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新婚中も目がはなせない  作者: 夢遥
11/24

新婚中も目がはなせない

陽向と優馬は学校では秘密の夫婦。

でも、優馬には元婚約者がいた事が発覚し、悩む陽向。

そんな中、陽向が事故に遭いそうになったところをクラスメイトの陽翔に助けられ、陽翔がケガをしてしまう。

責任感じた陽向は、陽翔の助けになろうと毎日、病院に通う日々が続き……………。

辻君が退院するまで、病院に通う日々が続いた。


「陽向、今日も陽翔のとこに行くの?」


学校の帰り道、奈留がにやにやしながら問いかける。


「うん………でも、退院する日も決まったみったみたいだから、病院に行くのもあと少しかな」



辻君は、順調に回復しているらしく、近いうちに退院する。でも、退院してからもまだ松葉杖はかかせないらしい。



「で?病院に通い詰めている間、陽翔と何か進展はあったの?」


「進展って?」


「やだなぁ~、恋が芽生えたのかってことよ」


「そ、そんなことあるわけないでしょ!あくまで、罪滅ぼしで病院に行ってるだけなんだから!」


「なーんだ。陽翔の陽向に対する気持ちも報われないのかー」


がっかりしながら、奈留は口を尖らせた。



だいたい、あたしが好きなのは優馬さんなんだから、恋愛感情になるわけがない。






「こんにちは、陽向ちゃん」


病院へ行くとナースステーションの横を通り過ぎる時、顔見知りの看護師さんに声をかけられる。


毎日、お見舞いに来ているうちに、何人かの看護師さんと顔見知りになった。


「陽翔君も幸せね~。毎日、お見舞いに来てくれる彼女がいて」


「あはは……………」


彼女じゃないなんて言ったら、色々と訊かれそうだ。

話をややこしくさせたくなくて、曖昧に笑って誤魔化した。




病室へ行くと、今日の授業のノートを辻君に渡した。


「いつもサンキュー!でも、もう退院するんだし、明日からはノートはいいよ」


「……………わかった……」


「あーあ、退院してもまだ松葉杖生活だし、俺としては陽向がいてくれると助かるんだけどな」


辻君は、寂しげに呟いた。


「辻君………。学校でも不便なことがあったら、言ってね………あたしができることだったら、何でもするから」


責任を感じながら、あたしはぎこちなく微笑んだ。






それから、無事に退院した辻君は、何日か自宅休養してから学校に登校してきた。


「陽翔ーー、久しぶり!」


クラスのみんなが辻君に声をかけた。


辻君が入院している時も、クラスのみんながお見舞いに来てくれてたみたいだし、みんなに慕われてることがわかる。




「席につけーー、授業始めるぞ」


1時間目は英語の授業の為、優馬さんが教室に入ってきた。


「辻、体調大丈夫か?休んでいた分、授業もわからない所もあるだろうから、みんな教えてあげてくれなーー。それか、俺の所に訊きに来てもいいし」


生徒想いは優馬さんらしい。


「先生ー、俺達が教えなくても大丈夫だよ!西野さんが毎日、陽翔に授業のノートを届けに行ってたみたいだし!」


クラスの男子が、にやにやしながら言ったので、あたしはドキッとしてしまう。



あたしが病院に行く時は、クラスの人には会わなかったのに、どうして知ってるの!?


あたしが、辻君の方を振り向くと、辻君は「ごめん!」と手を合わせながら謝っていた。


そこで、辻君が言ってしまったんだと、やっと気がつく。



授業のノートを持っていってることは、優馬さんに言ってなかったのに何だか後ろめたい。



恐る恐る優馬さんを見たけど、すぐに目を逸らされてしまった。


「わかった…………それじゃ、授業始めるぞ」


その後のことは触れずに、授業を始めてしまった。


「……………っ」


全然、気にもとめてくれなかった………………。


あたしのこと、どうでもよくなったのかな……………?





