④
「どっちだっていい。どうせどちらか処刑すれば俺が当てられる」
正親さんがやれやれと頭をかきながら溜息をつくと、今度は正親さんに矛先が行く。
「何をっ!!お前、うそつきのくせに何が当てられるだ!!」
「嘘つきかどうかは処刑者が増えていけばわかんだろ。当てられなくなったらそいつが偽物って訳だ」
「なるほど、一理はありますね」
周さんが信長さんの勢いも軽く受け流し、あくまで関係ないと言ったようにさらりとうなずく。
「じゃあ何、ゆずるが人狼でも放置って訳?」
周さんの言葉にちくりと棘をさすような言葉が投げられたけど、受け止めた方がはさほど嫌味だと思っていないような顔をしていた。
「彼女が人狼であれ君がそうであれ、占い師は後半はあまり意味を成さない。それよりももう1日様子を見て騎士が残っているかどうか、霊媒師のどちらが偽物か見極める方が先決だと言っている」
「妥当だな」
みんなの総意でとりあえず容疑者として挙がっている虎さんを処刑して、その夜の出方を見ることになりつつある。
一番怪しい私は結果としては村人側の多重人格者と人狼のどちらかである可能性が高いという事で保留にしてくれているみたいで、霊媒師2人の内どちらが偽物かどうか、騎士はいるかどうかを確かめることで夜になった。
ふっと明かりが消され、どこからともなく犬か狼の鳴き声が聞こえる。
GM役の綺麗な女性は相変わらず抑揚のない口調で夜が来たことを告げる。
『それでは人狼のみなさま、目を開けてください』
そろそろと目を開けて“あの人”を見る。その人は必要以上に何かを話そうとすることもなくすっと初日に國鷹さんとどちらを処刑しようか迷ったもう1人を指差した。
それにうなずくと明かりが消える。
「恐ろしい夜が明け、朝がやってきました」
「今回の犠牲者は 斗真 でした。さらに今回の犠牲により人狼と疑わしき容疑者が浮上しました。それは……」
(うわ……斗真くん思いっきり不機嫌だ)
当たり前と言ったら当たり前かもしれない。守られるはずの占い師が守られなくて食べられちゃった挙句、さっさと処刑されるべきな私がこうやって残っているんだから。
容疑者として挙げられているのは斗真くんだったけど、その斗真くんは昨晩食べられちゃったから当然この場に容疑者はいないことになる。
「これで残り5人か……」
難しい顔をしているリヒャルトさんがちらりとみんなを一瞥する。
「信長、昨日の彼はどうだった?」
「村人だった」
「穂積、君は?」
「ガキはシロ(村人)だ」
「ゆずるさん、昨日は誰を占いました?」
(え!?)
そ、そうだった。確かに占い師は怪しい人1人を調べられるシステムだった。
慌てて視線を走らせてちょうど目があった人に心の中で謝りながら名前を呼ぶ。
「あの!リヒャルトさんが!えと…村人でした」
名前を呼ばれたリヒャルトさんは社交辞令かもしれないけれどにこりと笑ってくれたけど、周さんの声は私の占い結果を鵜呑みにしていないような空気は感じる。
「普通は信長さんか彼を占うものですけど」
(あ、そうか!)
確かにどっちかは嘘をついているわけだし、私が本物ならそうしなければいけないのは当たり前だった。
何だかもう嘘をつくのも疲れてきて頭がうまく回ってくれない。
「おい、そろそろ騎士が出てもいいだろ。後順当にいけば2日目の夜までもたねぇ」
正親さんがそういいながら周りを見回すけれど、その声に反応して手を挙げる人はいない。
「すでに処刑されたまたは言いまわし方からして最初からいなかった……ということも考えられますが」
周さんが相変わらず涼しい顔をしながらその結果を冷静に分析してくれる。
私もあれだけちゃんと分析出来れば村人側でみんなをリード出来るかもしれないけど、せいぜい多重人格者として扱われて処刑されないようにすることで精いっぱいかもしれない。




