栗焼酎
「直さん、これ、故障じゃないです。たぶん、電池切れ。データ移したいなら、このままでも起動はできますよ」
「は? 電池って。充電したけど?」
「いえ、バッテリーじゃなく、別に起動時に必要な情報をバックアップする用の電池があるんですよ。それが切れてるのでこんなメッセージが出てるだけで、電池を変えれば、とくに問題なく使えるとおもいますけど」
どん、とテーブルにボトルの底を突き、神前はがっくりとうなだれた。
「そんなしょーもないことで、一年近くもパソコンが使えなくなってたのか。もっと早く、逢坂に見てもらえば良かった。……電池、変えてくれる?」
トイレから戻ってきた羽角が、逢坂の膝の上を見るなり、まるで見なかったことにするかのように顔を背けてテーブルについた。
「数日後で良ければ、電池ユニットごと取り寄せるか、はんだ付けするかして交換できるとおもいます。ドライバーはありますか?」
「ドライバーぐらいならあるけど。とりあえず、こっち、先に食べよ。冷えちゃうだろ」
テーブルの上には、パスタやカツオのタタキの他、生ハムやソーセージ、枝豆、アサリの酒蒸しが並んでいる。
紀藤なら一見して野菜が少ない、と一刀両断したかもしれないが、神前にはそれほど時間もかからずに、こんなに美味しそうな料理がテーブルに並んだのは奇跡におもえた。
「えーっと? 何これ。羽角が持ってきたの、栗焼酎? 栗? そんなのあるんだ?」
サーモンといくらのパスタを食べながら、神前が一升瓶のラベルを見て首をかしげる。
「うちにある酒、みんな辛口で、これくらいしか神前さんでもいけそうなのがなくて。でも、このワインのあとじゃ、甘くないかも」
「いや、飲みたい飲みたい。どんな味?」
「飲みやすいです。俺、焼酎は初めてだけど、こんなにいけるもんだとは」
先に、空になったグラスに少量を注いでもらった逢坂が、ストレートのままひとくち飲んで、もっとくれと羽角に催促する。