昼休み、なんとか優馬さんに弁解しようと英語準備室に行く。


ドアをノックすると、優馬さんがドアを開けて顔を出した。


「あ…………あの、杉浦先生。相談があって……………」


人目を気にしながら、何とか会話を持ちかける。


「…………………………」


優馬さんは何も言わずに、中に入るように促した。


遠慮がちに中へ入ると、あたしは思い切って謝った。


「あ、あの………ごめんなさい!辻君に毎日、授業のノートを届けに行ってたこと黙ってて」


「………………………………」


「あたしのせいで、辻君がケガして何だか責任感じて、せめてもの償いをしなくちゃと思って…………」


「………わかってる。陽向が責任感があることくらい」


やっと、口を開いた優馬さんだけど、あたしと目を合わせてくれない。



あたしは思わず、優馬さんの腕を掴んだ。


「優馬さんに言わなかったこと、怒ってる?」


「……………ああ」


「ーーーーーー!!」


「自分がこんなに……………」


優馬さんが何か言いかけた時、ガタッと物音がしてあたしと優馬さんもはっと振り向くと、そこには灯野先生が青ざめた顔で立っていた。


あたしは、慌てて優馬さんから手を離す。


「西野さん………杉浦先生には、近づかないでって言ったわよね?」


「で、でも…………………」


確かに、2人っきりで会わないようには言われたこともあったけど、無理に決まってる。


「あたし達、もう一度やり直すことになったの。だから、邪魔しないで!」


「ーーーーーー!!」


灯野先生の言葉に愕然としていると、優馬さんは驚いた表情をさせた。


「な、何言ってるんだよ!?俺がいつそんなこと言った!?」


「それは…………」


灯野先生は優馬さんの前に行き、シャツを掴んで優馬さんを自分の方へ引くとキスをした。


「ーーーーーー!!」


衝撃的な光景に、あたしは目の前が真っ暗になる。


「何、するんだ!?」


優馬さんも驚いて、慌てて灯野先生を突き放した。


「この前は、あんなに深いキスをかわしたじゃない…………あれが、返事だってあたしにはわかるもの」


「あ、あれは、今みたいに葵が無理矢理……………」


目を泳がせながら、罰悪そうにしている優馬さんを見るのがつらくて、あたしはその場から立ち去ろうとした。


「ひなっ……………」


背後で、優馬さんに呼び止める声にも気づかずに駆け出した。




あたし、どうしたらいいんだろう…………。優馬さんと灯野先生の話が噛み合ってないことくらいわかる。


優馬さんとやり直すことになったこととかは、多分、灯野先生の妄想なのかもしれない。でも、キスしたことは本当のことなんだよね………………。

いくら、無理矢理だって躱すことくらいできたはずなのに。


苦しそうに唇を噛み締めると、教室へ戻った。





「葵っ、どうしてこんなことするんだ…………」


陽向が出て行った後、俺は葵を睨みつけた。


「どうしてって………何回も言ってるでしょ?優君と離れたこと、ずっと後悔してたって………だから、もう一度やりなおすの」


「そのことは、断ったはずだよな!?やりなおす気はないって」


何度も言ってもわからない葵に、不審に思いながらもまた、同じことを言っている自分が情けない。


「そんなの嘘よ………あの子のことは一時の気の迷いにしか過ぎないんだから。あの子だって、卒業したらあなたのこと忘れるわ」


「………………………」


そんなことは有り得ない。俺と陽向は結婚しているんだから。


「でも、あたしは違う。優馬がいないとダメなの………………」


葵は、弱々しい目で俺を見る。



本当のことを言った方がいいのか……………? でも、こんな状態の葵に言ったら、きっと校長先生の耳にまで入るだろう。


俺は迷う事しかできないでいた。






5時間目は移動教室だったことを思い出して、あたしは急いで教室へ戻ると、辻君がちょうど移動するところだった。


松葉杖をつきながら教室を出ようとする辻君は、何だか不便そうだったので、あたしは慌てて教科書をとりに机に戻ると、辻君に駆け寄った。


「辻君!教科書持つから」


「陽向…………、サンキュー。悪いな」


「ううん、辻君が困ってたら手伝う約束だし」


あたしは、小さく首を振る。


