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2.襲来


 時は暫し戻り、某所にて。


「はあ、ここが英雄様のいた世界」


 光が満ち溢れている。

 英雄様の世界はなんてまぶしいのでしょう。

 私達のいた世界とは全然違う、夜でも騒がしく人々が多い。この世界の人達は夜に活動する魔物達を恐れないのでしょうか。


 左右にそびえるは石の壁、いえ、窓のようなものがありますね。これは建物なのでしょうか。

 煉瓦でもない、継ぎ目もなくこうも綺麗な壁を作れるとは、この世界の建築技術は私の想像以上のようです。


 あ、奥で何かが騒音を生じながら走っておりますね。


 あれはなんでしょう。

 四角い箱? 中に人がいるけど、馬車のようなものでしょうか。でも馬がいないような、いえ、この世界には私の知らないもので走行できる技術があるとみていいですね。

 大通りのようですがあまり近づかないほうがよさそうかもしれません、けどこんな小道は光が無い、光が欲しいですね。

 あのまぶしいほどに発光し続ける、光……。


「すごい、世界です」 


 英雄様には以前から聞いていたもののこうして目の当たりにすると開いた口がふさがりません。


「どうですか?」


 おや、そういえば私についてきた方がいましたね、人と言えるのかは定かではありませんが。


「貴方の求めていた世界ですよ」

「でも私が求めていた人がいません」

「それはこれから探しましょう」


 胸が高鳴ります。


「しかしこの世界、空気が少々……」

「仕方がありませんよこの濁りは、技術の発展は時に自然を汚してしまうのです」


 彼? 彼女?

 駄目、声が幾重にも重なって判断できない。

 この方は、えっと、誰だったのでしょうか……不思議と思い出せません。

 表情を窺おうにも深々と被ったフード、しかも影は虚のような、吸い込まれそうな闇。

 今が夜だからでしょうか、いえ、昼でもこの方の表情は窺えない気がします。


「慣れるには暫く時間が掛かりそうです」


 この方、名前は……そう、エヴァルフトでしたでしょうか。

 いけない、どうも記憶が曖昧で、これは駄目な気がする。

 今はエヴァルフトを頼ったほうが、良いのでしょうか。


「おーいこんなとこで何してんの?」


 んん? と。

 私についてくると頑なに言っていたあの子かと思いましたが声から違う、どなたでしょうか。

 エヴァルフトは体を覆いつくす布から右手を出している、戦闘体勢?

