性格のいいイケメン
「いいんですか。信じ過ぎるのはおまえの悪いクセだって、言ってやらなくて」
江野に、紀藤は微笑みを返す。
「人を信じない神前が見たいか、おまえ?」
「あなたは、あの人を甘やかし過ぎだとおもいますよ。で、何の地雷を踏んだんです?」
「おまえは逢坂のこと、どうおもうよ」
「また逢坂ネタですか。……ちょっといい後輩すぎるかな、とおもいますけど。先輩にあれだけ大切にされていたら懐くのも当然かなって気もするし。悪いやつではないでしょう。少なくとも、直くんに害をなすようには見えませんよ」
「──だよな。俺も、神前の信頼を裏切って踏みつけたいようには、見えねえんだ。でも、変にきれいすぎて逆に引っかかる」
「顔がいいやつは性格が悪くなくちゃいけないっていうのも、考えようによってはひがみ根性なんじゃないですか。十人居れば、ひとりぐらいは性格のいいイケメンっていうのも居るとおもいますけどね」
「ふうん。俺が知ってるのは、残りの九割の方なのかな。おまえはどうだ、性格のいいイケメンなんて、見たことあるか?」
誰の顔をおもい浮かべたのか、江野の顔が次第に曇っていく。
「……まぁ、性格が悪い、とまでは。ややくせはあっても、悪いやつらではないですよ。──ただ、逢坂ほどのイケメンっていうのはなかなか居ないので、判断材料になるのか疑問は残りますけど」
紀藤は考え深げにあごに手を当て、目を伏せた。
「なあ、江野。おまえ、神前に殴られたとき、逢坂がゼロ円移籍する可能性ってやつを指摘したんだよな?」
「可能性、っていうか。選手の中にあるのが義理とか恩だけでないことは、よく分かっていますから。何を選ぶかは、価値観の違いでしょう。直くんと同じ価値観を、誰もが持っているわけじゃないということを、言おうとしたまでです」
同意するように、紀藤が二度うなずく。




