10 『私も一緒に……旅に同行してもよろしいでしょうか!?』
2019/08/21 事情により、加筆修正及び誤字脱字の修正。
……これで悪魔四天王の2人目が消えてしまったな。
「終わったのぉ……わしはエリンに傷を治してもらってからマレリス国の様子を見てくる。アディアを倒した事も伝えに行かないといかんしな、勇者殿たちはベルトラを連れて先にフェリシア殿の家に行っててくれ」
元でも騎士の性か、他の国とはいえどうなったか気にはなるか。
「ああ、わかった」
さて、ベルトラの奴はどうなっているのか。
※
「あれ? 洞窟の前にベルがいるよ」
ふむ、動けるようになったのか……ベルトラ怒りが収まっておればよいが。
「お~い! ベル~! 元気になったんだね~! よかった~!」
ちょ! 確認もせずエリンがベルトラに抱きついた!?
「ちょっとエリン、まだ完全に毒は抜けてないんですよ。……それでアディアはどうなりましたか?」
……良かった、どうやらあの時のは寝言みたいなものだったか……それはそうか、毒で死にかけてたものな。
「ああ。倒したぞ」
「ばっちり!」
「そうですか、それは良かったです……あ、フェリシアさん!」
「は、はい! ――きゃっ!?」
ベルトラがフェリシアに抱きついた!? 珍しい光景だなこれは。
「ありがとうございます! あなたは私の命の恩人です!」
顔を擦り付けている……こいつどんどんネコ化が進んでいるような。
「い、いえ……そんな……おおげさな……あう……」
「おおげさではありません! 書置きで大体の事は知っています、フェリシアさんが解毒を作っていただいたおかげで私は助かりました! ……あれ? ダリル様は?」
「ああ、爺さんはマレリスの様子を見に行ったぞ。フェリシアの家で合流する事になっておる。後さっさとフェリシアを放してやれ、顔と花が真っ赤になって固まっておるぞ」
「はう~……」
「あっと、すみません、つい……コホン、わかりました。では私たちも向かいましょうか」
※
「戻ったぞ~ふぅ~……やはり砂漠の中はしんどいわい~」
お、爺さん戻ってきたみたいだな。
「ダリル様、マレリスはどうでしたか?」
「おお! ベルトラ元気になったか! 良かったあああああああ!」
今度は爺さんがベルトラに抱きついた……。
「ぐふっ!! ちょっ! ダリル様! いだだだ!」
エリンと違ってあんな筋肉ダルマに抱きつかれたら痛いわな。
「おおっとすまんすまん……え~とマレリスじゃが、アディアがこっちに来たおかげで手下の悪魔どもの統率が取れなかったようで被害は出たものの撃退出来たらしい……ただあの惨状だとわしらがマレリス王に会うのはますます難しいだろうな」
あれだけ攻撃を受ければ仕方ないか、どうやって王に会うか考え物だな。
「アディアの件で会う事だったんだし、倒したんだから別に会わなくてもいいんじゃないの?」
……え?
「あ~たしかに、それもそうじゃの」
……ええ!?
「おっおい! あんな事言っとるがいいのか!?」
さすがにそれは――。
「エリンの言っている事は間違いじゃありませんし、いいんじゃないですか? それより次に行くのが先決だと思います」
これはベルトラの奴、絶対マレリスには入れなかったことを根にもっておるな……そこは我輩も同意見だが。
「……わかった、皆がそう言うのであれば次に向かおう。フェリシア、今回は実に――」
「あ、あの!」
なんだ? 急に大声を出して。
「どうしたのだ?」
「……私も一緒に……旅に同行してもよろしいでしょうか!?」
「へ?」
頭の花が物凄く震えとる。
「私は……魔ざり者……この姿になってから国の人から忌み嫌われ、両親はそんな私をずっと守ってくれました、それと同時に何も出来ない自分自身がとても嫌いでした……」
「フェリ……」
「ですが皆様は私の姿を見ても優しく接してくれました。アディアとの戦いではこんな私でも出来るこ事があるとわかりました……私は自分自身を好きになりたいです! 微力でも皆様のお役に立ちたいです! 荷物運びでも何でもやりますから! どうか!」
なるほどな……そんな事を考えておったのか。
「……我輩はフェリシアがよければいいと思うが? 皆はどうだ?」
「え? ……本当……です?」
「そだね、フェリが一緒にいてくれたほうがいいよ! いろんな意味で! ギューーー」
「あう! くっ苦しいです! エリン様!」
頭の花が伸びたり縮んだり……見ていて面白いなあの花は。
「そのいろんなの部分に何か引っかかるのですが……まぁ今は置いときましょう、私もフェリシアさんが同行してくれるのなら心強いです」
「ただ危険な旅じゃからな……覚悟はしとくのじゃぞ」
「ぷはっ……はいです!」
「それに勇敢な勇者にアホ精霊にネコ騎士に老いぼれのパーティだぞ? 魔ざり者なんぞ気にする事ではないわ! チョッハハハ!」
「アホ精霊?」
「ネコ騎士?」
「老いぼれ?」
あ、まずい……口が滑った。
「とっとにかくだ! 皆も異論はないみたいだし、フェリシアよろしくな」
「はい! よろしくお願いしますです!」
※
「では出発する――ん?」
フェリシアの奴、後ろを向いて何をジーっと見ておるのだ……後ろ……ああ、そうか、家か! 我輩には見えないから一瞬わからなかった、しかし何故自分の家を見ておるのだ? 何の意味が……?
「お父さん……お母さん……行ってきます……」
うーむ、人間というのは良くわからんな。
「そうそう、ベル! ベル!」
「なんですか?」
「さっきフェリに抱きついた時に胸を触ったんだけど……自前だったよ」
「っ!?」
「ちょ!? エリン!?」
おいおい、あの殺意を忘れたのか?
いや、待てよ……この件に関してエリンは他人事の様にしておったよな、まさか……。
「……フシュー……」
「あ、あれ? ベル? どうしたの? なんか怒って……ちょ!? なんで剣を抜くの!? やめ……ぎゃあああああああああああ!!」
そのまさかだった、エリンの奴ベルトラの怒りが自分にも向いていた事に気がついておらんだ……アホめ。
「あ、あの……デール様、ダリル様」
「ん? フェリシアもういいのか?」
「あ、はい……じゃなくて……えと、お2人を止めなくてもいいのです?」
「ああ、かまわんかまわん、いつもの事じゃ」
「いつもって……」
「さて、行こうか」
「そうじゃな、ほらフェリシアも行くぞ」
「え? え? ……本当にいいのかな……」
「殺!!」
「ちょっとおおおおおお! みんな!! 助けてよおおおおおおおお!! いやぁああああああああああああ!!」
うーむ、精霊というのも良くわからんな。




