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【完結】新しい我輩、はじめます。  作者: コル
最終章 魔王の我輩、勇者の我輩
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3 『俺様が全て奪ってやる!』

2019/08/29 事情により、加筆修正及び誤字脱字の修正。

 おいおい、どういう事だ!? アブソーヘイズに宿る精霊だと!? お前というか私は天使だろ! いや、あの姿では精霊であってはいるんだが……あーもー! 頭が混乱してきた!!


「おい! アナネット! これはどういう事だ!? デイルワッツ様は一体どうなってしまったのだ!? エリン!? デール!? わけが分からないぞ!」


 横でギャーギャーとうるさいな!


「それは私が聞き――くっ」


 ――落ち着け、落ち着くんだ私、また取り乱してどうする……冷静さを戻せ……そうまずは深呼吸だ。


「す~は~す~は~」


「なっ、おい! アナネット! 深呼吸何ぞしておる場合か!?」


 ちっ、こいつはもうどうしてそんなに私をイラつかせるんだ!


「――っ私も混乱しているから落ち着こうとしているんだ! 貴様は少し黙っていろ!」


「ひっ! は、はい……ゴメンナサイ……」


「す~は~す~は~……ふぅ……」


 ……………………少しは、落ち着いてきたか。

 さて、まずはあの【私】の把握からだな。

 

 あの精霊はエリンと名乗り、アブソーヘイズは悪魔が攻めてきた時に抜かれる事を分かっていた、魔力吸収の能力も知っている、その辺りを考えるとやはりあそこにいるのは【私】の分身なのは間違いないだろう。

 だが性格はまるで違うし、私の思念が届いていない。そして天使を倒すが魔族を倒す事になっている、アブソーヘイズを抜く事を私ではなく抜いた人物がマスターになってしまっている……といった極端におかしなところがある。

 うーむ……仮設を立てるのであれば長い年月でアブソーヘイズ内の【私】に異変が生じたか、もしくはデイルワッツの魔力で姿かたちだけではなくあの【私】の存在までもが歪になってしまったか、あるいは両方のせいか……どちらにせよ記憶がぶっ飛んで尚且つ【私】であって私ではない、別の何かになってしまったのは間違いないな、くそっ!


 しかし……デイルワッツがアブソーヘイズのマスターになって悪魔を倒すっだって? 何の冗談だ、これじゃアブソーヘイズをデイルワッツに抜かせた意味が無いじゃないかまったく…………ん? 待てよ、これはこれでチャンスに変えられるのではないか? このままアブソーヘイズを奪い取るよりはデイルワッツを勇者にしてしまって悪魔四天王や他の悪魔を戦わせ、その魔力を吸わせてから奪った方が楽にしかも大量に魔力を集められるのでは?

 仮にデイルワッツが倒されたとしてもそのままアブソーヘイズを回収すればいいだけの話しだ、クス……よし、それでいこう。


「……もしかしたら……だが」


 まずはこの馬鹿を利用してと。


「む、何だ? 何か思いついたのか?」


「ああ。私とて信じられんがデイルワッツ様は天使と通じていた……としか考えられない」


 普通に考えるとそんなわけないがと思うが――。


「なんだと!? どういうわけだ!?」


 こいつの場合、簡単に信じるだろうな。


「あの剣は天使が選んだ者しか抜けないはずだろ? 現に何人も抜こうとして抜けなかった、しかしデイルワッツは抜けた、しかもあのエリンとかいう精霊も召喚した。となると天使との接触があったと考えるべきだ」


「む、確かに……ん? いやちょっと待て、天界にはずっと結界が張ってあるではないか、デイルワッツ様と天使が通じる、もしくは接触する事など出来ないではないか?」


 まさかこいつが結界の事に引っかかるとは、明日は雨が降るかもしれん。


「なんだ? 俺の顔をじっと見つめて、何か付いているか?」


「い、いや気にするな。お前の言い分も分かるが、それは軽率だと思うぞ、人間界に結界石とあの剣があったんだから結界が張られる前に出て来た天使がいたとしても不思議じゃない、いやいたからこそデイルワッツ様と接触しこの様な事が起きたのではないか?」


 そもそも降りてきた天使がいたし、ここにいるし、な。


「なるほど……ハッそうか! だから自分から行くと言い出したのか! あの剣を取りに行く為に! ――くそっ、これでは俺様の計画が無駄に……」


 ん? 計画だと? アルフレドまで何か考えていたのか?


「おい、計画って言うのは何だ? 私は知らないぞ」


「あ、しまっ――」


 口を塞いだがもう遅すぎるわ。


「いいから話せ、……話すんだ!」


 でなければデイルワッツを勇者にする為の計画の妨げになるかもしれないからな。


「……デイルワッツが人間界で邪魔になる勇者と天使の剣を始末した後、この魂の抜けた体にアナネットの力で俺が入ってデイルワッツを始末して成り変ろうとしていたんだ……まさかあいつが天使の剣を抜いて勇者になるとは思わなかったが」


 妨げるどころかむしろ率先していた。


「……私がそんな事に力を貸すと思っていたのか?」


 まぁ貸すが、というかさせるつもりだった。


「あ……ああ……そうだよ、な……はぁ……」


 アルフレドの奴が夜な夜な一人で酒を飲むたびぼやいているのを知ってはいたが、そんな事を考えていたのか。


「……話したぞ、さぁ煮るなり焼くなりすきにしろ!」


「そうヤケになるな……安心しろ、その事は誰にも言わない。むしろ今回の件でデイルワッツには愛想が尽きた。だからアルフレド、貴様に協力してやるよ」


「……何? 本当か!?」


「ああ、本当だとも。ただし私は参謀だから私の言う事は聞いてもらうぞ」


 じゃないとめちゃくちゃになってしまいそうだしな。


「それはかまわない。さぁ今すぐにやってくれ! そして今から奴を始末してやる!」


「今から!? それは駄目だ!」


「あん? なぜだ?」


「あ~え~と……」


 私の計画が狂ってしまうから、とは言えない。


「……天使の剣は天界の物だろ? そんな未知数で危険な物は様子見をした後でも遅くはないだろ」


 今日だけでどれだけ誤魔化し言い訳を口にしたんだろう私……。


「なるほど、確かに……」


「だから悪魔四天王達に任せよう。デイルワッツを、いや勇者デールを始末するようにと。ただし中身はデイルワッツと言うなよ」


「どうして?」


 言う事を聞けとは言ったがそんな理由くらい自分でも考えろよ。


「……どうしてって、あのな、中にはデイルワッツに忠誠を強く持っている奴もいる、その事を話してデイルワッツ側に付いてしまったらどうする。厄介な事になるのが目に見えているだろうが」


「あ~……そうか、分かった。すぐに使いの者を出す、おい! 誰かいるか?」


 これでよし、後はっと。


「それじゃ始めるぞ、こっちに来い」


「おう! ……俺様が全て奪ってやる! そう全てな! フハハハハ!!」


 本当に惚れ惚れするよ……アルフレド……その脳味噌が入っていない頭にな。

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