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好きになったから、だから……。

作者: しおん

付き合って別れた彼氏もいた。



大学生の時に、近所のコンビニでバイトを始めた。



初対面は、バイト2日目。私は午前中のバイトに入るため、彼、れんは、夜勤明けだった。



「昨日から新しく入った朝宮です。よろしくお願いします。」



「ああ……はい。」



蓮は素っ気なく返事をして、パソコンのある事務所へそそくさと行った。タイムカードを打つためだ。



なんか、強面の人だな……目線も鋭いし、背も高いし、なんだかこっわ-。



それだけ思うと、蓮のことはすぐ忘れた。



バイト2日目だ。レジをしながら、覚えることはたくさんある。



3日目は、蓮とシフトに入っていた。蓮は夜勤も朝勤もするらしい。



「池野君は朝宮さんと同じ学年だよ。大学は違うけど。」



店長の一言に驚いた。2つか3つは上だと思っていた。



「あいつ、追っかけしていてさー、バイト代、全部追っかけに使ってるんだよ。就活しながらさ……。」



店長は前半、楽しそうに、後半は遠慮がちになった。



就活決まらない私の事情も知ってるからだ。



……大丈夫なのかな、追っかけなんかしていて……。



あとでわかったのは、蓮の就職は特別な資格のいる専門職で、つぶしの効かない私とは違っていた。



そんな私達だけど、ひょんなことから、付き合い始めた。



あの人のことを、忘れたわけではない。



でも、蓮の真っ直ぐな眼差しに、優しくて弱い、でも強い眼差しに、心を委ねた。



蓮との交際は楽しかった。相変わらず追っかけに熱を入れてる蓮だけど、私を何よりも大切にしてくれた。



蓮とお泊まりもした。



でも、だんだん、蓮の様子は変わった。



あんなに優しかった蓮の情緒は不安定になっていった。



「有架里、なあ、他に好きな男いるなら言えよ!」

「なんで、好きな男のところに行かないの!?」

「はっきりさせろよ!」



なんで蓮にこんなこと言われるようになったのかわからなかった。



泣いてばかりの毎日。就職なんかどうでもよくなりかけた。



思い当たるのは、ただ一人。



私は蓮に、打ち明けた。



「なんで、ちゃんと好きって言わないの!」

「俺なんかどうでもいいから、そいつのとこ行けよ!」



「蓮、違う! 私が好きなのは蓮だよ! その人は、婚約者を連れてアメリカへ行ったもの!」



「じゃあ、俺はなんなの!? お前がちゃんとしなかったら、俺ダメになる……。」



蓮は初めて、目を赤くしていた。



その時は、蓮の部屋にいた。私も蓮もその時は実家住まいだった。



蓮の部屋を見渡した。



ここで、何度も何度も、蓮に頭を触れられ、頬を触られ、抱きしめられて、キスもして、たくさんの話もして……。



蓮を傷つけたこと、でも、好きな気持ちは嘘でないこと、一緒にいたいこと、たくさん思って泣いた。



「泣いてないで、お前がちゃんとしろよ!」



蓮も泣いていた。



私は泣きながら、蓮の部屋を出た。



家に帰り、3日間、部屋から出なかった。



3日目。私はやっと部屋を出て、泣き腫らした目で、リビングで紅茶を飲んだ。



引きこもってる間、ママもパパも妹のあづみも、何も聞かないでいてくれた。



「お姉ちゃん、少し、生き返った……?」



あづみは教科書やノートをリビングに広げた。



「お姉ちゃん、心配で、ここで勉強してたんだ。お姉ちゃん、落ち着いたら、好きなコーヒー飲みに来ると思って……あれ、紅茶?」



「……。」



また泣いた。蓮の好きな紅茶を、選んでいたからだ。



「お姉ちゃん、自分の気持ちに正直にならないとダメだよ。」



あづみはそう言うと、英語の辞書を開き始めた。



Aから始まる単語、そして、Iから始まる単語、Lから始まる単語、そしてyou……。



紅茶を飲み干した。



私は蓮に電話をかけて、会う約束をした。



蓮のこと、大好きだったのは、絶対に嘘なんかじゃない。



でも、もう、蓮を傷つけたくない。そういう立ち位置にいるのだ、私は。



私は涙を吹いて、家を出た。

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