ざまぁ系ヒロインはダンジョンマスターに裁かれるーーバッドエンド編ーー
もともと「ざまぁ系ヒロインはダンジョンマスターに裁かれる」に組み込んでいたのですが、ホラーっぽくなったので分けました。今までの世界観が壊れる可能性があるのでご注意ください。
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで?
私はヒロインなのよ。
こんなのおかしい
リセットしなきゃ
はじめから
セーブしたっけ?
ロードはどうするの?
とにかく探さなきゃ。
探し始めて始めて鏡を見つけた。
そして見てしまった。
そこに映る存在を。
オークのような醜い存在を。
これが私?
うそ、うそよ。
本当の私は可愛いの。
花のような存在なの。
断じてこんな姿ではないのよ。
なんでこんな姿になっているの?
なんでこんな所で閉じ込められているの?
わからない。
きっと何かのイベント。
そうよ!
イベントよ!
そうイベントなのよ。
イベントイベントイベントイベントあはははは。
何だ、心配して損した。
そっかそっかイベントか。
恋に障害はつきもの!!
きっと誰かが助けてくれるのよ。
そして私の本来の姿を取り戻して愛を育むの!!
とりあえず、この呪われた姿を何とかしたいわね。
重いし。
そう思っているとあの人が現れた。
メイズ様だ。
やっぱりこれはメイズ様ルートのイベントなのね!!
これからメイズ様に助けられて本来の姿を取り戻して。
「お前も憐れだな」
憐れ?
何の事?
これから貴方と私は愛を育むのよ。
それはとても幸せな事。
「これの今の持ち主はお前だ。返してやるよ」
そう言って鉄格子の隙間から何かを投げ渡すメイズ様。
それはネックレスだった。
やった。
これで本来の姿に。
ヒロインの姿に戻れる!!
早速私はネックレスを身につける。
慌てて鏡を見るとちゃんと元の姿に戻っていた。
「憐れではあるが、容赦はしない。だけどチャンスはくれてやる。お前は取り巻き達と共にとあるダンジョンに挑んで貰う。攻略した暁には全ての罪を許してやる。かつて、フィロキセラが来た時の劣化レプリカだ。と言ってもお前達じゃ攻略は無理だろうがな。まあ、お前達もエイラを彼女には攻略不可能なダンジョンに放り込んだんだ。同じ事をされても文句は言えないよな。まあ、そういう事だから頑張れよ」
何言っているの?
あれ、待って!!
どうして置いていくの!!
貴方のヒロインはここよ!!
早く助けて出して!!
待ってよ。
お願いだから早く助けてよ!!
メイズ様に追い縋ろうとするが鉄格子が邪魔をする。
そうこうしているうちにメイズ様は消えてしまった。
どうしよう?
何で助けてくれなかったんだろう?
そっか、今はそのタイミングじゃないんだ。
そっかそっか次は何時なのかな?
そんな考えに耽っていると、突然何の脈絡もなく私の足元に落とし穴が出現して、私は落ちてしまった。
突然の事で非常に心臓に悪かったが、私は無事だった。
そこは、松明などで照らされた洞窟だった。
そして私以外にもハル様達がいた。
「マリア!! お前!!」
ちょっと、近づいて来ないでよ!!
私はメイズ様一筋って決めたのよ!!
あんた達にはもう用はないのよ!!
「マリア。お前……」
突然憐れむ様な顔をするハル様。
変なの。
「それで、これからどうしますか?」
これからの方針を決めようとするコスト。
どうするもこうするもメイズ様が私を助けに聞けくれるのを待つだけよ。
「ここには武器や防具やその他の道具が置かれている。どれもかなりの高性能だ。ここで準備をしろという事だろう」
「つまり、ダンジョンを攻略すると?」
「それしかないね。そうしないと僕達は破滅だ。幸い、マリアを除く全員が武術ないしは魔術で戦える」
「それに、あの方が言うにはここは初代様が攻略したダンジョンの劣化版だ。しかも、初代様は一人だったという。俺たちはマリアを除いて六人。十分勝算はあるだろう」
「そうですね。やるしかないのですね」
ちょっとちょっと!!
私を無視しないでよ!!
これはこれで嫌よ!!
私を無視して次々を話し合いながら準備をする攻略対象達。
「これでよし。みんな覚悟は出来たな?」
ハル様の言葉に頷く彼ら。
覚悟って何?
何しようと言うの?
「あの、マリアはどうしますか?」
「マリアは……連れて行こう」
「殿下……」
「言いたい事はわかる。しかし放っておけない」
「殿下まさか」
「いや、大丈夫のはずだ。マリアにはいろいろ言ってやりたいがそれは生き残ってからだ。逆にマリアが生き残らなければそれは出来ない」
「そう、ですか」
「ははは。それはいいですね。俺も生き残って色々言ってやりますよ」
もう、何なのよ!!
「マリア、怖いだろうが俺たちから離れずについてきてくれ」
嫌よ。
私はここでメイズ様を待つのよ。
「……仕方ない。ポーティ、引っ張ってきてくれ」
「わかりました」
ポーティが私の腕を掴んで引っ張る。
やめて!
離して!!
