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作戦名はKFJ!  作者: 十七夜
第32節 (H)
46/97

飲むバニラアイス

  茘枝@九犬十愛 @redlitchi99 9月14日

 お兄の部屋に置きっぱだったタオルマフラーを持って、鷹観戦にイガスタへ!

 おひとり様観戦、やっぱキンチョーする。


  茘枝@九犬十愛 @redlitchi99 9月14日

 昇格決定は三位チームが勝って次に流れたらしいけど、神ゴール見れて大満足!

 ただトイレでクラスの子に遭遇したのは、大誤算…





「夏休み終わったのに、観客が減らないってすごくない?」


試合前のアップで、ストレッチのコンビを組んだ神前が、紀藤に話しかける。


「今週は連休だから、ナイターでも来てもらえたっていうのもあるだろうな。あと──」


第22節にホームで負けて以来、目下チームは九連勝中。

今日勝てば十連勝であると同時に、三位チームの結果次第では、1部に自動昇格できる二位以内が確定するという側面もあった。

チームの勝利と、見たいとおもえる選手がいること、これらが両輪としてうまく噛み合えば、スタジアムに人が集まってくるのはごく自然なことだといえる。


「ともかく、俺たちは今日も勝つだけだろ」

「うん、今日は勝ったら、飲むバニラアイス食うんだ。こっそりエネルギーゼリーの中に紛れ込ませてきたから、いっしょに冷やしてもらえてるはず──」

「おい。エネゼリって、冷蔵だろ。アイスは冷凍なんじゃねーのか。溶けてるぞ今ごろ」


他の突っ込みどころには目をつむって、紀藤は神前の右足を高く持ちあげながら言う。

と、支えた腕に一気に重みがかかった。


「試合後の、俺の楽しみがああ」

「バカ。アイスぐらいコンビニにでも行きゃ売ってるだろ。俺がスタジアム前のコンビニまでひとっ走り買いに行って来てやるから、ぐだぐだ言うな」


左右の足を変えて、神前はふふん、と笑う。


「ただし試合に勝ったらだからな、だろ?」

「おまえがゴールを決めたら、にしとくか」


意地悪な笑みを浮かべた紀藤に、神前は内心で、ぜったいゴール決めてやるからみてろっ、と舌を出した。


福岡ファルケンのホームスタジアムは、人工島にある四万人収容の陸上競技場で、IGAスタジアム──通称イガスタと呼ばれている。

陸上トラックがあるせいでピッチと観客席が遠いこと、市内主要駅から公共の交通手段がバス以外にないこと、いずれも1部リーグ所属時代からホームタウンの約一五〇万という人口規模からすれば少なすぎる観客動員の原因とされてきたが、2部に降格して以降はさらに客足が遠のき、一万人を集める試合はごく稀というほどに低迷しきっていた。

が、今はメインスタンドもバックスタンドも一階席はほぼ埋まり、一万人を下回ることはない。

これは、コンスタントに続けている広報活動によって、1部昇格を完全に射程圏にしているチームの状況が広く知れ渡った結果といえるが、スタジアムから地下鉄空港駅までという今までなかったルートにシャトルバスを導入するなどの利便性対策も後押しをしてのことだろう。


リーグ後半戦は通常、暑さに疲労が重なり、上位チームも勝率を落とす傾向にあるが、そうして増えた観客が力を与えているかのように、ファルケンの勝率は後半戦に入ってからの方が、むしろ高くなってさえいた。

張る壁が足りないほどに、スタンドには選手名の横断幕が倍増しており、中でも逢坂の名が、神前に対するサポーターの支持を包囲する格好で目立つようになってきている。

才能は折り紙つきながら、どこか控えめで先輩のかげに隠れていた若きストライカーが、ついに目覚め、チームの顔としてより広範囲のファンから認知されてきた証拠だ。

今季ここまで全三十一試合に先発出場して、二度のハットトリックを含む、二十七得点。

開幕からずっと2部リーグの得点ランキング一位に君臨し続けている逢坂は、ファルケンのエースに留まらず、日本の次世代のエース候補のひとりとも目されるようになっていた。

当然、相手チームのディフェンダーは彼への警戒を強め、当たりも一段と激しくなっているが、それを逆手に取るかのように、逢坂は敵陣深くでファールを奪取しては、ファルケンが誇るプレスキッカーの神前へとフリーキックをもたらす。




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