれて誰もいない校舎の建物の陰に連れてこられた。




「辻君、あたし仕事があるんだけど……」


辻君だって、仕事があるはずなのに、さっきから背中を向けたまま、こっちを見ようとしない


「辻……君………………?」


恐る恐る声をかけると、やっと辻君は口を開く。


「さっき、紙はなくしたって言ったけど、本当は持ってるんだ」


辻君は体育着のポケットから1枚の紙を取り出し、こっちを振り向くとあたしの前に見せた。


そこには、『好きな人』と書かれていて、あたしは驚きのあまり、呆然と立ち尽くしてしまった。


「ごめん、急に……」


「……………………………」


「実は言うと、入学した時からずっと西野さんのこと好きだったんだ。このことは、奈留しか知らないけど」


「ーーー!!」


だから、奈留はあたしと辻君をくっつけさせようとしてしてたのか…………。


でも、入学した時からなんて全然、気がつかなかった。

もっとも、その頃から優馬さんのことが好きだったし、塾で逢えるのが楽しみで、早く塾の日にならないか待ち遠しくて、そればかり考えていたから、気づかないのも無理はない。



「西野さん、俺と付き合ってくれないか?」


辻君が真剣な眼差しで、あたしの肩を掴むと瞳を覗き込む。


「ご、ごめん………あたし、辻君とは………」


きっぱりと断ろうとした時だった。


「この子は、俺のだから」


優馬さんが慌てた様子で、あたしと辻君の間に入ってくると、あたしの腕を掴み抱き寄せた。


「ーーーーー!!」


あたしと優馬さんの関係は、誰にも秘密なのに優馬さんからバラスなんて、どうしたらいいの!?


突然の衝撃に、静かに息を呑むことしかできなかった。




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