ちゅーとろあるその3だよ by神
現在、俺はいきなり始まった宴に参加させられた上に、強制的にお酒のようなものを飲まされ、俺って案外酒に強いんだなと元の世界ではあり得ない体験をしたと思いながら、酒で火照った体を外で冷ましている所だ。というか王様が肩組んできて酒を飲ますとかアグレッシブすぎる。
『ほんとよね。あんなのが王様なんだからこの国も暢気なものなんでしょうね』
「おいおい、そんなこと言うなよ。この国だってしっかりしてるとこもあるって。王様も魔王を倒す奴が現れて喜んでるんだろ?別にいいじゃねえか」
『正直言って私はあんたがそんなことが出来るとは思ってないわ。リンクしたのだってたまたまだし』
「いや、そんなこと言われたって...っ!」
目の前がブレる、というよりは意識が吸い取られる感じだ。段々目の前の景色が見えなくなってくる。何がと思うより早く俺の意識は暗闇に包まれた。
■◇■◇■
「―――なさい。ほら、おき―――」
「な、んだ?」
目が覚めたのは何処かの神殿のような場所だった。俺が今まで見た神殿はあのチャ子が刺さっていた場所しか知らないが此処は確かに神殿だと分かるような造りをしていた。それに誰かに呼ばれていた気がする。ゆっくりと体を起こして周りを見渡すと金髪のストレートで金眼の14歳くらいの女の子が立っていた。スタイルは、...うん。ちょっと遅れてるんだね。あ、睨まれた。
「・・・・誰だ?」
「私よ。私。聖戦輪よ」
「え、お前が?チャ子なのか?」
「チャ子って言うな!」
「やっぱりチャ子だ」
「だ~か~ら!チャ子って言うな!」
チャ子はそう言いながら、頭をペシペシと叩いてくる。いや、ベシベシか。
「で、此処は何処なんだ?」
数分くらい叩かれてたけど、ようやく話に入れるくらいチャ子が落ち着いたのだ。
「此処はおそらく神の間よ。何で此処にいるかは分からないけど、多分私を創った神様が呼んでいるんだと思う」
「・・・・神?」
神ってあいつか?ガキ神か?
「さあ、行くわよ!神様が待ってるわ」
「え、何で俺も?」
「いいから!来る!」
強制的に腕を引っ張られ奥に進まされる。
うわー、やめろー、はなせー。
■◇■◇■
「...此処は」
そこには、おそらく他の聖シリーズだと思われる人の形をしたやつとそのパートナーのシルエットが計18人居た。そいつらは円になるように並んでいて、真ん中に光の塊みたいなのが浮かんでいた。
「ようやく来ましたか、聖戦輪とその所有者よ」
「はい。ただいま来ました」
どうやらあの光の塊が神様のようで、ガキ神とは違うようだ。
とりあえず俺も円になるようにチャ子と並ぶ
「では、全聖シリーズが揃ったようですので、会談を始めます」
会談。はて何のことだろうか。
「今まで聖戦輪の所有者が見つからなかったため会談が出来なかったのですが、今日ようやく見つかったみたいなので会談を始めようと思います」
「待ってくれ。一体何の会談をするんだ?」
円を囲んでいた内の1人が神様に向かって質問をする。
「いい質問です。この会談の内容は魔器についてのことです」
「魔器とは何なのだ?」
「魔器とは私達、神の中に居る邪神が作り出したランク10の武器です」
「ランク10だと!!」
ランクというのが分からないため小さな声でチャ子に聞いてみる。
「なあ、ランクって何だ?」
「あんたそんな事も知らないの?ランクっていうのは武器の格を表していて、1から~10まであって伝説と言われる私達でもランク9なのよ。ランク10っていうのがどれくらい凄いか分かる?」
「ああ、何とか」
「魔器は所有者の心の闇に巣食い、武器を作り出します。魔器は所有者の闇の面を強く表します。そのため非常に凶悪なのです」
「それで、我々にどうしろと?」
「魔器を倒してほしいのですが、ランク10の魔器にはランク9の貴方達では太刀打ちできないでしょう。そこで貴方達に権利を賭けて戦ってもらいます。勝ったものにはランクを10にまで進化させます」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。そんな事をしなくても全部ランク10にまですればいいんじゃないのか?」
「そうは言っても私にも限界というのがあります。私では1つしか無理なのです」
「そ、そうですか」
ていうか、ランク10にならなくてもランク9の武器、計10つで一気に倒せばいいんじゃないのか?
