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作戦名はKFJ!  作者: 十七夜
第30節 (H)
37/97

天然か人工か

  茘枝@九犬十愛 @redlitchi99 8月29日

 明日は鷹の練見に行く予定。

 クソ補講のおかげで定期あるからタダだし、むしろ行かなきゃ損じゃね?

 くじゃく戦に誘われたけど、お金払って女帝は見なくていいw





「おい、フリーキックの居残り練に逢坂まで必要か?」


全体練習が終わったあと、一度はロッカールームに引き上げ、シャワーを浴びて着替えまで済ませた紀藤が練習場に戻って来ても、まだ、クラブハウス側のゴール前には選手ふたりと壁のダミー人形三体が居た。


「……何だか、私服姿でメガネをかけてない紀藤さんって新鮮ですね」

「今の俺にはおまえはのっぺらぼーだが、声だけでもイケメンなのは何でだ」


目を限界まで細めて歩いてくる紀藤に、逢坂は笑い損なったような顔を向ける。


「何でだと言われても。錯覚ですかね?」

「クラブハウスの中にも外にも、おまえ目当てのファンがわんさか居るんだけどな。練習の邪魔はしたかないが、この暑さでぶっ倒れられてもことだ、と広報が気にしてたぞ」

「急に増えたもんなー、見学者。雑誌の発売日って昨日とか言ってなかった?」

「正確には三日前。こっちの書店入荷が遅かっただけだ。逢坂、神前につき合ってるだけならそろそろ上がらないか?」

「うん、上がって上がって。片づけ、こいつに手伝わせるし」


指さされた紀藤が、しめった髪をかいた。


「それが手伝ってもらう態度かよ」

「それじゃあ、後、よろしくおねがいします。直さん、お先に上がらせてもらいますね」


紀藤にきっちりと頭を下げてから、神前に微笑みかけて、逢坂は練習場を囲んだ金網の開閉口へと向かう。

と、それまで練習場に併設された観覧席にいた二十人近いファンが、逢坂の動きを追うように席を立つ。

逢坂は、それでもまだ席を立たずにいる数人のファンを認め、そちらに寄って行くと軽く会釈した。


「暑い中、お疲れさまです。チームにとって大事な練習なので、もうすこしだけお付き合いください。でも、暑かったら無理しないで中に入ってくださいね!」


相手は、自分ではなく神前のファンだと分かった上で、自分から声をかけに向かう。

そんな逢坂に、紀藤は笑うしかない、という顔をした。


「相変わらずよく気がまわる、できた後輩だな。…………できすぎで、気味悪いが」

「え、なに?」

「世の中には、天然と人工、何事も二種類しかないとおもうんだけどな」

「何の話? なあ、そっちからボール蹴って。間接フリーキックの練習するから」


無言で、紀藤はボールが入ったかごに歩み寄り、左腕をふちにかけてもたれかかる。

紀藤に言わせれば、目の前の親友はまごうことなき天然だ。

計算も裏も、おもしろいほどに何もない。

そして、その後輩のひとりも、また天然だと紀藤はおもう。

けれど、今一人の後輩までもがそろって天然である保証はどこにもないのだ。


「──あいつ、いったい何考えてるんだろうな?」

「何って、明日の試合のことじゃねーの?」

「ちがう。あの完璧な笑顔の下で本当は何をたくらんでるんだろうな、ってこと」


むっとした顔で、神前はかごを指さした。


「言ってる意味が分かんない。無駄口いいから、ボールくれ」


紀藤は片手で拾い上げたボールを地面に落とし、無造作にぽん、と蹴り出す。

すぐさま助走をつけた神前がゴールを狙って左足を振り抜いた。

が、ボールは仮想の壁である左端の人形の頭にぶつかり、ゴールとは違う方向へと飛んでいく。


「動揺してるな?」

「うるさい。してない。ボール寄こせ」




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