プロローグ
2019/08/16 事情により、加筆修正及び誤字脱字の修正。
「勇者デールのご出立である!」
野郎の野太い声が晴天の空に響き渡る。
ガコンと鈍い音を立て大きな門の扉がゆっくりと開いていくのを眺める、これが開ききれば我輩どうなってしまうのだ……。
「さぁデール殿、行きましょう」
右にいる女騎士は凛とした声で馬を進ませている、やる気満々といったところだ。
「デール! アタシたちで魔王のデイなんとかをボッコボコにしてしてやろうね!」
左にいる精霊はふよふよと飛びながら拳を振りながら進んでいる、こっちもやる気満々。
「……」
何故そんなにもこいつ等はやる気満々なのだ、我輩はそんなノリについていけないぞ。
大きな門の扉が開ききった視界には大勢の人たちが歓喜に沸いている、こいつ等もか……。
「勇者ばんざーい!」
「デール様! 魔王を討ち取ってください!」
「ゆーしゃさまー、がんばってー」
老若男女の声援が実にうるさい……。
「勇者デールよ! 必ず、必ず魔王デイルワッツの討伐を成し遂げるのだ! 皆も頼んだぞ!」
背後の城のテラスから威厳に満ちた声が響く、王冠をかぶり、豪華なマントを羽織、威厳のある口髭を生やしたこの国の王様が叫ぶ、そんな大声を出さなくても十分聞こえているわ。
「ハッ! お任せを!」
右にいる女騎士は直立し拳を握り胸に当てそれにわざわざ答えている、いちいち反応しなくても良いと思うのだが。
「アタシ達におまかせあれ~!」
左にいる精霊もふよふよと飛びながら手を振ってそれに答えている、お前まで返事してしては我輩もするしかないではないか……。
「……ハイ……お任せを……」
なんとも力のない声なのだ、我輩でもこれはどうかと思うがしょうがないではないか……何せ――。
――どうして我輩が我輩を討伐しに行かなければならぬのだ!?