③
「え……」
声が同時に重なって円卓に座っていた全員の顔に大小それぞれの動揺が走る。
1人は信長さん、もう1人は正親さん。どちらもほとんど同時で、ぱっと表情を見る限りどちらが本物なのかわからない。
「……霊媒師が2人。では…占い師はどうだ?」
(どうしようかな、私も何かした方がいいのかな)
人狼でも一応戦略として色々な方法があるみたいで、終始目立たないように潜伏しているタイプもいれば、多重人格者のように場をかき乱す役を買って出る人もいる。
その場合は人狼が3人以上いる場合にするのが効果的らしいけど、これは絶対向いていない気がする。
かと言って潜伏していてもそれが通じるときと通じないときもあるみたいで、大人数が村人として参加しているパターンは猶予がたくさんある分処刑されるパターンが多いみたいだから、これも一概に絶対効果的とは言い切れないらしいけど。
今回は9人でそれなりに少人数だったから潜伏していてもよかったけど、と結論が出る前に自然と手が上がってしまった。
「オレ」
「わ、私です」
今度は声は重ならずにばらけたけど、さっきと同じように全員の顔が困惑しているのがわかる。
(もう1つは自ら役持ちを偽るパターンだけど……大丈夫かな…)
自分で人狼だとわかっているから当然相手が本物なのはわかるけど、思いっきり睨まれているのが視線でわかる。
(うぅ…怖い…)
よりにもよって斗真くんだなんて。
「ふむ…占い師も2人……」
ここで騎士がいれば当然処刑された人が村人か人狼かを見分けられる霊媒師を積極的に守るのがセオリーらしいけど、それを名乗り出る人はいない。
当たり前と言えば当たり前かもしれない。いたとしてもその人は自分で自分の身は守れないし。
「オレは本物だからね。ゆずるが人狼か多重人格者で決まりじゃん」
(ひぃぃぃ……)
早くも手を挙げたことを後悔する。
あんなに自信満々に演技が出来るわけがないし、実際に偽物な私が今さら堂々と人狼を名乗ることも出来ない。
冷たい視線がちらちらと投げられるのを感じながらどうしようかなと思っていると、信長さんがどういうわけが興奮した口調で捲し立てる。
「お前が人狼を偽っているかもわからんではないか!彼女がそんなことをするとは考えられない!だいたい……っ」
後半は英語でも日本語でもなくて全然わからなかったけど、リヒャルトさんが『まぁまぁ』と困ったような顔をしながら諌めているところを見ると、薄々だけど言っている内容の推測がつかないわけでもない。
その外側ですでに人狼に食べられてしまった・・・という設定のメアリーさんが『私情を挟むなーゴリラー』とはやして立ている。
(あぁ……)
それに対して信長さんが顔を真っ赤にしながら怒っているのを見ると余計に申し訳なくなる。すみません、嘘をついているのは私なんです。