 もしかしてこの世界の魔物は見た目は人間と同じなのでしょうか。

 何もかもが未知で、私が無知すぎて判断がつきません。


「お穣ちゃん、暇?」


「暇ではございません」


「変わった格好してるね、コスプレ?」


 二人組み、それも見た目からして良い印象は浮かばない。

 そこらを歩いている方々は黒髪、彼らは金髪、髪の色は同じであれどこか親近感が沸かない――雰囲気が、そう抱かせるのでしょうか。


「彼らは?」

「この世界ではそうですね……山賊やチンピラと似たようなものです」


「では退治を?」

「ここは私にお任せください」


 エヴァルフト、頼りになりますね。

 きっとこの方はいい人です、何故かだどこで知り合ったのかすら思い出せませんが、多分、いい人です。


「去れ、下劣な者よ」

「おいおいなんだこいつ、てるてるぼーずかよ」


 てるてるぼーずとはなんでしょうか。

 興味深い単語です。

 しかし彼らの笑い方には一々良い印象はなく、笑いといえど私の嫌いな笑い方しかしません。


「なあなあ暇ならどっかでお茶でも、あーいや酒かな? どう? 楽しまない?」


「去れと言ったはずだが」


「おめーが去れや、てるてるぼーずには話してねえんだよ」


 男が一人、エヴァルフトの肩に手をかけた瞬間、彼は宙を一回転しすぐ隣に聳え立つ石の建物に叩きつけられました。

 なんだかすっきりした気分。


「へぁ!? て、てめえ!」


 ああ、なんということでしょう。

 仲間の敵討ちをしようとした彼も同じ目に遭うのは分かりきっているのだから。


「お騒がせしました」

「いえ、お見事でしたね」


「この世界では月の光から魔力を、そしてこの者達のような悪しき者を倒すとまた魔力も得られましょうぞ」

「なるほど、つまり彼らのような者達を倒せば魔力蓄積に繋がると」


「はい、ですがあまり目立つとこの世界ではケイサツという組織が妨害してきますので警戒を」

「ケイサツ……」


 私のいた世界ではどのような役職の方なのでしょうか。


「彼らは倒しても魔力は対して得られません、戦っても不利益です」

「ふむ、ケイサツとはぶつかり合わないほうがよさそうですね」


 特殊な力を持った者達か、それとも変異した魔物か。

 情報が少ない今、下手に動かないほうがよさそうですししばらく情報集めにまわりますか。


「フェイ様のお姿が見当たりませんね、はぐれたようです」

「困りましたね、いえ、思ったのですがそんなに困らないかもしれません。あの子は一人でもやれる子ですし」


「では我々の元にやってくるのを待ちましょうか」

「ですね」


 見捨てたとかそういうのではなく、信じた上での選択です。


「では行きましょう、我々の拠点に。そこでこれからの計画について話し合いましょう」

「ええ、そうしましょう。よろしく頼みますよ、エヴァルト」

「はい、セルファ様」



 * * * *



 尻が痛い。

 姉ちゃんは手加減ってものを知らないんだよな。

 弟をもう少し大切に扱ってほしいね、誰が家事をしてあげてると思ってるんだか。

 俺が家事をしなきゃ今頃ゴミ屋敷だぜ、そこんとこわかってほしいよな。


「さて、と」


 今日はまた街に出るのだが、理由はあれだ、俺が駄目にしてしまったポスターと同じものを買ってこいという命令が与えられたのでね。

 せめてギルド通した依頼であれば依頼達成後に金も入るのだがこの世界じゃあそれもないしなあ。


「小遣いあるし、まあいいか」


 欲しいものは然程無い、あえて欲しいものを挙げるのならば毎日がスリルで溢れていたあの冒険の日々。

 昨日はようやくイグリスフを出せたけど、出す機会がないしまた出せなくなるんじゃないだろうか。

 冷静になって考えたのだが。飛鳥にこいつを見せるべきなのか……。

 姉ちゃんとの約束を破ることになるし、姉ちゃん怒らせると怖いんだよなあ。

 飛鳥と姉ちゃんはそこそこ会ったりするらしい。

 あいつが姉ちゃんにイグリスフの話をする可能性は、十分にある。

 口にチャックしてるけど隙間が常に開いているような奴だ、口の軽さでは俺の知る限りじゃあ上位に余裕で入るね。


 今日は流石に飛鳥とは遭遇しないだろう。

 ここ数ヶ月、外には何度か出歩いているが中学時代の友人達との遭遇は飛鳥意外未だにない。


「はあ……」


 親父達とも仲直りできてないし、お先真っ暗だ。

 ため息ばかりが出てくる、あまりこの話は考えないようにしよう。

 今はポスターを見つけることが先決だ。

 たしかアイドルグッズを販売してる店があったはず。

 しかしながらこの記憶は二年前、今もやってればいいが。


 パリッ――と。


 その時耳障りな音が鼓膜を突いてきた。

 なんだろ、いきなり音楽を聴いていたらノイズが走って嫌な気分になるような、そんな音だ。

 しかもその音はまた続く。

 後方、すぐ近くだ。

 振り返ると、そこにはいつもの通り道ではあるが、空間に亀裂が走っていた。


「えぇ……?」


 人ではない、明らかに魔物と言えるごくつ刺々しい腕が亀裂を裂いて出てくる。

 身の覚えがある、魔物と言える? いや、魔物の手だこれは。

 しかし今何故目の前でこのような現象が起きている?

