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異世界ネジ巻き転生 毎時間5回はネジを巻きます!  作者: スターカートーン
ゼンマイ付けて転生してね by神様
10/13

なんか落ちてきたよ? by神

 あの後、伝えに来てくれた騎士の人を置いて急いで帰った俺とメイドさん。城に戻った俺達を歓迎したのは王様の説教。王座に座らず、目の前に立って説教しやがる。しかもやけに学校の先生っぽい。それにしても―――


「ちゃんと聞いているのですか!?」


「......はい」


 くそう。お前はオカンか!いや、それはいい。それはいいとして、さっきからメイドさんの様子がおかしい。ピクリともしないんだ。いや軽い呼吸は聞こえるんだが、規則的過ぎるような気がする。もしかして寝ているんじゃ。それなら―――


「聞いていますか!?」


「......はい」


 何で俺だけなんだよ。ちなみにチャ子は寝ていました。



■◇■◇■



「全くうるさいオヤジですね。そう思いませんか?」


「仕えてるわりに毒吐くよな、メイドさん」


 というか寝ていただろう。


「・・・・さて明日には出るのですよね。でしたら早く就寝してはどうですか?用意は出来ているので」


 誤魔化しやがったよ、この人。


「何のことでしょうか?」


 いや、だから―――


「何のことでしょうか?」


 いや―――


「何のことでしょうか?」


 何もありません。はい。

 くそう、段々雰囲気が怖くなってきやがる。


「では、もう行くので。お休みなさいませ」


 はいはい、おやすみ。さて寝るか。

 そう思いベッドに入ろうとしたんだが、


『待ちなさい』


 チャ子が話しかけてきやがった。


「何だよ。俺はもう寝るんだ。分かったら寝させてくれ」


『別に時間は取らせないわ。いいから聞きなさい』


「・・・・・・・・」


 といあえず黙って聞くことにした。


『あのメイドのことよ』


「メイドさんのこと?」


『あいつは危険よ。何が目的なのかさっぱり分からないの...って聞けーー!』


 チャ子が何を言ってるか知らないが、俺は寝させてもらおう。んじゃ、おやすみ。



「で、何だ此処」


 目が覚めたら中学生の女の子みたいな部屋に居た。いや、そもそも本物は見たこと無いんだけど。...やめよう。虚しいだけだ。

 というか転生してから一週間も経たずに知らないとこに4回も強制転移されたぞ。もう大抵のことは驚かんぞ。


「さて、エロ本探すか」


 真剣な顔でそう言った俺の顔に蹴りが入る。グボォ、なんて声を出す俺を他所にこの部屋の住人は容赦なく足蹴にする。


「人の部屋で何探そうとしてんのよ」


 前に他の聖シリーズと会った時と同じ容姿をしたチャ子が此方を見下している。

 チャ子は俺に有無を言わさぬような笑顔で特に最後の方はアクセントを強くしながら言うのと同時に、踏みつけてくる。だが、生憎俺にはそんな特殊な性癖は無いので、逆にその足を捕まえてぶら下げてやる。


「放せっ!放せー!」


「はっはっは。これに懲りたら俺にちょっかいかけようなんて思うなよ」


「アンタがさっきにやってきたんでしょ!つまり!アンタが悪い!」


 ごもっともです。

 そう思い、チャ子をベッドの中央に的確に投げる。


「で、何なんだ此処?」


 俺は近くにあった椅子に座りチャ子に問いかける。


「おーい。如何した?」


 何かさっきから動きがないんだが。・・・・え?ど、ドッキリだよな?打ち所悪いとかじゃないよな?

 俺は上からチャ子を覗き込もうとしたんだが、その瞬間。


「この間抜けがっ!」


 チャ子が急に起き上がり、俺に目潰しをかましやがった。

 俺がうごおぉぉ、と床をのたうち回ってると、


「ふんっ!私を舐めるからこうなるのよ」


 この後、第2ラウンドが始まったのは言うまでもない。



■◇■◇■



 2人してくだらないことをしたなとズタボロになりながら向い合う。


「で、此処は何なんだよ」


 本題に入るのが、随分遅くなったなと思いながらチャ子に聞く。


「此処は、そうねえ。聖戦輪の中、いえ、聖戦輪の中にいる私がいつも居る空間ね。精神世界みたいなものだから外の世界のことは考えなくてもいいわ」


「つまり、チャ子は此処に住んでいるのか」


 何か、乙女感すげーな。


「む、失礼な事言われた気がする」


 無駄に勘のいい奴め。


「で、何で此処に俺を?」


「アンタが私の話を聞かないからでしょうが」


「いや、あれはしょうがないだろ。あんな時間じゃあ良い子は寝る時間なんだよ」


「誰が良い子よ。誰が」


 第3ラウンドに入りかけたが、拉致が開かないので話を戻す。


「メイドさんがどうしたんだよ。いい人そうじゃないか。そんなに疑っても何も出ないと思うけど?」


「アンタは魔法を知らないからよ。この城に掛かってる魔法はプロ、いえ、達人以上でないと出来ないレベルよ。しかもそれと併用して初級とはいえ、アンタの身体能力にせまるほどの魔法を使ったのよ。あきらか異常よ」


