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作戦名はKFJ!  作者: 十七夜
第23節 (H)
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セット売り

「えー。じゃあさらによけいに金がいるってことだろ。どーすんの?」


紀藤が、肩をすくめてみせた。


「グラニが違約金を設定してるとすれば、フロントはそのくらいはなから計算に入れてるとおもうけどな。何なら、違約金を捻出するために協力しろとでも言ってみるか?」

「……チームメイト、大切なんでしょう? よもや脅すような真似はしませんよね?」


江野に冷やかな視線を向けられ、神前はぶんぶんとうなずく。


「しない。しない! しないよ、もちろん」

「そうだな。脅しやしねーけど。でも、江野。確認するが、選手の利益にもなって、本人が自主的に協力するっていうなら、べつに協力してもらっていいんだよな?」


江野だけでなく、神前もあぜんとした。


「協力してもらえる手でもあるの?」

「言っときますけど。チームメイトを騙して協力させるなんて、言語道断ですからね!」

「脅すのも騙すのも一種の犯罪だろ。そんな真似せず、正々堂々、交渉するさ。まあもし羽角に断わられたとしても、逢坂が積極的にアピールすれば図式としては成立するんだし、それはそれでアリだよな?」


そうね、と彩音がうなずく。

神前は、きょとんとふたりを見た。


「何で、逢坂の名前が出てくんの?」

「──だから、イケメンとセット売りだって言ってんだろうが。サッカー上手くて、イケメンで、若い、とこれだけ高水準で揃ってて、本人が犯罪以外なら何でもやるって言ってんだ。当然、有効活用するに決まってんだろ」

「えーっ。ちょ、逢坂! そんなところで、ネジとか回してる場合じゃないからっ」


呼ばれてふり返った逢坂が、ちょっと小首をかしげて笑う。


「すみません。全然聞いてませんでした。でも、やれと言うことは、何でもやりますよ」

「すばらしい。ただ、逢坂くんは良くても、コイビトに怒られちゃったりするかもよ?」

「そう呼べるような相手が居ないから、何でもやるって言えるんですよ。ね、直さん?」

「えっ、う、うん、そうだね……っていうか、そうなの?」

「それで。コンポの方は直りそうか?」


紀藤が訊くと、スピーカーが片方だけ鳴らない原因とおもわれる部品がどれで、取り替えが必要な旨を、逢坂は厚さ五ミリほどの基板を垂直に持ちあげて説明した。


「そうか。とにかく、直りそうなら任せる」

「話は以上ですか。羽角の件はともかくとして。明日の練習後に全体ミーティングをやるってことで、みんなにメールしますよ。それでいいんですよね?」


肯定をもらうなり、それじゃあと床から立ち上がった江野の腕を引っぱり、紀藤は入れ替わりにソファに座らせようとする。


「ソッコーで帰ろうとするなって。夕飯作るから食って行けよ、おまえも」

「夕飯って、こんな大人数じゃご迷惑──」

「五人分も六人分も大して変わりゃしねーよ。大体、おまえが食わなきゃ意味がない」

「え……あ、あなたが作るんですか?」

「俺は、これでもアスリートフードマイスターの資格とか持ってるんだぜ。──何で、こいつからのおわびに、俺が料理を作るのかは謎だが。神前たってのリクエストなんだ。おまえに俺のおいしーい手料理を食わせてやりたいんだと」


神前に聞こえないよう、紀藤はこっそり江野の耳に笑みを含んだ囁きを吹き込んだ。


「……自分で言いますか」

「もちろん、家に帰ればかわいいカノジョが手料理を作って待ってくれてる、とか言うなら、無理には引き止めねーけどよ」

「…………いただいて帰ります」


にやにや笑ってキッチンに行きかけた紀藤が、ふと足を止めてふり返った。



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