 周りには……人はいない、朝っぱらで街からはまだ遠い位置にあるのが救いだ。


「カカッ」

 ああこの笑い声、トカゲ型の魔物独特の笑い声だ。

 懐かしい、昔は怖かったけど修行やらして徐々に力をつけて倒せるようになったら


「おいおい久しぶりだな、祝杯でもあげるかい?」

「カカカッ」


 笑ってる笑ってる、餌とみなしたのか英雄の俺を発見できての笑いなのかは定かではないが。

 亀裂が広がり全身が露になる。

 一度は四足で亀裂から落ちて着地するも、ゆっくりと二足歩行で立ち、その瞳は周囲を見回したのちに俺を見る。

 随分と余裕そうだな、目の前に強敵がいるってのによ。


「イグリスフ!」


 俺は右手に集中する。

 柄が現れ徐々に刀身が光を帯びながら姿を現す。

 これには魔物も意識を寄せてくる。

 イグリスフを出す前に攻撃をすべきだったのだが、こいつは戦いまでの動きが遅い。

 周りに意識を逸らさせるものが多いのか、何か物音がするや視線は俺から外してきやがる。

 これは好機、難なく倒せるのならば逃す手は無い。

 何よりイグリスフを早く振るいたいのだ。


「さあ、こい!」


 魔物は体全体が出るや攻撃を振るってくるがこちらも既に戦闘体勢に入っている。

 左手からの攻撃、この時点でこいつが右利きだと判断できる。

 次なる攻撃は右だ、ならば左からの攻撃を避けて俺は相手から見て左側に動くのが良い。


「経験の差ってやつよ!」


 攻撃を避けるや魔物は右手の攻撃を繰り出していた、これはもう長年魔物と戦っていて分かるパターン。

 魔物の攻撃は当たらない、その距離は取っている。


「ちょろいねっ」


 魔物の攻撃は空振り。

 同時に、イグリスフを下から上へ。

 この単なる振り上げも、聖剣では強力な戦術と化す。

 魔物は地から足が離れ、宙へと舞い、動きは一瞬不自由に。


「どりゃ!」


 すぐに横一閃、魔物の体は真っ二つ。


「……おお」


 久しぶりにイグリスフを振るった。

 相変わらずの切れ味、まるで豆腐を切るような感覚で魔物を無力化できた。

 絶命すればその体は粒子と化して転生に、負の力が含まれていれば魔力に変換して自分の魔力とできる―セルファから教えてもらったのが懐かしいね。

 魔物からの魔力の供給は久しぶりだな、だがこれといって魔力を活用できる機会は無いのだが。

 ああ、炎魔法ならば料理の時に使えるかも。


「しかし、なんでこの世界に魔物が……?」


 話が脱線しかけたところでなんとか戻る。

 魔物の出現の仕方も尋常ではない、この世界に召還されたというより侵入してきたような。


「何が起こってるんだ?」


 高揚している。

 むしろ何かが起きてほしいと。

 この魔物は俺を狙ってこの世界まで来たのか、それとも他にも魔物がいて無差別に現れたのか。

 後者だとしたらポスター探しどころではない。


 俺は街へ早足で向かった。

 街へと入るや、これといって騒ぎが起きているわけでもなくいつもどおりの風景。

 肩透かしもいいとこだ。


「ん?」


 僅かながら、魔物の気配を感じる。

 どこだ? ここからは遠いのか、それとも弱い魔物なのか、ただ単に気配探知が衰えているだけなのかは定かではないが。


「魔物の気配を感じるってだけで、この世界じゃ異常だよな」


 こりゃあ店に行ってられんね。


「こっちか!」


 気配を探ってその方向へ。

 近づくたびに騒がしくなっていく、人の流れは俺と逆になり、皆が何かに追われて逃げているかのようだった。

 つまり、魔物がこの先にいる。

 口端が釣りあがってしまう、正直に言うと楽しみでしょうがないのだ。


「おおう、一体、二体、と」


 車が横転してしまっていた。

 出てくるや派手に暴れてくれたものだ。

 バイクなんか信号機に引っかかってるし、こんな光景中々見れるものじゃあない。


「……てるてる坊主?」


 よく見てみると魔物の後ろにもう一体いるがなんだありゃあ。

 あ、目が合った、のか?