「そうなのか?俺には全然分からないんだが」


「ちょうどいいわ。ここで魔法について教えてあげるわ。いい魔法っていうのは―――」


 チャ子の説明は何か分かりづらいので、簡単にまとめるとこうだ。


・魔法とは、魔力というどんな生き物に宿るエネルギーを使い、他のエネルギーに変えることらしい。


・その他のエネルギーを変える方式を、術式というらしい。


・術式は魔法陣タイプと詠唱タイプがあるらしい。


「じゃあ、その術式さえ覚えれば魔法は使えるのか?」


「いいえ、それは違うわ。魔力には波長があってその波長によって得意不得意が決まるのよ」


 此処でふと思った事実。俺に魔力はあるのだろうか。元の世界ではそんなの知らなかったし、容姿が違うとはいえ使えるとは限らない。


「なあ、俺に魔力はあるのか?」


「は?何言ってんの。あるに決まってんでしょ」


 まず、一つ目の問題はクリア。あとは俺が術式を理解できるのかと言う点。メイドさんと戦った時の魔法陣を俺は全く理解できていなかったのだ。

 この件はすぐに解決した。


「中にはイメージで術式を作り出すことも出来るらしいわよ」


 とチャ子の言葉によって、俺にも魔法が出来るかも知れないという可能性が出てきたのだ。

 俺はこの空間でチャ子監修の元、魔法の訓練を始めたのだが―――


「・・・・出来ない」


 ―――1つを除いて全くと言ってもいいほど魔法が使えないのだ。


「何で出来ないのかしらねえ」


 何でだよ。あり得ないだろ。せっかくファンタジーな世界にまで来てこれは無いだろ。


「で、でもよかったじゃない。身体強化魔法は使えて」


 俺の落ち込みようを見てチャ子が慰めるように言ってくる。だがなあ、チャ子。―――身体強化魔法『は』―――だと。


「そうだよ。俺はそれしか出来ないんだよ」


 もういっそ、俺を殺してもう一度転生させてくれよ。


「い、いや、ほらアンタには魔法よりも武術のほうがいいじゃない。この間の構え凄かったじゃない!」


 もう。もういいんだ、チャ子。俺は魔法を諦めるよ。


「そんな顔で言われても」


 今、俺はどんな顔をしてるんだろ。まあいいか。どうせ、俺なんて―――


 このやりとりは俺がメイドさんに起こされるまでずっと続いた。



■◇■◇■



「朝から変だと思っていましたが、そういうことですか。納得です。...ですが、しっかりしてもらわないとこちらが困るのです。今日はなんといっても魔王討伐の旅路の初日なのですから」


 朝メイドさんに起こされ、朝食を食べ、渡された旅の道具を持ち、王様達に見送られ、森に入ったばかりなのだが、此処で疑問が1つ。


「何でメイドさんは着いてきているんだ?」


「実は私―――



 ―――本当はあの城のメイドじゃないんです」


「......は?」


「あの大規模な魔法は私に関する認識を少し改変するものでして、私がメイド長という認識をさせておりました」


『あんた。一体何が目的なの?』


「いえ、そんなに警戒しないでください。私はただメイドというものを体験してみたかっただけなのですから。ああ、そういえば私が一定ぼ距離から離れたので魔法が解けてしまったみたいです。今頃、私に騙されたせいで阿鼻叫喚でもなっているんじゃないんですかね」


『信用ならない、わ。...え?』


「お、おい。それじゃあメイドさんはあの国では...」


「ええ、大変なことになるでしょうね」


 いや、大変どころじゃあねえよ。あれ?待てよ。メイドさんと一緒にいる俺達って...


「ええ、同罪と見られてもおかしく無いでしょうね」


 え?



■◇■◇■



「おいおいおい。どうするんだよ、これぇ。詰んだじゃん。これ絶対詰んだだろ」


 ヤバイ。絶対ヤバイ。何で俺まで同罪になってるんだよ。


「あの、大変言い難いのですが」


「何。まだ何かあるのかよ。どんだけハードモードなんだよ、俺の転生ニューライフ」


 その原因であるメイドさんは人差し指をピンと上に立てる。


「いや、それが何?」


「ですから、上です」


「上?・・・・おいおいマジかよ?」


 上を見ると、あきらか人のような物が、こっちに向かって落ちてくる。漫画みたいに真っ直ぐ落ちてくるのではなく、パラシュートみたいなものを背負いブランブランと落ちてくる。


「何かもう、ファンタジーの夢を壊された気がするわ」


 俺って不幸属性か何か付いてるんじゃないかと本気で疑いそうだよ。

感想、批評待ってます。

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