9 『降伏をするのであれば苦しまずに逝かせてやろうぞ!』
2019/08/25 事情により、加筆修正及び誤字脱字の修正。
「ハハハハハハ――ん? 何だ、この音は?」
この音に地響き……。
「な!? ここに水が流れて来たですと!?」
チョハッ、爺さんうまくやったみたいだな。
「よし! ベルトラ! 戦闘かいっ――はぶ!?」
ええ!? まさか我輩の上に水が流れ落ちて来るだと!?
「ガボガボガボ!」
ぐおおおおおおお! 水が流れ落ちる力ってこんなに凄まじいものなのか!? まったく動けん!
いやそれより息が、息が出来ん! このままだと――。
『ちょデール、何してるの!?』
「本当に……何をしているんです――」
ベルトラの片足が思いっきり後に振りかぶっておるような……まさか!?
「――っか!!」
「ぐぼぁ!?」
やっぱり蹴り飛ばしやがったよこいつ!
「……ゲホッゲホッ! っこらぁ! 何も蹴り飛ばす、事はないだろ! ゲホッゲホッ!」
うぐ、痛い……見事に鳩尾にヒットしたぞ……。
「その方が早いと思いましたので」
「……その方が早いとって……他にも助け方が、あっただろう……ゲホッゲホッ!」
「今はそんな事よりフレイザーを打ち倒す方が先決でしょ」
そんな事って……くそ! 後で覚えていろよ!!
「――ゴホン、気を取り直して……チョッハハハハ! どうだ!! これで周りの火は消え、水の刃は作り放題、これで貴様の勝ち目はなくなったぞ! チョッハハハハ! 降伏をするのであれば苦しまずに逝かせてやろうぞ!」
「……なんだか、デール殿が悪役みたいですね」
『そだね、これじゃまるで悪魔だよ』
いや……悪魔も何も我輩はその悪魔を束ねる王なのだが……。
「なるほど。ここに水を流すようにしていたのですか……考えました、ね。しかし私も悪魔四天王の一人、人間なんぞに降伏なぞいたしません!! それに火が消えた? よく見るがいい! 行け! 我が炎よ!」
炎よって、頭の火でちっちゃな小鳥を作っただけではないか、チョハハハ! そんなちっぽけのもので我輩達を倒せると……ってあれ? こっちじゃなく森の奥に飛んで行った。
お、暗い森の奥が明るくなってきた……明るく? …………しまった! 別に燃やす所はこの辺りだけではない、燃える場所があれば火種さえ作ればいくらでも――。
うげっ! ちっちゃな小鳥がでっかい火の鳥になって出てきた!!
「さぁ! 行きなさい! 私の炎竜よ!!」
え? あれが竜? どう見ても鳥にしか見えんのだが……ってそんな事言っておる場合ではない! こっちに向かって飛んできた!!
「その程度! ――はぁっ!」
お~さすがベルトラ、一振りで火の鳥……じゃなくて火の竜をぶった斬った。
「これで終わりと思うわないことです、ね! まだまだまだ行きますよ!」
次から次へと飛んできた! これではフレイザーに中々たどり着けぬぞ……せっかく水をここに流したのにこのままでは魔力を消費するだけでではないか。
何か良い手段は……あ、そうか。
「ベルトラ! 合図と同時にフレイザーの元へ走れ! 良いな!」
「――わかりました!」
何もここだけ水を貯めている意味なんぞなかったわ!
「エリン! 魔力を魔法強化に全て回せ!」
『了解!』
「走れ!! ベルトラ!」
「っ!!」
「いくぞおおおおおおおおおお! マックストルネード!!」
竜巻で周りに水をぶちまけてしまえばいいだけの話だ!
「なんだと!? くっ炎龍が消された――っ!?」
「フレイザアアアアアア!!」
よし! ベルトラが一気に距離をつめての抜刀状態、この勝負もらった!
「なめるなぁああああああああ!!」
フレイザーの足元から火の壁が出てきただと!?
ベルトラの奴はもう態勢を立て直せる状態ではない、ならば――。
「そのまま叩き斬るのだ!! ベルトラ!!」
「言われなくても!! うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ぬあっ! 火と水のぶつかり合いですごい水蒸気爆発が起きた!
「ええい、水蒸気のせいで辺りが見えん、一体どうなった!?」
『デール落ち着いて、風魔法で散らせばいいんだよ』
「ああ、そうか。ウィンドショット!」
よし、これで辺りが見えてきた……おお! ベルトラがフレイザーを押し込んでおる、水の刃はさっきの水蒸気爆発で消えたようだが水蒸気を刃に変えたのか。
「考えました、ね。まさか水蒸気を利用してくるとは……」
「貴様に褒められても嬉しくもありません! デール殿、今です、魔力吸収を!」
フレイザーは防御魔法で防ぐので精一杯、それでは固有魔法も使えない。
となればチャンスは今しかない!
「ベルトラ、手柄を奪うようだが許せよ! フレイザー! これで終わりだ!」
「――でもないんですけど、ね」
「え? な!?」
さっきの火の壁が出てきた地面の穴からマグマが吹き出して来ただと!?
危ないとこであった、もう一歩前に出ておったら今頃……。
「炎龍はただの時間稼ぎ、残りの炎は巨大な火土竜を作りだしマグマの通路を作っていたんですよ、ね! そして――」
「なっ! 自分の位置にも穴を!?」
「ええ、私の種族は炎族でして、ね、このくらいのマグマは耐えられますが……あなたはどうですか、ね?」
「ベルトラ! 早くその場から退くのだ!」
「うぐぐ――くそっ!」
よかった。退いてくれた、そのままフレイザー事と刺し違えてもおかしくなかったからな。
「フハハハ! 逃げたところで意味はないですが、ね!」
うそだろ!? あちこちからマグマが吹き出してきた!
あの野郎、この辺りあちらこちらに穴を開けておったのか。これでは水場にした意味がない! 早く奴を仕留め――。
「あれ? あの野郎の姿が見えんぞ?」
「奴ならあそこです」
あそこ? ベルトラは空に指を差しておるが……いた!! 火の鳥の上に乗って我輩たちを見下ろしている!
『こら! 火の鳥で空に逃げずに降りて戦え!』
「火の鳥ではなく炎龍です! 私は降りる気なんてありませんよ、その剣はやはり相性は最悪ですから、ね。ここで高みの見物とさせていたただきますよ。フハハハ!!」
まずい、このままではバルガスのように我輩達もマグマに飲み込まれてしまう! どうにか脱出する手段はないのか!?
「ベルトラァアアアア!! 勇者殿おおおおおお!!」
「この声は……爺さん!?」
丘の上に爺さんとフェリシアの姿が!
「2人ともじっとしていてくださいです! 今助けますです!」
フェリシアがツルを伸ばした、そうかそれで我輩達を引き上げて――ってツル? やな予感が――。
「ぐえっ!?」
やはりか!
どうして我輩にだけ首に巻きつくのだ!?




