役割分担
「えっ。肉? 焼肉? そこは決定なわけ? もうそろそろ寒くなってきたし、鍋とかいいとおもわない? モツ鍋とか、水炊きとか、それとも奮発してふぐちりとかどう?」
「ふぐちり? どこのジジイだ、おまえは」
神前の提案は、紀藤に一蹴される。
「寒かろうが暑かろうが、みんなで集まって食うなら、肉とおごりは必須だろう!」
「そ、そうなの? ちなみに、おごりって誰の。言い出しっぺの、とか言わないよな?」
五、六人ならともかく、三十人分をおごるとなれば、六桁の出費は覚悟しなければならない。
ふぐでもいいからおごれ、と言われるよりはマシかもしれないが、神前もおごるよりはおごりで食べたいとおもう。
その方が、ぜったい同じ肉でも美味しく感じるはずだ。
「──そうだな。今日が四日だろ。なら、どっかのGMから迷惑料がてら、いくらかスポンサー料を巻きあげられるんじゃないか。あとは、残りみっつ勝てばあきらかに利益になる人間から、うまいことふんだくったらどうだ、キャプテン、アンド選手会長?」
紀藤らしい、意地悪な笑みに見とれて、神前は何を言われたのかまで考えなかった。
一方の江野は、すぐに嫌そうな顔になる。
「……それは、監督からって意味ですか?」
「そうだ。ただし──」
「ただし、監督の出来高払いな年俸契約の件は知らないふりで、って言うんでしょう。俺と直くんに、そんな芸当ができると?」
「む、無理無理無理! 俺、無理っ」
両手をぶんぶん振る神前と江野の顔を交互に見てから、紀藤は腕を組んだ。
「だよなー。じゃあ、代わりに逢坂を付けるってのはどうだ? 俺はGMから巻きあげ係。監督には江野と逢坂。で、足りない分は、神前のおごり。うまい役割分担だろ?」
橘さんはっ、と口にこそ出さなかったが、神前はおもいきり顔に書いた。
お誕生日席の橘が、脚を組み替え、軽い調子でふっと笑む。
「そんじゃ、俺は、店を予約しよっかな」
俺もその係がいいです、とは言い出せず、神前は愛車にドレスアップを施すべく狙っていたステアリングに羽根が生えて飛び去るのを、脳内でいつまでも見送ったのだった。




