3 『ダリ爺の昔話!? 聞きたい聞きたい!!』
2019/08/22 事情により、加筆修正及び誤字脱字の修正。
結局我輩がフェリシアを背負う事になってしまった、どうしてこうなった……。
「デ、デール様……す、すみません……はう……」
「ん? ああ、別に気にするな」
「は、はい……」
しかしフェリシアの顔が真っ赤な上にすごいフードがモコモコ動いておるが、暑いのか? こんな寒いのに? いや、そもそも寒いから動けなくなったんだよな……う~ん、分からん。
まぁいいか、それは置いといて先に――。
「おい、ベルトラ」
「なんですか? 私は代わりませんよ」
聞きたい事とまったく違うがそれはそれで即答かよ。
「そんな事ではないしここまで着たからにはカルリックまでしっかり背負っていくわ。我輩が聞きたいのはちゃんとカルリックの城の中には入れるのかという事だ、マレリスの時みたいに門前払いになるのは嫌だぞ」
砂漠もきつかったが、こんな雪の中っていうのも想像するだけで実に恐ろしい。
こんな中を生き残れるのは剣に入っているエリンと爺さんくらいだろう……。
「あ~その事なら大丈夫です、あ! ん! な! マレリスみたいな事にはなりません」
とげとげしい言い方だな、ま~だマレリスの事は根にもっておるのか……。
「大丈夫と言い切ったがそれは何故だ?」
「えっとですね、何故なら――」
「カルリック国はアルムガム国と友好関係じゃからな」
ほう、友好関係を持っている国もあったのか。
「そうなのか? マレリスを見る限り和解はされたものの国関係はそこまで強い様には見えんのだが」
「カルリックの王ラデニス・カルリックと王妃アリアン・カルリックはわしの幼馴染だからじゃ」
……は!? カルリック国の王と王妃が爺さんの幼馴染だと!?
「おいおい、爺さんのクセにそんな大物と幼馴染とは……信じられんぞ」
「おいこら、声で出ておるぞ! クセにとはなんじゃクセにとは!」
おっと、驚いてつい口に出てしまったか。
「それと信じられんも何もカルリックはわしの故郷じゃ。親父が先代の王の騎士じゃったからわしも城に連れられていた、歳が近いからラデニスとよく悪ふざけしてアリアンに叱られたの」
「そのアリアンとは王妃と言っておったが」
「アリアンは元々メイドでラデニスの世話係をしておった、2人が結婚するまで色々大変じゃったぞ……」
そりゃ王族とメイドじゃ格差があるからな……周りがやかましかっただろうに。
ん? そうなると腑に落ちん事があるぞ。
「爺さん、一つ気になるのだが」
「ん? なんじゃ?」
「爺さんの故郷がカルリックで父親が騎士、なら何故爺さんはアルムガムの騎士になったのだ? 王が幼馴染ならなおさら……」
そこは普通、自分の国の騎士になると思うのだが。
「あ~それはじゃな、実はわしは元々騎士になるつもりはなかった。あの時は世界を見たくての~だから当てのない放浪の旅に出たのじゃ」
あれ? 何故アルムガムの騎士になったのかだけ聞きたかったのだが、このまま続ければ爺さんの昔話が始まってしまいそうだ。別に爺さんの若い頃なんて興味がないしさっさと要点だけを……。
「そうかは――」
『ダリ爺の昔話!? 聞きたい聞きたい!!』
おいいいいいいい!!
「そうかそうか、そうさな~わしが旅に出たのは40年ほど前になるかのぉ。さっきも言ったが世界を見て回りたくてカルリックを出たのじゃ」
興味がないのに始まってしまった……。
「そして最初にアルムガムへ向かったんじゃ」
「ちょっと待て! いきなりアルムガムではないか!」
全然世界を見てまわってはおらぬではないか!!
「いや~アルムガムにはうまい酒があるのが有名じゃったからな。そして酒場に行って飲みすぎて……つい喧嘩になって暴れてしまった」
ついで済ます事かそれ!?
「その喧嘩の相手がエドガー……後の剣豪エドガー・トゥアンじゃ」
この爺さん相手に喧嘩売るとはさすが剣豪だな。
「……おじい様とダリル様の出会いが……酔っ払い同士の喧嘩……」
ベルトラはこの話を知らなかったようだな、顔見る限り2人はもっと運命的な出会いをしていたと思っておったな。ものごく残念そうだ。
「だがそこからエドガーと意気投合してしまってな、過ごしていたらいつの間にかアルムガムの騎士になって、これまたいつの間にか2人で双豪と呼ばれるようになってしまったわ」
当時のアルムガム王よ、本当にそれで良かったのか……。
「そしてラデニスが王になった事により、わしがアルムガムとカルリックの間を取り持ち友好関係を繋げたのじゃよ」
なんかものすごい事ばかり言っておるが……爺さんが言うと物凄く薄っぺらく聞こえるのは何故だ。嘘っぽいからか?
「だがデイルワッツがこの世界に侵攻してきたせいでカルリックの情報が遮断はされてしまったがな」
……なんとも耳が痛い言葉だ。
※
「あ、カルリック国が見えましたよ」
やれやれ、やっとカルリック国に着いた――む? 城から出ているあの黒い旗は一体何だ?
「なぁ爺さん、あの旗は……」
「……そ、そんな……」
爺さんの顔色が物凄く悪くなった?
「お、おい、どうした!?」
「あの黒い旗は……現国王が……崩御したときに掲げられるものなのじゃ……」
崩御? ……カルリックの王は爺さんの幼馴染だよな……え?
「――くっ!」
「な!? 爺さん! まて! 我輩たちを置いて行くな!」
速っ!! この雪道の中どうやったらあんな速さで走るんだ!?
「ええい! ここを通せ!」
「ぜぇ~ぜぇ~……何とか……追いついたが……」
どうも爺さんが門番と揉めておるみたいだ、前にも見たような光景だな。
「駄目です! ただいまカルリック国は入国を禁じております!」
何だと!? 結局ここも入れないと言うのか!?
「わしはダリル! ダリル・ボーガンじゃ! ……アリアンを! カルリック王妃様に取り次いでくれ!」
「ダリル? ……まさかダリル様!? ――おい! すぐに王妃様にご報告を!」
「はっはい!」
この兵士達の慌てっぷりを見る限り。
「失礼をしました! 申し訳ありませんがしばらくお待ちください」
「無理を言ってすまんが、これは譲れない事なのでな」
どうやら爺さんの昔話は本当のようだ。




