新婚中も目がはなせない
陽向と優馬は教師と生徒だけど、2人は秘密の結婚をしていて新婚ホヤホヤ。
でも、優馬の元婚約者の葵に振り回され、学校では葵の一言で優馬と結婚すると噂を広がり、陽向はハラハラするばかり。
また、優馬の気持ちが葵に向くんじゃないかと思い、不安になり繋ぎ止めようと手作り弁当を差し入れしようと持っていったけど、葵もお弁当を優馬に差し入れしてきて…………!?
灯野先生のお弁当を受け取るか、少し戸惑っていた優馬さんだったけど、仕方ないと言った顔で溜息をついた。
「わかった、お弁当を食べるから」
「本当?良かった~~!!」
ぱぁーと目を輝かせると、作ってきたお弁当を広げた。
「後で食べるから、そのままでいいよ。その前に、約束通りお弁当を返してくれないかな?」
「まだ、ダメよーー。ちゃんと食べたの確認したらね。はい!優君の好きな味付けにしてあるから」
「………………………っ」
卵焼きをお箸で挟むと、灯野先生は優馬さんの口元に持っていった。
「ーーーーーー!!」
灯野先生に食べさせてもらうなんて、そんなの見たくない…………。
辛くなって、2人から視線を逸らした。
「じ、自分で食べられるからーーーー」
優馬さんは、慌てて拒否したけど、
「何、恥ずかしがってるのよ!こんなこと、前は当たり前だったじゃない」
嫌々ながらも、優馬さんは出されたおかずを口にした。
「もう、一口だけでいいだろ?あとは、自分で食べるから」
「もぅー、仕方ないわね………」
灯野先生は、小さく溜息をつく。
「あ、ほら、さっさと食べて授業の準備をしないといけないから」
灯野先生の背中を押しながら、ドアの外に追いやった。
「仕方ないわね……」
後ろ髪を引かれる思いで、灯野先生は出て行った。
あたしは、安心して一息ついたのも束の間、
「陽向、出てきていいぞ」
優馬さんの掛け声に、ドキッと心臓が跳ね返る。
恐る恐る、机の下から顔を出すと、優馬さんが小さな溜息をつきながら目の前に立っていた。
「どうして……いるって、わかったの?」
「そりゃあ、わかるさ。少し見えてたし」
「ーーーー!!」
上手く隠れていたつもりが、バレていたなんて!!
まさか、灯野先生にもバレてたんじゃ!?
「隠すように、机の前に立ってたから、灯野先生にはバレていないと思うけど」
それを訊いて、ホッと胸を撫で下ろした。
「もし、他の先生が入ってきたらどうするつもりだったんだ?」
「ごめんなさい………………」
呆れた顔で優馬さんに言われて、後から気がつき気まずそうにするあたしの頭を、優馬さんはポンと優しく撫でた。
「弁当、サンキュー」
優馬さんは気遣うように、顔を覗き込む。
「………で、でも、灯野先生に………」
お弁当を一口食べられたことに落ち込んでいると、優馬さんはあたしの作ったお弁当のハンバーグを口に運んだ。
「久々の陽向のハンバーグ、美味いな」
「よ、よかった………」
あたしも灯野先生みたいに、優馬さんに食べさせてあげたい。
じゃないと、気持ちが落ち込むばかりだ。
「あ、あの……優馬さん。あたしも食べさせてあげる………」
思っていることを口にしたものの、恥ずかしくて顔から火が出そうになる。
「じゃあ、食べさせてもらおうかな?」
なんの迷いもなく、優馬さんはお弁当をあたしに渡すと、あーんと口を開けた。
「ーーー~~~」
誰も見ていないのに、恥ずかしさがまして、手が震えてしまう。
顔を真っ赤にさせながら、残っていた卵焼きを優馬さんの口の中へ運んだ。
「じゃあ、俺からも………」
食べ終わると、持っていたお箸をあたしから奪いとって卵焼きを挟んだ。
「えっ、あたしはいいよ。優馬さん食べて」
てっきり、食べさせてもらうのとばかり思っていたのに、優馬さんは自分の口に卵焼きを運んだ。
な、なんだ~~、てっきり優馬さんに食べさせてもらうのかと思っちゃった。
あたしの聞き間違いか………恥ずかしい~~~!!