「あーあ、このまま治らなければ、こうして陽向をずっと独占できるのにな」


「もぅー、何言ってるの?治ってくれないと、余計に責任感じちゃう」


「いいよ、ずっと責任感じてても。俺のことでいっぱいになれよ」


真剣な表情で顔を覗き込まれて、ドキッとしてしまう。


慌てて目を逸らすあたしに、辻君は苦笑いする。


「責任感じてろなんて嘘だよ。陽向は責任感じることないんだから」


「辻君………………」


「でも、俺のことでいっぱいになって欲しいのは本当だけど」


「…………………………」


辻君の言葉が胸に響いて、何だかやるせない気持ちでいっぱいだ。


辻君のこと好きになってたら、こんなに辛い気持ちにはならないのかな……………。



辻君にわからないように、あたしは表情を曇らせた。






その日の夜、突然、優馬さんがやってきた。


「夜にすみません。お父さんに話があって………家に帰ってるでしょうか?」


「帰ってるけど………ここじゃ、なんだから上がってちょうだい。ちょうど、今から晩ご飯なの。優馬さんもよかったら食べていって」


お母さんは、優馬さんを中に招き入れると食卓を囲んで、みんなで夕ご飯を食べる事になった。


昼間のこともあり、あたしは優馬さんの顔を見られないまま、俯くことしかできたい。



「優馬君、話って言うのは?」


お父さんは、真っ直ぐ優馬さんを見つめた。


「はい………陽向さんと結婚していることを校長先生に話そうと思っています」


「ーーーーーー!!」


優馬さんの言葉に、驚いて顔を上げる。


「優馬君!何を言ってるのかわかってるのか!?」


みるみるお父さんの顔色が、青ざめていくのがわかる。


「はい……………」


優馬さんは一度、瞼を閉じると覚悟を決めたよう理由を話し始めた。



灯野先生が優馬さんのことを今でも想い続けていることで、話がややこしくなっている為、あたしと優馬さんが結婚していることを話すか迷っていたけど、話せば灯野先生の今の状態だと、校長先生に話す確率は高いとの事だった。


だったら、校長先生だけに話を留めようってことらしい。



「事情はわかった………。運良く校長先生だけに留まったとしても、お前達の処分は間逃れないかも知れない。そうなる前に、離婚して生徒と教師に戻ったほうが君達の為だと思うが」


お父さんは、深く溜息をつく。


「まって…………約束が違うーーー!!」


あたしは、お父さんに何とか説得しようとしたけど、


「約束もなにも、もう辻君にバレている段階で約束を破っているじゃないか」


もっともな言葉に反論できない。


「とにかく、校長先生に話すか話さないかは、優馬君に任せる。話さなくても、どっちにしても元婚約者の方が改善しない限り、陽向を優馬君に返すわけにはいかない。その時は、離婚してもらう」


「お父さん!?」


「陽向、落ち着けって………」


思わず椅子から立ち上がるあたしを、優馬さんは落ち着かせようと椅子に座らせた。


「わかりました」


優馬さんは真っ直ぐお父さんを見ると大きく頷いた。


「…………………っ」


あたしは、愕然と優馬さんを見つめることしかできなかった。




どうするつもりだろう…………。本当に校長先生に話すつもりなのかな…………?





翌日、優馬さんと話をするきっかけがなく、放課後になってしまった。



帰り用意をして廊下への出ると、奈留がちょうど教室から出てきた。


「奈留、帰ろう」


あたしは奈留に駆け寄る。


「陽向、ごめん!今日、バイトなの」


「そっか……………」


「代わりに、陽翔と帰って。今日、病院だって言ってたから付き添ってあげて」


あたしの肩をポンと叩くと、先に帰っていった。



辻君。今日、病院なんだ……………。


足を怪我したのはあたしのせいでもあるし、やっぱり病院に一緒に行くべきだよね。



まだ、教室にいる辻君を気にしながら、廊下で待つことにしたけど、出てくるのにそう時間はかからなかった。



「辻君、これから病院に行くって奈留に訊いたんだけど……………」


「あ、うん、健診なんだ。順調に回復してれば、今日ギブスはとれるかも知れないって言っても、まだ松葉杖は必要だろうけど」


辻君は期待を胸に弾ませながら、教えてくれた。


「本当!?」


よかった~~~!!ギブスだけでもとれれば回復してるってことだよね?