私は無理やり引っ張られて彼らと共に奥へと進んでいった。
……。
……………。
……………………。
「雰囲気が出てきましたね」
何時までも引っ張られるのは敵わないので仕方なく彼らと共に歩く事にした。
「ああ、そろそろ魔物が出てくるかもしれない。曲がり角も近いし油断はできん」
魔物が出てくるの?
ちゃんと守ってよ。
「作戦通り、俺が盾になります。殿下は遊撃を。ポーティは俺のーーカチリーーほぎゅ」
会話の途中、突如変な声を出して途切れさせるバーン。
それもそのはず、壁から飛び出た電動ノコギリのような回転する刃物が一瞬でバーンの首を切り飛ばしたからだ。
コロコロ転がってくる丸い物体。
足元に転がってきたそれはバーンの首だ。
何これ?
「ひっ」
ポーティから悲鳴が上がる。
迷わず逃げようとするポーティ。
「う、うわぁぁぁぁ!?」
その為、後ろを向いた瞬間に再び悲鳴をあげた。
それにつられて私も後ろを見てしまう。
そこには、いつの間にか現れた巨大なスライムが双子を飲み込んで半分くらい溶かしている姿があった。
何これ?
「何なんだよ!! もう嫌だぁ!!」
退路を断たれたポーティが出来るのは前に進む事だけだった。
運良く罠は発動する事は無かった。
しかし、曲がり角を曲がった時、先ほどのバーンの時のようにポーティの首がこちらに飛んできた。
それと同時に現れたのは全身鎧の銀の騎士。
その剣は先ほどポーティの首を刎ねたであろう血が付着していた。
何これ?
「殿下! 逃げましょう!!」
「逃げるったってどこに!?」
「それは……ーーカチリーー」
ハル様の剣幕に怯えたコストが一歩下がった瞬間、天井が落ちてきた。
ちょうどコストがいた場所だけが。
コストは潰れて残ったのは腕だけであった。
何これ?
「は、はははは。何だこれは? こんなものがダンジョンなのか? 初代様はこれを攻略したのか?」
ーーカチリーー
その言葉を最後にハル様は落とし穴に落ちていった。
それがどこまで続いているのかは知らない。
何これ?
動こうにもどこに罠があるのかわからない。
しかし、後ろには巨大スライムが、前には銀の騎士がいて私に迫ってくる。
何なのよこれは。
私、死ぬの?
私はヒロインでしょ?
今はメイズ様ルートの真っ最中でしょ?
どこかで失敗した?
バッドエンド?
いや違う。
これはアレよ。
危機的一瞬でメイズ様が助けに来てくれるの。
ギリギリの所で助けてくれるから運命なの。
だからこそこの恋は白熱するの。
だから大丈夫。
だって私はヒロイ
ーーケタケタケターー
どこかで笑い声が聞こえた気がした。
ー▽ー
「ほら、回収しておいたぞ」
「ありがとうございます」
「それにしても、相変わらず趣味が悪いな」
「そうですか? 彼女は見ていてとても愉快でしたが」
「だから邪神なんて呼ばれるんだよ」
「失礼ですねこんな美少女に向かって。私はちょっと欲深い者に美貌を与えただけですよ」
「その結果どうなるかわかっててやってんだからたちが悪い」
「嘘もついていませんよ?」
「なおさらたちが悪い」
「それでも、欲を抱かずに純粋に暮らしていたら幸せになれたはずです」
「それが出来ない奴にそれが渡るようになっているんだろ」
「秘密です」
「ところで、お前を呼び出したのは他でもない」
「おや、このネックレスを渡してくれるだけでは?」
「お前が見たかったのはあいつの破滅だろうし、ここまでこの国の中枢を巻き込むとは思わなかったんだろう」
「……」
「あのネックレスがこの国にあるのも他意はないのだろう。だけど、この国を混乱させたのは事実だ」
「えーと、メイズさん?」
「罪には罰が必要だと思わないか?」
「おちおちおちおち、落ち着きましょう。話し合い。そう、話し合いを!」
「なに、今回の件は俺も感謝をしている所がある。手加減はしてやるよ」
「あぎゃーーー!!」
シリーズ物だから恋愛カテゴリーにしたけれど、絶対に恋愛要素ないよね。
ー▽ー
マリア:もともと電波だったが、ざまぁされて精神に異常をきたしている。最後まで希望の光を見出していたのはある意味救いかもしれない。たとえ存在しない希望であっても。あるモノを失っている。
第二王子:多分まだマリアが好き。いろいろと葛藤はあるけど。
取り巻き達:もうマリアを異性として見れなくなった。恋は盲目状態から解放され、一致団結するが……。
色欲のネックレス:メイズが預かっていた時に魅了効果は打ち消されている。
ダンジョン:かつてフィロキセラが挑んだ原初のダンジョンの劣化レプリカ。アレで劣化している。序盤も序盤だぜ? だいたいフィロキセラがおかしい。
スライム:いつもニコニコあなたの後ろを這い寄る粘液。這い寄られると溶けて死にます。
銀騎士:難易度にもよるが、ボスが勤まるほどの実力。フィロキセラなら一刀両断。
メイズ&邪神:作者がマリアの最後に耐えきれなくなり登場。最後に邪神がメイズにボコられた事により若干の明るい成分を補給。