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【完結】新しい我輩、はじめます。  作者: コル
第七章 とある天使の昔話
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4 『沈黙は肯定と同じよ』

2019/08/27 事情により、加筆修正及び誤字脱字の修正。

 血を洗うのに結構時間をかけてしまった、早く戻らないと……私とジェイがいない事で騒ぎになってなければいいが。

 まぁそれはどうとでも言い訳をすればいいか、問題なのはこのアブソーヘイズの魔力を感じられないように天界の門を通るのか……その辺りの事をまったく考えていなかった。

 さすがに門から出ているのに門から戻らないっていうのもおかしいよな、どうしたものか……あ、ジェイのように見回りが通り過ぎたのを見計らって塀を飛び越えて中に入って部屋にアブソーヘイズを置きまた外に出て……ってそれは駄目だ、アブソーヘイズの能力で動けないから部屋を出られない。

 くそっ邪魔だ、この能力は邪魔すぎる! どうにか……どうにか……何かないか、魔力を隠す方法……そうだ!!


『マッマスター、くっ苦しいです!』


「我慢しろ、と言うか剣のクセに苦しいとかおかしいだろ! それに私はそこに加えてお前の柄で痛いんだぞ!!」


 木を隠すなら森の中、魔力を隠すなら魔力の中だ。こうやって私の体にアブソーヘイズを布で巻いて固定して魔力を誤魔化す。当然直立で不自然な格好になってしまうが……大丈夫だろう、タブン……。



「お、戻ってきたかエリン」


「ああ、遅くなった」


 どうだ? ばれてないか?


「無事戻ってきたという事はうまくいったみたいだな。あ、そうそうジェイの奴が出て行くのを見ていたみたで色々聞いてきたがちゃんと黙ってし通さなかったぜ」


 塀を飛び越えて外に出て来たがな……。


「そうなのですか、ありがとうございます。では、私は報告に向かいますのでこれで」


 よっしゃぁああああああ! ばれてない! このまま私の部屋まで一直線だ!


「……なんであいつずっと直立状態だったんだ? すごく不気味だから触れなかったが……関らないで正解だったみたいだな……」



「ぜぇ……ぜぇ……」


 つっ疲れた。アブソーヘイズがあるせいでまともに走れないわ、他の者に会わないように隠れながら進まないといけないわで自分の部屋にたどり着くまで大変だった……だが、これで安心だな。さて早くアブソーヘイズを出さねば。

 ――よいしょっと、ふぅ……これで楽になった。


 ――コンコン。


「エリンいますか~?」


「――っ!?」


 シルバ!? 何てタイミングの悪い!! 今日はとことんついていない日だ!

 アブソーヘイズを早く隠して……って隠したその場からほとんど動けないから出られんし、かといって持ったままだと魔力を感じられる……ええい! 仕方ないまた体に巻くしかないか!? っ本当にこの能力どうにか出来ないのかこれ!?


「エリン~? いないのかな~? ――お、いたんですか~ってエリンにしては珍しいね~すごく軽装な部屋着じゃない~何時いかなる時でもって多少の武装はしているのに~」


「――あ、ああ、体がだるくて少し横になっていた。さすがの私でも横になる時は薄着になる、そうじゃないと痛いじゃないか」


 今は横になってなくても痛いがな、とにかく早くシルバに帰ってもらわなければ。


「そりゃそうか~、大丈夫~? すごく辛そうな顔しているよ~疲れが出ているんじゃない~?」


 それはそうだよ! 急いでアブソーヘイズを巻いたから位置を調整出来ず背中に食い込んでいる状態なんだからすごく痛いんだよ!


「そ、そうかもな。で? 私に何か用事でも?」


「そうそう~エリンに聞きたい事があるんだけど~」

 

「何?」


 早く用事をすませて帰ってくれ!


「ジェイを見なかったですか~? ベデワル隊長に頼まれて呼びに行ったんだけど部屋にいなくて~それを言ったら今度は探してこいって……もう、ジェイったら迷惑ばっかりかけさせるんだから~」


 ベデワルの奴、なんでこんな時に限ってジェイの探索なんてさせているんだよ!!


「そ、そうなのか……すまないが私はジェイを見ていないな。……さっきも言った通り、体がだるいからまた横になりたいのだが……」


「そうですか~じゃあもう一つだけ――」


 人の話を聞けよ!


「だから――っておい!」


 シルバの奴、人の部屋にどかどか入り込んできて来たが一体何を考えているんだ!?


「――エリン……貴女、どうしてそんなに新しい血の臭いをさせているの? しかも悪魔だけではなく天使の血も混じっている様だけど?」


「なっ!?」


 ちゃんと洗ったのに何故分かったんだ、そもそも悪魔と天使の血の嗅ぎ分けなんて出来るものなのか!?


「後、貴女の体から貴女と違う魔力を感じるんだけど……何を隠しているの? 直立で体勢もおかしいし、ジェイがいないのと関係があるの?」


 目の前にいるのは本当にあのシルバなのか? まるで別人の様だ、とにかく誤魔化せねば。


「な、何の事かさっぱり――」


「嘘、誤魔化そうとしても駄目。エリンまさかとは思うけど……」


 ある程度準備をしてから魔力吸収の行動に移そうと思っていたが、こうなったら仕方ない。


「……ジェイを殺したの?」


 邪魔者ヲ殺ス!!


「っ!? 背中から剣!?」


 チッ、避けられたか。


「危ない危ない。魔力の正体は魔剣だったのね……その魔剣でジェイを斬ったの?」


「……」


「沈黙は肯定と同じよ、どうしてジェイを斬ったの!?」


「……」


「その目……そう、魔剣に魅入られてしまったのね。同族であるジェイを斬り、天界に混乱をもたらそうとする貴女はもはや天使族ではないわ……エリン。――ならば、私が貴女を処刑する!!」


「貴女が私を? 笑わせてくれる! シルバ、貴女の魔力も貰うわ!!」


「「はぁ!!」」



「なんだ!? 何処かで爆発音がしたぞ!?」


「ベデワル隊長! 空を見て下さい!!」


「空だと、ん? あれは……エリンとシルバか!? 何故2人が戦っているんだ!?」


 まさか本気のシルバがこんなにも強かったなんて! 


「さっきの威勢はどうしたの……エリン? その程度では私を殺せないわよ!」


「くっ!!」


 やはりこいつは別人なのか!?


「シルバ、その力を持っているのに隊長……いやもっと上にいけるものを何故一兵に収まっていたんだ?」


「ん~? だって~上に立つって色々やる事があって面倒じゃない~私そんな事したくないし~」


 やっぱりシルバだ……。


「「シルバらしいなっ!」」


 ならば分身との連携でけりを付けるのみ!


「「死ねぇ!!」」


「……分身を作っても無駄よ……」


「「――なっ!? ぐはっ!!」」


「2人まとめて斬ればいいだけの事だもの」


 そんな……馬鹿な、同時に斬られるなんて……だが――。


「――隙を見せたな」


「え? ――がはっ!? ……どうして3人目の……エリンが?」


「すまんな、シルバ……今の私は2体の分身が作れるんだよ。先に行っているジェイによろしく言っといてくれ、貴様の魔力のおかげだ、とね」


「……エリ……ン」


 同じ日に2人の仲間が地に落ちていく姿を見るとはな……いや、元、仲間だったな、クスクス。

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