「いえ、その場合でも勝てません。ランク10はまさしく次元が違うのです」
「つまり、ランク10になれるのは勝ち残った1つだけ、ということですか」
「はい。強くなければ魔器を打ち倒すことは出来ないので。それに聖戦輪の所有者はこの世界とは違う魂を持っているので今のところ有望株ですね」
「なあっ!」
チャ子が驚いたように見てくるが、俺だって驚いてるよ。何でこの人(神)がそのことを知ってるんだ!
「私は神ですよ?この世界のことに起きたことを知らないはずが無いでしょう」
これが神なのか?圧倒的に次元が違う。俺が驚愕を表していると、聖シリーズの中のどれかは分からないがおそらく女の子のような声をした奴がチャ子に向かって話しかけてきた。
「え~でも所詮聖戦輪がパートナーでしょう。無理だって。聖戦輪、私たちの中で最弱だもん」
ケラケラ笑いながら言われるチャ子は顔を伏せて、体を震わせてる。他の奴等も嘲笑うかのような顔をしてやがる。
「・・・・・・・・」
俺は無言のままチャ子の頭に手を置いてやった。正直俺はこんなキャラじゃないと思ってた。でもパートナーをバカにされて黙っている奴なんて居るはずないよな。
「おい、何で、笑ってんだよ」
「だって、この中に居る聖戦輪だけが投擲用の武器だよ。私たちに勝てるはずがないじゃん」
「だったら俺は、たった今此処で宣言してやる!」
「ちょ、ちょっと、何やってるのよ!」
出来る限り声を絞り出す。こういうのは舐められたらしまいだからな。
「いいから黙ってろ!いいか!今、この瞬間から俺はこの聖戦輪と!この戦いに勝って!ランク10になってやる!いいか!もう誰もこいつを最弱だなんて言わせないからな!」
「あ、あんた!何を言って...」
「分かりました。貴方のその心意気、受け取りました。では今この瞬間を持って『聖戦』を開催します」
チャ子や、他の奴らが何かを言う前に神様が目の前が真っ白になるほどの光を輝かせて『聖戦』の開催を宣言した。
この瞬間から俺のこの世界に転生して新たな目標が出来たのだが、この宣言が後に俺を戦いの渦へと巻き込むのは、まだ先のことである。
■◇■◇■
「あんた!何言ってんの!勝てるはず無いでしょう!」
あの空間から意識は戻り、元通りの景色が視界に映し出されたのだがどうやら時は進んでいなかったらしく、先程と同じように王様がはしゃいでいた。
そしてさっきの宣言のことでチャ子があーだこーだ言ってるが、さっきみたいな人の姿ではないためどうにも迫力に欠ける。それに、
「言っとくけど、俺は負けるつもりは無い。絶対勝ってお前をランク10にしてやる」
「...あんた。・・・・分かったよ私も覚悟を決めるよ」
もう、あそこまで言ってしまった以上今更引き下がれるはずが無い。と若干拗ねた感じで言う俺にチャ子も覚悟してくれたようだ。
「よし、俺達は強くなるぞ。他の聖シリーズを倒せるくらいな」
「ええ、ギャフンと言わせてやるんだから!」
「ははは、ギャフンって!」
「べ、別にいいでしょ!大体、―――」
俺はただ力を持っているだけだ。だから油断してはいけない。そう心の中で思っていた。でもその覚悟はまだ足りないと思い知らされるのは、まだ先のようだ。
だが、それでも俺達は、元の世界で見られないような星の輝きを見ながら笑っていた。
余談だが、あの時酔っていたようで、一気に酔いが冷めたとき心の中でヤベエェェェ!と叫んだのは俺だけの内緒だ。......メイドさんに読まれてなかったらの話だが。
感想、批評待ってます。