表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作戦名はKFJ!  作者: 十七夜
第31節 (A)
45/97

土佐の男

食事を始めて、かれこれ一時間半もすると、神前の世界にはうっすらとかすみがかかり、椅子に座った体はまるで船の上にでもいるかのようにふよふよと揺れていた。

眠い目をこすれば、支えを失った頭がこてんとテーブルに倒れる。


「直さん、大丈夫ですか?」


ん、へいき、とどこか上の空で応じる神前から、いかにも上機嫌にグラスを持ち上げる羽角へと、逢坂は視線を移した。


「まだ入っちゅう。早く飲め、大和」

「空にしたらまた注ぐだろ。もういい。ていうか、ひとがパソコンいじってるあいだにどれだけ飲ませたんだ。先輩を酔い潰すなよ。おまえ、見かけによらず酒豪だな?」

「土佐の男やきー。先輩から酒を注がせるがは、礼儀知らずとおもわれ──」

「ここは高知じゃないの。おまえがグラスを空けるたびに注がれてみろ、こうなるから」


しょんぼりと羽角が黙り込む。

逢坂は羽角の手から取り上げたグラスの中身をぐっ、と飲み干した。

羽角が空にするたびグラスを渡しては飲ませてくるせいで、元はどちらのグラスだったのか、もはや判然としない。


逢坂がグラスを差し出しながら反対の手を焼酎の瓶に伸ばすのを見たとたん、羽角がうれしそうにグラスを取った。

逢坂はといえば、すっかり軽くなっている一升瓶に衝撃を受けたが。


「飲んだら、直さんに水くんできてくれ」

「うんっ」

「直さん、気分は悪くないですか? 俺、酔いが覚めるまでついてようかな」


いつの間にか閉じていた目をぽっかりと開けて、神前はあわてて首を振った。


「平気へいき、眠いだけだし。それより、羽角を頼むよ。ちゃんと寮まで送ってやって」

「──そうか。分かりました。心配いりませんから。これ飲んで眠ってください」


冷たいグラスを渡されて、こく、こく、と背中を支えられながらふた口ほど水を飲んだ辺りで、神前のその夜の記憶は途切れている。

つやのある声で、おやすみなさい、と囁かれたのが、甘い呪文のように鼓膜の奥にひびいたのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