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作戦名はKFJ!  作者: 十七夜
第42節 (A)
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チームがあれば、

かがんだ逢坂の手が、そっと背中に触れた。


「俺は、あなたが居てくれたことに、心から感謝してます。だから、なおさら、あのとき奪ってしまった選択肢を、返してあげたかった。エルフでもどこでも、あなたを必要だと言うクラブの中から、誰にも気兼ねすることなく、選んで欲しかったから──」


慰めの手が離れる。

同時に、風をさえぎる気配もふっ、と離れたのが分かった。

顔を上げれば、空をにらんだ逢坂の横顔が見える。

奥の街灯に描き出された秀麗な目鼻だちに、神前は目を奪われた。

同時に、どこか痛そうに寄った眉にも気がつく。

瞬間、それこそが、正直に話せと言った神前に対する、逢坂の、嘘、偽りのない答えなのだと、理解できた。


「そ、うか……俺の複数年は、俺が、ゼロ円移籍で、出て行かずにすむように……?」


まるで、新月のように逢坂の顔が逆光に隠れてしまう。

こちらを見下ろす視線を感じて、濡れたままの頬を、神前はあわてて拭った。


「…………決して、あなたに、クラブのための移籍を決断させるためなんかじゃなかった。──でも、俺にそんなことを言う資格はないです。紀藤さんが知恵をしぼってくれなければ、俺はもう一度、あなたを犠牲にしてしまうところだった」


立ち上がると、神前は逢坂の腕を掴む。


「ごめん。無理に話させて、ごめんな。でも、どうしてなのか、分かってやれるとおもう。俺も昔、同じようなこと、やったから」


意外そうなまなざしに、神前は苦笑を返した。

のどからこみ上げる苦みを、逢坂も、ずっと感じていたのだろうか。


「選んで欲しかったのは、本当は、ここにいること、だろ? 俺の手のひらに移籍という選択肢を乗せることでしか、おまえは確かめられなかったんだ。俺の、本当のきもちを。──三年前の、俺といっしょだ」


逢坂が、神前の目をのぞき込んでくる。


「直さん……それって」

「うん。俺の場合は、みごとに出て行かれちゃったよ。あのときは、泣いたなー。おまえが上がって来てくれることは分かってたけど、もう、ひとりで、どうしていいのか分かんなかった。もしかしたら一年で1部に復帰できるかも、なんて甘い夢も吹き飛んじゃって。どこまで落ちて行くんだろうっておもったら、立ち上がることも、怖かったっけ」


紀藤とは違い、ためらいがちに髪に触れてくる手に誘われるようにして、神前は逢坂の肩に顔を伏せた。

やわらかなマフラーの感触に、頬を寄せる。


「だけど、マコが帰って来てくれた。あれは、ほんとにうれしかったな。だって、出て行っても終わりじゃないって分かったんだ。チームがあれば、いつかまた、帰って来てくれるかもって。そう、おもうことができた」


こく、と逢坂がうなずくのを感じる。


「そうですね。──だから、あなたが、自分自身のために選んで決めたことなら、俺も、いつでも笑ってあなたを送り出しますよ」


囁きのやさしさと違い、さらうような強さでぎゅっと背中を抱かれた。


「でも、もう、誰かのためはやめてください。蓮のためでも。……おねがいです、直さん」


肩ごしに見える暗い空を、ゆっくりと点滅する光が流れていく。

べつにめずらしくもない飛行機のサインだと、すぐに分かった。

方向からして、離陸して行くところだろうか。

光が、羽角と重なって、鼻のつけ根がつんとしびれる。

とたんに、光がにじんだ。

分かった、とは神前には言えなかった。

だから、返事の代わりに、逢坂の腰のうしろで、きつく両手を組み合わせる。

いっそう強く抱きしめられて、神前は感情をこらえるように目を閉じたのだった。




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