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作戦名はKFJ!  作者: 十七夜
第36節 (H)
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抱えてるもの

  茘枝@九犬十愛 @redlitchi99 10月10日

 昔の記事見て、生女帝もちょっと見たくなったもんで、明日はくじゃく戦、明後日は鷹戦と、うちらもはしごブームに乗ることに。

 でも出費がやばいので、夜はうちにお泊まり。


  茘枝@九犬十愛 @redlitchi99 10月10日

 うちに苺姫来たら、お兄のこと、バレちゃうな。

 超気が重いけど、親友になりたかったら話すしかないか……





「紀藤がうちに来るの、めずらしいよなー」


差し出されたマグカップをサンキュ、と受け取って、紀藤は神前の部屋を見まわした。


「意外に片づいてるもんだな。もっとごちゃごちゃ散らかしてるもんだとおもってた」

「一ヶ月くらい前に大掃除したばっかりだし。……あのさ。改まって俺に話って何? なんか、いやーな予感しかしないんだけど」


ずずっ、と熱い紅茶をすすってからおずおずと訊いた神前に、紀藤がいじわるく微笑む。


「例えば?」

「あ、彩ちゃんが、東京のおっきなイベントが恋しい、こんな地方は嫌だって言い出して、離婚を切り出されそうだから関東のチームに移籍しようとおもう、とか……?」

「──おい。それ、どっから突っ込めばいいんだ。何げに当たってるところが、いちばんムカつくんだが」

「当たってんの!?」

「ちがう。今日ここに移籍の話をしに来たんだとしたら、そんな理由しかないって意味でな。離婚の危機も、移籍する意志もねーよ。1部で俺がやれんのかは疑問だけど、それはあの橘さんでも不安なんだって聞いたら、ちょっと気が楽になった」


ふう、と琥珀色の水面を吹いてから、紀藤は紫のマグカップに口をつけた。

家でチームのオフィシャルグッズを愛用している選手は神前ぐらいだろうと、紀藤はおもう。


「俺から話があって来たんじゃねーよ。おまえの話を聞きに来たんだ」


首をかしげた神前を見て、紀藤は苦笑した。


「俺は、自分が来る前のファルケンのことは何も知らない。ふつうの選手とチームの関わりなんてそんなもんだろうと、今もおもってる。だから、おまえに訊こうとはしなかったし。おまえが何も話さないのも、おまえらユース育ちと俺とじゃ立場が違うと、一線引かれてるからだと解釈してた」


息をすることも忘れたような神前の手から、紀藤はマグカップを取り上げる。

一瞬遅かったら、中身がぼとぼととテーブルにこぼれてしまっていたはずだ。


「紀藤、ちがっ……」


こん、とマグカップをテーブルに置いて、紀藤はうなずいた。


「知ってるよ。俺が悪かった。俺は知らなくても、江野ならちゃんと知ってて、おまえが抱えてるものを見えない場所で分かち合ってるもんだと、思い込んでた。でも、あいつだってレンタルに出されてチームを離れてたんだし、同じ場所で育っていようが、おまえにとってはあくまで後輩なんだよな」


一拍おいて、こく、と肯定が返る。


「マコは、ここに帰って来てくれただけで、十分だから」

「そっか。──で、俺に話そうとしなかったのはどうしてか、聞いてもいいか?」


ぎゅ、とテーブルの上で神前は手を丸めた。


「紀藤は……今、ここにいてくれる。それで、俺は、しあわせなんだ、すごく」


神前の、理由とは言えないような答えに、紀藤は長さの違ううなずきをみっつ返す。




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