決起集会
紀藤自身は否とも応とも言わず、となりに座る逢坂の横顔に目をやった。
「おまえも、それでいいのか?」
「言いましたよね? 俺、今季のうちはいいチームだって、すごくおもうんです。だから、残された試合を楽しめる方がいい。……前に誠さんが言ってたように、チームは毎年移り変わって、二度と同じメンバーで戦うことがないというなら。なおさら、後悔しないようなゲームがしたいです、ひとつひとつ」
ちらりと、紀藤の視線が神前に流れてくる。
どんな気持ちで逢坂のことばを聞いたか、見抜かれたかもしれない。
けれど、紀藤は何も見なかったように、素っ気なくうなずいただけだった。
「そっか。なら、もう、俺が言うことはねーよ。とりあえず、どんなにいいチームだったかってことを、記録にも刻んどいてやるか」
「記録って?」
首をかしげた神前の腕を、座れ、とばかりに江野が引く。
「2部リーグの最多勝ち点記録の更新、でしょう。一敗一分けしたので一〇七とはいきませんけど、残りみっつ勝てば、勝ち点は一〇二。逆に言えば、みっつとも勝たないかぎり、記録の更新はできないってことです」
納得した顔でうなずきながら椅子に座った神前が、今度は江野の袖を引っぱった。
「よし。じゃあ、それモチベーションにして、選手みんなで、一発、決起集会しよう! メール送って、メール!」
「送ってもいいですけど。日時と場所は?」
「次の試合より前で……いつがいい?」
真っ先に紀藤の顔を見てしまった神前は、ごまかすように他の顔もひととおり見る。
が、どれだけ待っても、誰もうんともすんとも言わない。
神前がしびれを切らす方が、ずっと早かった。
「紀藤、いつにしよう?」
「おまえが決めたっていいんだぜ?」
切り返された神前も、沈黙の罠にはまる。
はあ、と聞こえよがしにため息をついた紀藤が、つい、とメガネを押し上げた。
まるで、なぜこんな簡単な問題も解けないんだと、あきれている教師のようなしぐさだ。
「……今日が火曜だから、やるとしたら木曜か金曜の二択だろ。これから飲食店に予約を入れるとすれば、金曜の夜に三十人強ってのは難しい。木曜の練習後は、たしか、ホーム最終戦のマッチデー用の対決と、あと、スポーツニュースの取材もあるよな。ファン感に関する交渉事もここに予定してるんで、できれば避けて欲しい。木曜の夜か金曜の昼か、となると。未成年者も居ることだし、もう一度集まる手間もいらないし、あと、個人的にも腹いっぱい肉を食うなら夜よりは昼かな、とおもうが」




