GMからのリーク
「クラブハウスのミーティングルームに、ともおもったが。こんな時間に俺たちの車が停まってれば、寮のやつらに集まってることが知れるとおもって、ここに来てもらった」
寮の食堂でなくミーティングルームというだけで、他の選手たちに聞かれてはまずい話なのだと分かる。
その上、集まっていることさえ、悟られたくないらしい。
ごくっ、と神前はつばを呑み込んだ。
「これを見てくれ」
たったさっきプリントアウトされたばかりのB5用紙を、紀藤がテーブルの上に置く。
のぞき込んで見た神前は、それが正比例を表す直線グラフだということだけは理解できたが、何のグラフかは見当もつかなかった。
「何なの、これ?」
ふう、と紀藤がため息を落とす。
「言う前に、約束しといて欲しいんだが、この件は口外しないでくれないか。神前に話すことだけは了解を取ってあるが、それ以上は口止めされているんだ。本来なら、選手に教えていいような話じゃないからな」
まず、江野と橘が顔を見合わせた。
ひとり、あごに手を当てた逢坂が、紀藤を窺う。
「滝田さんに聞いた話、ってことですか?」
「察しがいいな。そう、ふたりには言ってなかったが。あの人と俺は出身大が同じで、サッカー部の先輩後輩にあたる。スポンサーの粉飾決算からこっち、知恵を貸せって言われて、いろいろと情報を提供されていたのは、実は、俺であって神前じゃない。黙っていて悪かった」
「そこはまあ、どっちだっていいけど。それより、俺たち……ていうか具体的に言えば俺にまで、聞かせちゃまずいんじゃないか? こっちふたりは長年、ファルケンで育ってきた言わば身内だから、神前といっしょくたにしたっていいだろうけどさー」
並んで座る江野と逢坂を指さした橘に、紀藤はうなずきを返した。
「……たしかに、少しは考えました。でも、ここまでいっしょに話をしてきたんですから、この件も話すべきだとおもって。神前以外に話してしまえば、俺の犯す罪は同じですよ」
弱々しい笑みに、神前は悪い予感がいや増した。
グラフを読み解こうと、目をこらす。
「──この、横軸の数字は、勝ち点ですか」
ぽつ、と江野が言った。
六〇を起点に、五刻みで数字が見える。
唯一の例外は、九二。
「九二は、現在の勝ち点のはず」
「そのとおりだ。九二はうちの今の勝ち点。でも、それだけじゃないだろ?」
「あ。勝ち点九二は、今季の目標!」
神前のことばに、紀藤が視線を返した。
「正確には、監督が掲げた目標、だよな」