独りでドキマギしていると、優馬さんの顔が急に近づいて、口移しされて卵焼きがあたしの口の中へ。
「ーーーーーー!!」
優馬さんの大胆な行動に、顔から火が出そうになる。
「自分の作った卵焼きの味はどうだ?」
「~~~~~~~」
そんなこと訊かれても、味なんてわからないよーーー。
心臓の鼓動が一気に速くなって、優馬さんに聞こえないかハラハラ。
優馬さんと灯野先生のお弁当のやりとりに、嫉妬していたことなんて、すっかり忘れてしまっていた。
「西野さん、ちょっといいかしら?」
放課後、帰り際に廊下で灯野先生に声をかけられて、恐る恐る灯野先生について行った。
誰もいない踊り場までくると、灯野先生は足を止めた。
「単刀直入に言うわね。わかってるとは思うけど、もう杉浦先生には関わらないでほしいの」
「で、でも…………………」
「今日、杉浦先生にお弁当差し入れしたわよね?」
「ーーーーーー!!」
あたしが作ったお弁当だって、気づいていたんだ!!
サーーーと血の気が引いた思いがして、鼓動が速くなる。
「こんなことバレたら、杉浦先生学校にいられなくなるわよ」
「っーーーーーー」
灯野先生の言葉に、そっと唇を噛み締める。
「前にも言ったと思うけど、もうこれ以上、杉浦先生に近づかないでほしいの。西野さんには辻君みたいな人がお似合いだと思うわよ」
「つ、辻君はただのクラスメイトなだけで………………」
「そんなこと言ったらダメよ。あなたのこと凄く想ってるじゃない。もう一度、よく彼のこと観察したら考えが変わるんじゃないかしら?」
「そんなこと有り得ません…………」
「どうして?あんなにあなたのこと想ってくれる人いないんじゃないかしら?」
灯野先生からしたら、婚約者だった優馬さんと寄りを戻したいから、こんなこと言ってるんだろうけど、もう優馬さんはあたしの旦那様なんだから!!って、打ち明けたい。
でも、そこをぐっと堪えて、なんとか気持ちを落ち着かせた。
「そうだわ。また、ダブルデートしましょう!杉浦先生と辻君にもあたしから話しておくから。そうすれば、彼のことを観察する機会が増えるし」
灯野先生は、楽しそうに話を進ませる。
「え………でも、いくらそんなこと言われても、辻君のことはそんなふうに見れないです。それに、受験勉強もあるし…………」
「まあまあ、そう言わずに!受験生にも息抜きも必要よ。場所は何処にするか、こっちで決めるから任せてね」
「えっ、困ります!!」
慌てて言ったけど、そんなことはお構いなしに、灯野先生はさっさと行ってしまった。
やっぱり、結婚してる事を灯野先生に打ち明けた方がいいのかも…………。
でも、優馬さんに相談しようと決意したものの、話す機会もなくダブルデートの日がきてしまった。
「西野さん辻君は、ピーマンと玉ねぎを切ってきてくれる?」
灯野先生から、カゴに入ったピーマンと玉ねぎを渡された。
どうして、ピーマンと玉ねぎを切ることになったかと言うと、もうすっかり紅葉も実って秋が深まる季節ということもあり、灯野先生の提案で紅葉も兼ねてダブルデートはバーベキューをしよう!と言うことになった。
「あたし、玉ねぎ切るから辻君は、ピーマンを切るのお願いしてもいいかな?」
「OK~~!!」
辻君は、手慣れた手つきでピーマンを切り始めた。
「辻君、上手!!」
あたしは、思わずテンションが上がった。
「ただ切るだけだし、誰でもできると思うけど」
照れくさそうにしながら、ピーマンを切る辻君の意外な一面に可愛いと思いながら、皮を剥いた玉ねぎを切っていると、灯野先生の悲鳴が聞こえてきた。
「熱っーー!!」
驚いて振り向くと、どうやらバーベキューコンロでソーセージを焼こうとして火傷したみたいだ。
「大丈夫か!?すぐ、水で冷やさないと」
優馬さんは、慌てて灯野先生の腕を掴むと、近くの川へ連れて行った。
「ーーーーー」
心配なのはわかるけど、何も腕を掴まなくてもいいんじゃないのかなーーーーーー。
2人のことが気になって、玉ねぎを切る手が震えてしまう。