あたしは、ホッと安心してさせた。


「それで………あの………あたしも、付き添いで行ってもいいかな?」


「陽向も一緒に来てくれるなら、心強いなーーー!!」


辻君が嬉しそうに言うものだから、つい苦笑いをしてしまう。



昇降口へ行く途中、優馬さんと灯野先生を見かけてあたしは思わず立ち止まった。


「どうした?」


辻君が怪訝そうに、あたしの視線の先に目を向けた。


「また、あの2人一緒にいるのかよ!」


深い溜息をつきながら、辻君はムッとさせた。



優馬さんが灯野先生といるのはイヤだけど、何とか灯野先生に諦めてもらう為には、優馬さんが必要だ。



「でも、何だか2人とも穏やかな雰囲気じゃなさそうだな」


辻君に言われてみると、優馬さんは慌ててるようだし、灯野先生はというと少し怒っているようにも見える。



「あの2人、大丈夫かよ。何だか様子が変だぞ」


「う、うん……………」


気になるけど、何だか近寄り難い。


「行ってみよう」


辻君も気になるのか、松葉杖をつきながら近づいて行った。


あたしも後から、辻君を追いかけて行く。



「杉浦先生も灯野先生も、こんな所でケンカ?」


辻君は、何気なく優馬さんと灯野先生に声をかける。


「いや…………ケンカというか………」


優馬さんは困った顔で、灯野先生に視線を送った。


「そうね、ケンカじゃないわね。あたしは、ただ杉浦先生ともうすぐ結婚しますって、校長先生に伝えに行こうとしてただけだもの」


「ーーーーーー!!」


一瞬、灯野先生の言っている意味がわからず、ただ呆然としてしまった。


「どうして、話を勝手に進ませるんだ!?」


「だって、校長先生が言ってたのよ。あたし達が結婚する時は、報告してほしいって」


灯野先生は恥ずかしそうに、頬を赤らめる。


学校では、優馬さんと灯野先生が一緒にいることが多いから、校長先生からはそう見えるのかもしれない。




「言っただろ?俺は、葵とは結婚できないって」


「嘘よ………俺のそばにずっといて欲しいって、プロポーズしてくれたわよね?」


寂しそうに優馬さんを見つめる灯野先生に、あたしは嫉妬してしまっていた。


それって………あたしにプロポーズしてくれた言葉と同じ………!?

でも、その後にずっと大切にするって言ってくれたけど………。



あたしは複雑な気持ちで、優馬さんに視線を向けた。



「そ、そんなの、昔の話だろ?」


あたしの気持ちに気づいたのか、優馬さんは少し慌てているように見える。


「ううん、あたしにとってはあのまま止まったままだもの」


灯野先生は小さく首を振ると、鋭い視線であたしを見た。


「西野さん、あたしに杉浦先生を返してくれるわよね?」


「えっ………………」


「だって、あたしの方が付き合い長いし、杉浦先生のことなら何でも知ってるし」


あたしに言う灯野先生は、何だか勝ち誇ったよう。


「葵!いい加減にしないか」


いつも穏やかな優馬さんが眉間にシワを寄せながら、強い口調で灯野先生を叱った。



優馬さんとはケンカもしたことがないあたしにとって、いつも見ない光景に少し寂しさを感じる。


「どうせ、西野さんが卒業すれば優君の気持ちだって変わるはずよ」


「そんなことない」


優馬さんは冷たい視線で、灯野先生を見つめた。


「わかった。そんなにその子のことがいいなら、あたしにも考えがあるわ」


チラッとあたしに視線を向けたけど、すぐに視線を逸らす。


「考えって…………葵、ちょっと来い!」


何を思ったのか、優馬さんはすまなさそうに、あたしに視線を向けたけど、すぐに逸らすと、灯野先生の腕を掴むと何処かへ連れて行ってしまった。




「………………あんな強引の杉浦先生、始めて見たかも…………」


今まで黙って見ていた辻君が、呆然としたまま口を開いた。


「……………………」


優馬さんに強引な所もあることはわかっているつもりだったけど、あたしに対する態度とは違う………。



それに、灯野先生とは何でも話し合える関係なんだ。


2人のやり取りを見ていて、そんな感じがした。


































































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