かがくけつごう
「ごめんなさい。」
でも、爆発を起こしたのは私だから謝る。
確かに起こしたのは私だけれども、実験の最中に私語をする先輩にだって非はあると思う。
「で、どうしてこうなった。」
冷たい低い声でたずねられる。
そうですよね。
全然関係ない薬品を混ぜ合わせるなんてありえない。
しかもシュミレーションもなしに、なにやってるだって怒鳴られても当然。
危険まで引き起こしているし。
「ちょっと動揺して。」
「なにに。」
耳元でささやかれる声。
くらくらする。
「動揺して間違えて、こんな小さなもんだったからいいけれど・・・危ないんだぞ。」
そういってガラスの破片を集めだす。
「ごめん。」
「いや、俺だって動揺してるんだ。」
視線が絡み合う。
「だって今日の、今日だろう。」
そう振られた当日に、先輩と研究室で二人っきり。
「さすがに告白されて今だろ、冷静でいれない。」
振った先輩でも思うところがあるのか。きまずいって思ってもらえるのだとすれば、無関心じゃない存在っていうだけでマシなのかもしれない。
でも、それよりも、か弱い乙女の心も汲んで欲しい。
ローテーション組まれても、拒否しろよ。
「俺だって嬉しかったんだ。」
なんだか話の流れが変わる。
いやまて、なんだか話がおかしい。
「え、?どういうこと。」
むっとしたような男の顔。
「好きな女に好きだって言われて興奮しない男はいない。」
少しおかしな言葉を聴いたような気はするけどそこはスルーする。
「どういうことですか。」
拾っていたビーカーのガラスを思わず先輩に向ける。
「やめろ。」
先輩が、大きなビーカーの破片を手からさっと取り上げた。
刺すつもりはないのに。
「どういうって。振ったんじゃなかったんですか。」
「振る?」
先輩が不思議そうな声を出した。
「無理って。」
「あんなジュース飲めるか。」
無言。
どうやら私たちは両思いらしい。
先輩が言葉数が少ないことも忘れていた。2年間側でいたのに、先輩はきっとドリンクを混ぜなかったんじゃない、先輩もドリンクを混ぜ忘れるぐらい動揺していたんだ。
実験グループのみんなが楽しそうに、ローテーションを組んでさっさと帰っていったときは腹がたったけれど、きっとみんなわかっていたんだ。
そりゃ、そうかも。
狭いファミレス、うるさいファミレスだけれど、告白の声が聞こえていたのかもしれない。
長い時間一緒にいる分、私と先輩の挙動不審さが伝わったのかもしれない。
それ以前に、実験仲間の理系女子の片割れには、片思いだってことはばれていた。
先輩の一言で全てのなぞが解ける。
一つ一つの事象には必ず原因があって
かがくはんのうを起こしている。
間違ったものを混ぜれば
かがくばくはつがおこったり
正しいものが混じればかがくけつごうをおこして
新しいものが産まれたり
本当にかがくって難しい