 てるてる坊主が顎をくいっとあげると魔物達がこちらを向いた。

 なるほど、操ってるのはあいつか。

 魔物使いか魔物に取り込まれた人型か、どちらにせよ敵なのは間違いない。


「やるか!」


 周りには人がいるけど出し惜しみなんてしていられない、人助けをここは優先しなくては。

 魔物二体だけならば倒すのは容易い。

 問題は近くにいる人々だ。

 倒れて怪我をしている人もいる、皆に被害が及ばないような立ち回りをしなくては。

 攻撃を避けたら後ろに人がいて潰されましたなんていう結果になったら洒落にならない。


 魔物達は左右に分かれて突進してくる。

 近くに倒れている自転車を拾い上げて右側の魔物が先ずは先制。


 先ほどと同じトカゲ型――確かロドリヴァだったかな名前は。


 ロドリヴァには変わらないがこいつらは色が若干違う、知能が高い証拠だ。

 誰の自転車かは知らないが申し訳ない、真っ二つ!


「ってなれば!」


 左側からも攻撃が来るはず。

 左側のロドリヴァは既に跳躍していた。

 攻撃を振るってくるがこれは真正面から受けるのはきつい、もし斬れなかったら体重が乗っているあの拳に押しつぶされる。


「っと!」


 間一髪で避ける、ロドリヴァの拳が地面にめり込んだのを見て俺は一閃。


「どうだっ!」


 浅かったか。

 もう一体がすかさず攻撃、追撃は許してくれない。

 こいつら、知能が高い上に戦いなれている、調教でもされたのか?


「あのてるてる坊主……」


 奴が司令塔になっている可能性もあるな。

 さっきから僅かながら右手が動いている。

 ロドリヴァ達に信号を送っているのならばこいつらの動きも分かる。

 てるてる坊主を倒せばこいつらの動きは悪くなる可能性も否定できないが、てるてる坊主を仕留めに行った途端に周りの人々に危害を加えようとした場合は止めるのが難しい。


「面倒だな」


 つまりは、こいつらを倒すのが一番。

 何か俺の動きを観察されているようで気に入らないが、やるしかないか。


「今度は魔力込みだ!」


 魔力はこの世界で一度も消費してない、蓄えることもできるためにかなりの

蓄えができているはず。

 イグリスフに魔力を注ぐ。

 刃が青く発光――よし、やれるな。


「おい皆、今のうちに逃げてくれ!」


 目の前で起きていることについていけないのは分かるがそのまま地面に尻を任せるのもよくない。

 俺になら尻を任せていいけど。


「き、君は……?」

「今はそんなの気にしないで逃げて!」


 こんなことに巻き込まれてなければ今頃会社でお茶汲みでもしてただろうに、お姉さん、そのびりびりに破けたストッキングじゃあ会社にはすぐにはいけないね。

 いやー色っぽい。

 って見とれてる場合か!


