表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作戦名はKFJ!  作者: 十七夜
第36節 (H)
65/97

優勝メンバー

「無理もないんだ。俺たちと違って、あいつらは三年間、降格争いしか経験してない。もう、くたくただったんだとおもう。優児だけじゃない。みんなが、育ったチームのことを嫌いになってた。だからもう、ここに残るのは俺しかいないって、そうおもったんだよ。でも──」


神前の瞳が揺れる。


「売られるはずだった五人のユース組の中で、チームは俺だけを残してくれた。全試合出場してチームに貢献してたやつじゃなく、俺を選んだ……それって、おかしいよな?」

「いや? それはチームが、おまえの経験の方を買ったん──」


途中で、紀藤は、唐突に悟った。

察したらしい神前が、くしゃくしゃな顔で微笑む。

いちばん最初、唯一獲得しているタイトルのところから話を始めた、その理由は──


「言われたんだ。俺とあんたの差は、レグルス杯の優勝メンバーかそうでないかだけだって。チーム唯一のタイトルを知る選手だから、優児の代わりにあんただけが、売らずに済ませてもらえるんだ、って。……そのとおりだっておもう」


神前は、あえぐように息を継いだ。


「あいつは、ここに残りたかったわけじゃないんだ。ただ、たった一年の差で、チームからもサポーターからも扱いが違う俺のことが腹立たしかったんだよ、ずっと。俺は、あいつらにとって、すこしも先輩じゃなかった。苦しいときに助けることもできないくせに、その経験で優遇だけされる、ずるいやつだとおもわれてたんだ」

「神前。もういい。それ以上言うな」


テーブル越しに、神前の目尻を拭いながら差し入れた手を、髪に絡めて引っぱる。

うつむいた神前が、自分の手をハンカチ代わりにしてくるのを、紀藤は黙って受け入れた。

空いた手でマグカップを持ちあげ、二度、紀藤がのどを潤したころ、ようやく神前のぽうっと子供のようにぬくい手が、紀藤のそれを開放する。


「ごめん──」

「いや、謝るのは俺の方だ。……静岡戦のとき、おまえのことばにまともに取り合おうとしなくて悪かったよ」


目を見開いた神前が、無言で首を振った。


「次の試合、2部リーグとはいえ優勝が決まれば、少しはおまえの負担も軽くなるかな」

「──次、決まるとおもう?」

「今夜の試合で、逢坂たちがケガでもしてこない限りは、大丈夫じゃないか。まあ、あと一勝で決まる辺り、遅かれ早かれだけどな」

「うんん。次がいい。レグルス杯の決勝は国立こくりつだったから。今度は、ホームで──サポーターの前で、優勝を決めたい」

「そうだな。みんなで、勝って、祝おうぜ」


紀藤がテーブルに立てた右手に、右手を組み合わせると、ぎゅっ、と左手で包み込むようにして、神前は深くうなずいたのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