第3話 犬あり遠方より来る(朋あり遠方より来る)
「防具の店 とりっく・おあ・とりーとにようこそ♪」
カランコロンとドアベルが鳴る。ゴスロリですか。猫耳生やした可愛い女の子が店番してたが、女性客が数人いる店内はペットショップのようなことになっていた。内装も商品もお客さんもロリータです。
「今日はどんな御用ですかにゃ?♪私は店主のジョセですにゃん♪」
「あ、召喚士の酒呑童子です。えっと、狼用の首輪とかありますか?」
「もちろんありますにゃ♪(横くん、どんなのがいい?)」
こそっと言った一言に時が止まった。
そりゃ、突然リアルの名前を言われたら固まりますって。
「こんなのどうですかにゃ?♪(僕だよ、同級生だった剣﨑だよ。)」
ついポカーンとしてしまう。剣ちゃんは高校の同級生だ。2年中頃に性同一性障害を告白して、すでに察していた我々同級生を(あ、本人の口からカミングアウトされてなかった!)と動揺させてくれたド天然サンである。また我々勉強できない(してない)男子共にきれいな授業のノートを貸してくれる女神さまであった。
「あーもう少し大人しいものを。(久しぶりやん!元気やった?)」
「じゃあ、こっちにゃん?♪(元気だよ~。お江戸でオフィースレディーやってる。横くんは?)」
「ゴールドないんで割と安いやつで。(京都で自営業してるよ。てか、ロールプレイと同時進行でリアル喋るんめんどっちーさかいログアウトした後メールするわ)」
「あー、じゃあ、これなんてドウにゃん?♪(おk、てかフレ登録よろ!)」
「これいいですね!(了解!)」
「200ゴールドにゃん!♪」
「はい。ではまた来ます(ほなな)」
「ありがとにゃん♪(じゃあね)」
なにかすごい疲れた。人間驚くと疲れるんだなぁ。てか、あいつらがここをお勧めした理由が分かったよ。信頼できる人で腕のいい職人は貴重だ。
ウォゼを召喚すると皮の首輪を装備させる。これでオッケーだろう。
平日の夜に開始したものをだから今日はここまでだ。ログアウトする。
明日は家事をこなしてからログインしよう。