「カカッ!」


 右側のロドリヴァが建物の壁を走っていく。

 今攻撃したら建物の中の人にも被害が及ぶってか? 汚いなあこの野郎。


「じゃあ先ずはこっちだ!」


 左側から。

 あいつは人質でも取ろうとしたのか、さっきの姉ちゃんに手を出そうとしていたが俺はイグリスフを振るった。

 縦一閃。

 距離はある。

 だが、魔力がある。

 魔力を斬撃として飛ばすこの力。

 これは便利なものだぜ。


「カッ」


 ロドリヴァの動きが止まった。

 両腕は勿論、お腹と背中がお別れしたのだ、即死の一撃だぜ。

 もう一体は俺の頭上へと飛んでいた。

 振り下ろしたのを見てからの攻撃だろうが甘い――


「甘いんだよなあ!」


 身体能力も魔力で上がってるんだ、切り返しも早い。

 攻撃が来る前にもう一体も真っ二つ、こいつは左右がお別れになったな。


「ふぅ」


 久しぶりの戦闘、体の動かし方も悪くは無かった。


「ほら、早く逃げて」

「一体何者、なの?」


「ニートです」


「は?」


「ニートです」


 元英雄、でもこの世界じゃあそんな称号は意味も価値もない。


「……そ、そう。あ、ありがとう」


 あんまり哀れみを込めた目で見ないで。


「ほら他の人達も逃げて逃げて!」


 またすぐに魔物が出てくるかもしれないんだ。

 人晴らしを済ませ、その間じっとこっちを見ていたてるてる坊主とようやく対峙。

 パトカーの音も聞こえてるしここも警察が取り囲むのも時間の問題だ。

 警察が絡むと面倒だしはやくここから離れたいのだがてるてる坊主とは話でもしておかなくちゃな。


「お前、異世界から来たのか?」

「そうだ。流石英雄といったところだ」


 なんだこの声、ボイスチェンジャーでも仕込んでるのか?


「なんでこんなことを?」

「君の力量をはかるためにね。今日はよい収穫だった、次回はもっと協力な魔物を召還しなくては」


「俺が目的かよ、なんだよ、何か悪いことでもしたか?」

「セルファ・ドミリア様がこちらの世界に来ている」


 ……セルファ?

 セルファって言ったのか、今。


「あの方は君を手に入れるためならなんでもするだろう」

「おいおい、俺の知ってるセルファはそんな奴じゃねえんだが」


 いつだって優しくて、たまに怒った表情は可愛くて、人を傷つけるのが嫌で、自分が傷つくのは問題ないっていう聖人だぜ?

 こいつの言い方じゃあセルファが魔物を嗾けたみたいじゃねえか。


「今日は君がどれくらいやれるのかを見れただけ十分、次は侵略を開始しよう」

「何を言いやがる」


「君はこの街を守れるかな」

「狙うなら俺を直接狙えよ」

「それじゃあ面白くない。この手のものはね、周りから崩すのがお約束というものであろうに」


 どこか楽しんでいるようにも思える。

 こいつ、今この場でしばいたろか。


「ああ怖い怖い、そう睨まないでくれたまえ、私は小心者なのだよ」


「今すぐぶったぎってやろうか」

「一つ言っておこう、私は人間だ。君の話は耳が痛くなるほど聞いているが、人を殺したことはないとか」


 それは……そうだがな。

 たとえ悪人でさえ、反吐が出る極悪人でさえ斬れなかった。

 この先もきっと、そうだ。

 俺の信念がそうさせる。


「私を斬れるかい?」

「殴ることならできるんで」


 普通にてるてる坊主の頬に一発めりこませた。


「ふぐひっ」

「すげぇ爽やかな気分だぜ。新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のよーによォ~」


 某少年漫画のとあるキャラの気分が今分かったぜ。


「んぐっ、普通に殴る英雄が、あるかぁ!」


「今は英雄じゃなくてニートなんで、命名するならば今の攻撃はニートパンチだ」


「……ニートとは?」

「働かない奴のことを言う」


「自分で言って情けなくないか?」

「しばくぞ」


 話をしている間、新たな魔物の出現は無くこのてるてる坊主自体はそれほど力を持った奴ではないようだ。

 単なる俺のニートパンチであれ効いているようだし、魔力による身体能力向上もない。


「セルファはどこにいるんだ?」

「焦らずともそのうち会える」


 てるてる坊主は後ろへ一度跳躍し魔方陣を出現させた、逃げるつもりだ。


「おい待て!」


 イグリスフを振るおうとするも、躊躇してしまった。

 やっぱり、人には刃を向けづらい。


「では、また後日」

「魔力を蓄えて待ってるぜ」


「いや働けよ」

「余計なお世話だ!」


 敵にまで言われたくない。

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