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secretGARDEN『if』  作者: 蜜熊
『if』 IN Titanic
20/22

澤村の番になり、2回程カードを引いたが手としては勝ちに及ばない。そこで先程からテーブルの端をこつこつと叩いていた手が止まる。


「サレンダー(プレイヤーの手が悪く、勝ち目がないと判断した場合に賭け金の半額を放棄してプレイを降りること)」


「おいおい、坊ちゃんもまぐれ勝ちの後は慎重になるか!?」


「いじめてやんなよ。お子様にも楽しませなきゃなぁ?ディーラー」


外から野次が飛ばされるが、ディーラーはそれに対して曖昧な笑みを浮かべるだけ。一方野次の中心にいる張本人は、相変わらずこつこつと叩きながらスタンドとサレンダーを繰り返す。


(……何をしているんだ?)


負けたままでいるのは明らかに彼の性格上ありえないが、自分が見るよりも前に勝ったと言われる後は、ずっと沈黙を守っている。それを見て最初ははやして立てていた外野も興味を失い、1人また1人と人だかりから去って行ったが、それとは対照的にだんだんとディーラーの顔色が真剣なものに変わっていく。


何順目なのかははっきりとしないが、ある程度の順は回った頃だと思う。流れは突然来た。


「レイズアップ。全額」


短調になりつつあった場が一瞬で緊張感が走り出す。


手元にはじわじわと減っていたとは言え、それなりにコインがある。それを全て卓に出し、不敵とも取れるようににやりと笑う。


「あいつ、カウンティングしてたな」


「!?」


不意に声がして後ろを振り返ると、メガネをかけたもう1人の同行者が、いつの間にか隣に立ち、腕を組んで卓を覗き込んでいる。


(いつの間に…それよりも…)


配られたカードを全て記憶することは非常に難しい。


また仮に、残りのカード状況を完璧に把握していたとしても、プレイヤーが有利かどうか、どのような戦略を取るべきかを計算するためには、考えられる全ての場合について確率を数え上げる必要が出てくるため、これを人間の頭で計算することは不可能に近いとも言える。


しかし万が一、残りカードに応じてプレイヤーの有利不利や最適な戦略を判断することが可能なれば、それは確実に勝てるときと勝てないときを判断出来る最大の一手になる。

カードカウンティングと呼ばれるのはあくまでも『近似的に』それを行うことだったと思うが。


(……“彼”なら、それは『可能』だ)


「お、オープ…っ!!」


コールをいい終わる前にその場にいたディーラーを含む全員が沈黙した。その中でその不可能と言われることをしてみせた“子供”と呼ばれた天才プレイヤーは、どこか自慢げにコールしてみせた。


「ブラックジャック。オレの勝ちだね」

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