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作戦名はKFJ!  作者: 十七夜
第42節 (A)
88/97

リレー

同時に、社長に直談判した日のことがよみがえってきた。


『あの、逢坂って子──すごいストライカーが、ユースから上がって来るんでしょう? 僕が先輩からもらったもの、後輩に渡せないままここを去るわけにはいきません!』


売らないでください、と頼み込んだ。

給料なんて、安くたっていいからと懇願した。

移籍せざるを得なかった曽根兄弟から、下のやつらを頼む、と言われていたのに。

たった数年で、神前以外のユース出身者は、降格とともに一度は全員、居なくなってしまった。

それでも、年が明ければ逢坂が上がって来ることを知っていたから、あのとき、チームに留まろうとおもえたのだ。

そうおもった瞬間、ふと、何かが心の隅っこに引っかかった。


「ハズレ、です──」


神前を追い越した逢坂の背中が、ぽつりと言う。


「え?」

「あなたと、俺が初めて話したのは、実は、それより半年以上も前のことです」


まるで、ソコだとノックされたように、記憶のとびらがパッと開いた。


「……あ。俺が、ケガして、ひとりでリハビリしてたとき、だ。──ちがう?」


背中を追いかけて訊けば、ちらりと肩ごしにふり返った逢坂が、ぎこちなく微笑む。


「何を話したか、おぼえてますか?」


正直に、神前は首を振った。

トップへ昇格して来る以前に逢坂の存在を知っていたから、待っていた、と言えたのだとおもう。

ユースの選手と、ときどき、話をした記憶もある。

先輩としてのアリバイを作るような、きっと他愛もない話をしたに、違いない。

あのとき。

三ヶ月以上にも及ぶリハビリ生活と、負け続けているチームの心配だけで、神前には後輩との会話にまで心を動かせる余裕など、とてもなかった。


「ごめん……」

「構いません。忘れてしまっても、俺はおぼえていますから……ずっと。そして、いつか叶えられたらとおもっています。あなたが語ってくれた、俺たち、後輩のための夢を」


はっ、と神前は顔を上げる。

また、記憶のとびらが弾けるように開いた。


「──俺、スタジアムを満員にしたい、って……言った?」


背中を向けたまま、逢坂がええ、と返す。


「イガスタを、エルフのスタジアムみたいに、いつも満員にしたいんだって、言いましたね。あんな満員の応援の中で後輩をプレーさせてやりたい。そして、そこで頂点を争うようなチームになって欲しい。それが俺の夢だな、って……本当に、さみしそうな顔で」


ことばを聞けば、そのときの想いがまざまざとよみがえった。

同時に、背筋が冷える。

ユースの選手が、当時は、まだ子供に見えたのかもしれない。

けれど、今、神前の目の前に居るのは、自分と同じ、立派なプロ選手だ。

だったら、分からないわけが、ない。




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