しばらくすると、優馬さんと灯野先生が帰ってきた。
「ありがとう、優君」
灯野先生は、申し訳なさそうに優馬さんを見る。
「まったく、昔からそそっかしいのは変わってないな」
「そんなあたしにプロポーズしてくれたのは誰かしらね~~」
「あのなーーー」
呆れた顔で溜息をつく優馬さんと灯野先生の間にはとても入れない雰囲気が流れ、あたしは不安感に押し潰さそうになる。
「痛っ…………………」
2人に気をとられていたら、包丁でゆびをきってしまった。
みるみるうちに、血が滲み出てきた。
「陽向、大丈夫か!!」
辻君が焦りながらあたしの手を掴むと、切ってしまった指先を舌で舐められて、驚いて慌てて手を引っ込めた。
「つ、辻君ーーー!!大丈夫だから」
「ごめん、バイ菌が入ったら大変だと思ってつい…………」
自分の行動にハッとしたのか、辻君は顔ほんのり赤くさせた。
「ほ………本当に大丈夫だから………」
ズキンズキンとするキズを我慢しながら応えた時、横から優馬さんに腕を掴まれた。
「辻、あとは俺が西野のキズの手当するから」
優馬さんに引っ張られ、来る時に乗ってきた車に連れて行かれた。
「確か、車の中に絆創膏があったはずだけど………」
優馬さんはダッシュボードの中をゴソゴソと探し始めた。
少し待っていると、絆創膏を見つけキズの手当をしてもらう。
「優馬さん、ありがとう」
お礼を言って、また作業場へ戻ろうと車から降りようとした時、なかなか優馬さんが手を離してくれない。
「そ、そろそろ戻らないと……………」
「ーーーーーーー」
優馬さんは無言で、絆創膏を貼った指にキスをした。
「ーーーー!!」
突然のことに、心臓の鼓動が跳ね上がる。
「さっき、辻に舐められたところ消毒しておかないとな」
優馬さんはムッとさせながら、何度もキスをした。
「~~~~~~っ」
さっきまで、灯野先生に嫉妬していたことなんて頭から消え何も考えられなくなって、次第に身体が熱くなってきて、ドキドキが止まらい。
「優馬さん………………」
あたしの表情を見て、優馬さんはニヤッと笑った。
「この続きはまた後でって言いたいところだけど、卒業してからな」
「もうーー、優馬さんってば」
顔を赤らめていると、灯野先生が車の窓から顔を覗かせた。
「ちょっと、2人とも。バーベキューの用意できたわよ」
「わかった。今、行く」
スっとあたしたから離れると、優馬さんは先に車から降りたので、あたしも慌てて後から降りた。
「やっと来たーーー」
辻君の所へ行くと、焼き上がった肉や野菜を皿に乗せて、アウトレット用のテーブルに並べていた。
「ごめんごめん、辻に任せて」
優馬さんを先頭に、灯野先生とあたしも助けに入った。
食事の準備ができると、アウトレット用のテーブルを囲んで、みんなで飲み物を注いで乾杯することに。
「カンパ~イ!!」
乾杯した後にあたし達は、それぞれ席に座ったのはいいけど、優馬さんと灯野先生が向かいの席に座り、あたしの隣には辻君が座っていた。
「でも、バーベキューなんて大学のサークル以来よね。それに、あの時もこんなふうに火傷して優君に手当てしてもらったわよね」
灯野先生は懐かしそうに、優馬さんに手当してもらった腕を見つめた。
「そそっかしいのは相変わらずだなー。あの時だって、痕が残らないか心配したんだぞ」
「ごめん……優君のお陰で何とか痕は残らなかったわ……さっきだって、優君がいてくれたから……このくらいですんだけど」
優馬さんの言葉に、灯野先生が学校では見せない甘えた表情をする。
「これからは、気をつけることだな」
優馬さんが小さな溜息をついた時、辻君が口を開いた。
「杉浦先生と灯野先生って結構、付き合い長いんだ?」
「そうね……高校生の時から付き合い始めたし………」
「マジかーー。どっちから、告ったわけ?」
「優………杉浦先生からなの。あの頃から、女子には人気があったし、告白された時は夢でも見てるようだったわ」
「………………………」
優馬さんから告白したんだ…………。
こっちは猛アタックして、やっと優馬さんをゲットできたのに。
「も、もう、その話はいいだろ?」
優馬さんは慌てて止めようしたけど、灯野先生と辻君の会話が盛り上がってしまっていた。
「それから、付き合い始めて大学も一緒の所に入って、しばらく経ってから、杉浦先生からプロポーズしてくれたのよね~~」
「お~~!やるぅ~~~。で、なんてプロポーズされたの?」
興味本位に、辻君は訊きたがっているみたいだけど、あたしはこれ以上、訊きたくなくて
ガタンっと椅子から立ち上がった。
「ト……トイレ!!」
「簡易トイレが、近くにあるの見かけけど、場所わかるか?」
急に立ち上がったので、灯野先生と辻君は驚いた顔をしていたけど、優馬さんだけが冷静に口を開いた。
「………あ、う、うん」
何とか返事をしたものの、優馬さんはじっとあたしを見つめた。
「その様子じゃ、記憶が曖昧みたいだな」
「そ、そんなことない…………」
これじゃ、トイレに行きたいのは嘘だってバレてしまう。
「ほ、本当にトイレの場所わかるから!!」
その場から逃げるように、あたしは早足でその場を離れた。
川の近くまで来ると、みんなが見えないのを確認してから、土手に座ると深く溜息をついた。
あのまま、会話についていけるかなんて絶対に無理。
あたしと出逢う前の優馬さんには、興味はあるけど……灯野先生と付き合っていた頃の話なんて訊きたくない。
嫉妬してるなんて優馬さんに気づかれたくなくて、逃げる感じで来ちゃったけど、みんなに変に思われなかったかなーーー。
そんなことを思っていると、背後から声がした。
「やっぱり、トイレじゃなかったんだ?」
「ーーーー!?」
肩をビクッとさせながら振り向くと、そこには優馬さんが立っていた。
「優馬さん………」
「ごめんな、灯野先生の話のことは昔のことだし、気にしなくていいから」
隣に座ると、優馬さんはあたしの頭をポンポンと優しく撫でた。
「ーーそんなこと言われても」
あたしと優馬さんの場合は、あたしから告白したわけだし、優馬さんから灯野先生に告白して、付き合い始めたなんて訊いたら落ち込む。
こっちは、何度も告白してやっと付き合い始めて、塾で講師をしていた優馬さんだったけど、先生と生徒って立場上、ケジメをつけるためにプロポーズをしてくれたのに。
よく考えると、無理矢理みたいなものだったし、辻君のことで嫉妬はしてくれたこともあったけど、優馬さんから好きだなんて、言われた記憶も曖昧な感じだ…………。
「こらっ、昔のことだって言ってるだろ?」
優馬さんがおでことおでこをコツンとくっつけると、軽く睨んだ。
「ま、嫉妬してる陽向も可愛いけど」
そう言うと、優馬さんは顔の近づけ唇にキスをした。
「ほ、他にも人がいるのに……」
天気がいいせいか、他にもバーベキューをしている家族連れなんかが何組かいる。
急に恥ずかしくなって、俯いているあたしの顔を優馬さんが覗き込んだ。
「大丈夫、誰も見てないから」
そして、今度はさっきより激しいキスをされて、身体がかぁ~と熱くなる。
愛されてるって思ってもいいんだよね?
キスを感じながら、ギュッと優馬さんの服を掴んだ。
一方その頃、葵と陽翔は………。
「辻君、もう少し強引に西野さんにアタックしないと、このままじゃ、見向きもしてくれないわよ!!」
「そんなことはわかってるけど、陽向の気持ちを考えると………」
陽翔は、小さな溜息をついた。
「何、弱気になってるの!?しっかりしなさい。早く西野さんを物にしてくれないと、杉浦先生があたしの所に戻って来ないでしょ!?」
葵の剣幕に陽翔は、深く溜息をついた。
「ーーもう、振られてらし」
「そんな、一度や二度断られただけで何言ってるの?何度でも押して押しまくりなさい。とにかく、どんな手を使ってでもいいから」
「そんなこと言われても………あの2人はもう…………」
陽向と杉浦先生が結婚していることを知ったていることを、バラしていいものかどうか悩む陽翔だった。




